共鳴の誓いと深夜の訪問者
途中で休憩をはさみつつ、フロリアナの繰り返しの人生の大まかな話を聞き終え、だんだんと表情が抜け落ちていく様子は、見ていて何度も不安になりましたが、フロリアナは最後まで話してくれました。
「そうでしたか…………」
午前中から始まった話は、気づけば夕方になり、フロリアナの様子を気にした使用人たちも不安そうでしたが、事前に私たちから指示があるまで動かないように言っていたため、止めに入る事はありませんでした。
「私がここに来るまで、よく耐えましたね」
聞けば聞くほど、フロリアナの魂が壊れきる寸前だったのがわかります。
握りしめていた手を引き寄せ、そっと引き寄せ、力の抜けたフロリアナを抱きしめます。
最初はふんわりと、けれども次第に力を込めていき、ハフッとフロリアナが息を短くしたところで力を込めるのは止めましたが、開放はしません。
きっと込められた力に、痛みや苦しみを感じているでしょう。
「今までフィリーが味わった痛み、苦しみ……失望も絶望もなにもかも、今の私が理解できる、共有できるなんて同情はしません。できません」
「…………はい」
どこか傷ついたようなフロリアナの声は、私の心に鋭い刃を突き立てますが、フロリアナの痛みに比べれば軽いものです。
「だけど、今、この瞬間、そしてこれからの全ての痛みも苦しみも悲しみも、そして喜びも幸せも全部……分かち合いましょう」
そう言って最後に目いっぱい力を込めてからパッと腕を離します。
「なんだか、プロポーズみたいですね?」
「健やかなるときも病める時も?」
「死が二人を分かとうとも、離れることなく」
「「さいごまでいっしょにいきましょう」」
そう言って笑い合い、もう一度抱きしめ合いました。
■ ■ ■
夜、ふと一人になった部屋の中、ただでさえ静かな空間に一切の音が無くなったことに気づきました。
「やあ、異物の娘」
「こんな夜に淑女の部屋に無断で入るなんて、前回といい、もう少し礼儀をわきまえていただきたいですね」
軽く息を吐き、勝手に座られたソファーの対面にあえてゆっくりと座り、「あら」とわざとらしく声に出します。
「こんな時間に急にいらっしゃられてしまったから、またお茶を出せませんね」
だから早く帰って下さいね、と言外に伝えているのに、「気にしないでいい」と返されてしまいます。
「なんていうかさぁ、正直なこと言っていい?」
「拒否する権利は、私にあります?」
「ないね。それでさぁ、神が何の意味もなく異物をこの世界に呼び寄せるのは異常なんだ」
黄金の目が、その中の縦長の瞳孔がまっすぐ私を見据えてきます。
「君の行動は、星暦を変えている」
「そうですね。でも、結果が正しいなら、過程が少々変わってもかまわないでしょう?」
前回も似たような話をしました。
私がすべきことは、フロリアナが生き残る正しい星暦を成し遂げること。
その過程で、しかるべき犠牲が出ることは承知の上です。
「……結果、ね」
意味深に笑った目の前の人物は、すっと指を一本目の前に持ち上げました。
「君の変えた星暦は、どこに向かう? 星にとっての毒を排除するのが僕の役割」
バチリと指先から光が瞬き、思わずその眩しさに目を細めてしまいました。
「ただ……今みたいに、君に何かしようとすると邪魔が入るんだよ」
「あら」
その言葉に少々驚き声を出してしまうと、「君は神のお気に入りのようだ」と苦笑されました。
「神のお気に入りは私ではありません。私は、神のお気に入りを守るために、今ここにいます」
「……あの王女か。…………つまり、彼女がこの世界の重要人物? でも、それなら僕が知らないはずがないのに」
あげていた指をそのまま眉間に持って行き、トントンと叩く目の前の人物に、私はそういえば、と今更な質問を投げかけました。
「神からお話は聞いていましたが、貴方は星の守護者で間違いないのですよね」
「そうだよ」
特に隠す気もないのか頷く星の守護者。
「では、お名前をお伺いしても?」
「名前?」
先ほどの質問と違い、今度は不思議そうにきょとんとした顔をされました。
変なことは聞いていませんよね?
「名前聞かれたのとかいつ振りだっけ? そのたびに適当に名乗ってきたし、うーん、名前かぁ」
面白そうに口の端を持ち上げる星の守護者に、私が困ってしまいます。
「名前かぁ、そうだなぁ……。どうしようかなぁ」
ニヤニヤと笑って、何かを思いついたのか星の守護者は私を見ます。
「思いつかないなー。だから、君がつけて?」
名案とでも言いたそうですが、きっといつもこの手を使っているのでしょう。
それにしても名付けを委ねるとは、この人物は私などに御せるはずがないと自信があるようですね。
まあ、そのようなつもりもありませんが。
けれど、翻弄されるばかりなのも面白くないのは事実です。
「私がその気になれば、神に貴方の本当の名前を聞くことが出来ますよ?」
目に力を込めて言えば、きっと目の前の人物には私の目が青くそして深く輝くのが見えるでしょう。
そして、それは脅しでも何でもない事実だとも理解できるはずです。
「……………………ああ、でも魂はともかく、その器でその所業に耐えられるのか?」
面白そうに歪められた表情が、一気に真顔に、いえ、表情そのものが抜け落ちてしまいましたね。
「さあ? 試してみますか?」
私は目の前にいる人物に対抗するように、にっこりと深い笑みを顔に浮かべました。
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




