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黄金の甘さ

髪にイモケンピはついてません。


挿絵(By みてみん)

 どうしたものかと考えた私は、自分の手の中にあるマフィンを一口サイズにちぎり、ソッとフロリアナの口元に持って行きました。


「はい、どうぞ」

「……あ、あーん?」


 少し戸惑いつつも、私の差し出したマフィンを口に入れ、もぐもぐと無言で咀嚼していたフロリアナですが、コクンと飲み込んでから何とも言えない表情を浮かべました。


(あら、お気に召さない味だったのでしょうか)


 やはり味には人それぞれ好みがあるものですね。

 そう納得して気にしないで、と言おうと改めてフロリアナを見ると、私の手の中のマフィンをじっと見つめていました。


「……フィリー?」

「………………ヴィア」

「はい?」


 真剣な表情と、低い声に、私だけではなく侍女やメイドたちにも緊張が走りました。

 特に我が家の使用人たちは、フロリアナを怒らせたのではないかと、内心で冷や汗をかいているのではないでしょうか。


「これは、本当にあの雑草を使用しておりますの?」

「え? ええ……」


 いまだに真剣な表情でマフィンを見るフロリアナに、どうしたのかと思っていると、小さな声で「わたくしが食べた時は、ただ苦くてまずかったのに」と呟きました。

 それはつまり、いつかの人生でヨモギを口にしたということなのでしょうが……まさか、生でそのまま食べたのでしょうか?


(それは、流石においしくなさそうですね……)


 前世の私でも、最低限の調理……少なくともアク抜きはして食べましたからね。


「もう一口いただいてもよろしいかしら?」

「もちろんですよ」


 フロリアナの言葉に、私はもう一度一口大にマフィンをちぎり、フロリアナの口元に持って行きました。


「あーん」


 今度は戸惑うことなく口に含み、嬉しそうな表情を浮かべて咀嚼しています。

 その様子に、我が家の使用人たちは安堵の息を吐き出し、フロリアナが連れて来たメイドや侍女は安堵と共に、どうしたものかという表情も浮かべています。

 まぁ、一国の王女……自分が仕える存在が、雑草と言われているものを口にしたとなれば、戸惑うのも仕方がありません。

 我が家もそうでした。

 一年ほど前のことを懐かしく思っていれば、口にした分を食べ終わったフロリアナがにっこりと笑みを浮かべています。


「お気に召しましたか?」

「ええ、とってもおいしいですわ」


 王女の立場で雑草と言われるものを口にした、その過去の人生は悲惨な物だったのでしょう。

 今のこのマフィンの味で、少しでもその思い出が遠のくのを願うばかりです。

 マフィンを二人で一口ずつ交互に食べ終えると、私はヨモギ茶で口の中をすっきりさせました。


「ぅ……」

「アンディア様?」


 フロリアナに紅茶のお代わりを注ごうとしたアンディア様が、思わずというように声を出したので気になって視線を向けましたが、その時にはもういつもの侍女としての表情に戻っています。

 何か気になる事があったのでしょうか?

 視線で問いかけてみても、なんでもないと返されるのみですし、わかりませんね。

 紅茶を淹れる手元に狂いもなかったですし、私の顔に何かついているわけでもなさそうです。

 さりげなく口元にマフィンのカスが残っていないか確認しましたが、問題はありません。


「……そういえば、見慣れないお菓子は………お菓子ですわよね? そちらはタンザナイト公爵家の……えっと、独自のお菓子なのでしょうか?」


 フロリアナが気になったものは、大学芋と芋ケンピですね。


「そうですね……ある意味、独自のものですね」


 前世の影響を受けた私がおねだりしてコックが作ったお菓子になりますからね。

 イモ類であれば、タンザナイト公爵家の領地でも栽培が比較的簡単でしたので、助かります。

 私の事情は家族には説明済みのため、前世の知識ということで、お爺様たちに比較的色々なことが採用されやすかったのですよね。


「どちらもタンザナイト公爵家の領地で採れたものを使用しています。棒のようになっているのが芋ケンピ、もう一つが大学芋です」

「………………お芋のお菓子ですか?」

「ええ」


 おいしいですよ、といって大学芋を一つ取って自分の口の中に入れます。


(ん~、蜂蜜のパリッとした食感にお芋のほっくり感……。食べ過ぎると飽きてしまいますが、たまに無性に食べたくなりますね)


「……そちらも気にはなりますが、…………あの、もう片方は木の棒……いえ、お芋のお菓子ではあるとは聞いていますが……本当に食べ物、でして?」


 疑うような視線を向けるフロリアナに、思わず笑いそうになりました。


「食べたら、きっともっと驚くかと思いますよ」

「…………」


 私の言葉にフロリアナはゴクリと息をのみ込んでから、ゆっくりと手を芋ケンピに伸ばし、1本つまんでその硬さに不安そうにこちらを見ました。


「食べ物ですよ」


 その様子がおかしくて、クスクス笑いながら言えば、フロリアナは意を決したように芋ケンピを口に入れましたが、想定以上の硬さだったのか、咥えたまま無言でこちらを訝しむ視線を向けてきます。


「ふふふふっ。本当に食べ物ですよ、硬いですけど」


 その様子がおかしくて、私は笑いが止まらなくなってしまいました。


よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。


あ、この作品のPVあります。

見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)


↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!

https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB


↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)

https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r

https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL

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― 新着の感想 ―
芋ケンピは食べなれてないと「硬っ」て感想になるのは仕方ないね(笑)
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