雑草じゃなくてヨモギです
一度目の人生の話が重い事もあり、一度気分をリセットさせようと私はお菓子を食べる時間を作る事にしました。
テーブルの上には我が家で用意したものだけではなく、先ほど皇帝陛下から届いた品物も混ざっているようで、それはもう豪華で種類豊富なオヤツ時間になってしまいそうです。
(これは……お昼ごはんが食べられなくなりそうですね……)
私が苦笑する横では、フロリアナが同じことを思っているのか、似たように苦笑しているのがなんだかおかしいですね。
アンディア様がフロリアナに紅茶を淹れている横では、我が家の侍女も同じように私にお茶を淹れて私の前に置きました。
「……な、なんだか……変わった香りのお茶ですわね?」
色味的には薄い紅茶の色に似ていますが、香りは随分違いますから、毒などに敏感になっているフロリアナは気になってしまったのでしょう。
アンディア様も不安そう、というべきなのでしょうか? なんとも言えない視線を向けてきています。
我が家の侍女たちは、私がこれを飲むのには慣れているのですが、お客様の前では普通の紅茶を出すべきだと言いたげな様子です。
「これはヨモギのお茶ですよ」
「よも、ぎ?」
こちらではヨモギという名前ではないことを思い出し、庭師に聞いたこちらの名前を必死に記憶から引き出します。
「えっと……マグワートを使ったお茶ですわ」
私が思い出した名前を口に出した瞬間、我が家の侍女はどこか遠い目をしたのは気のせいではないでしょう。
フロリアナをはじめ、アンディア様や王宮からついて来たメイドたちが、珍しく動揺を見せたのは貴重かもしれません。
彼女たちは基本的に表情を崩さない訓練を受けていますからね。
「……それは、雑草ですわよね?」
「あら、ちゃんと食べられる植物ですよ」
むしろフロリアナが雑草と思われている草を知っている方が、私は驚きなのですが……どこかの人生で得た知識なのかもしれませんね。
そんなことを考えながら、平然とヨモギ茶に口を付ける私に、フロリアナは驚きを通り越して、唖然とした表情を向けてきています。
雑草を使ったお茶を口にするほど、タンザナイト公爵家が困窮しているはずもなく、それであれば私の趣味なのか、と混乱しているのかもしれません。
マフィンを手に取ってオレンジのジャムを付け、口に運ぼうとすれば、「ヴィア!?」と引きつったフロリアナの静止の声が聞こえます。
「か、カビが……あ、いえ……タンザナイト公爵家のかたがそのようなものを出すとは思えませんが、けれど、あのっそのっ……」
動揺したフロリアナの視線は緑色のマフィンに向けられています。
「これもヨモギを使ったもので、害はありませんよ」
「雑草をお菓子に入れましたの!?」
今度こそ信じられないと、動きが止まってしまったフロリアナの前で、あっさりとオレンジジャムを付けたマフィンを一口サイズにちぎって食べます。
「あっ」というようにフロリアナは口を開けましたが、私は平然と次の分も口に運んでいきます。
驚かれていますけど、ヨモギ味のマフィンとオレンジジャムは、存外相性がいいのですよ?
アレルギーや食べすぎにさえ気を付ければ、ヨモギ自体は体にいいですしね。
前世の影響でしょうか、紅茶よりも私の口にはヨモギ茶が合うのです。
「ヴィ、ヴィア……その……だ、大丈夫ですか? 記憶はともかく、体は貧民が食すものを欲してしまうとか、ありまして?」
後半は周囲に聞こえないよう、耳に口を寄せて小声で言って来たフロリアナですが、私は冷静に「違いますよ」とクスクス笑いました。
「私が一年療養している間、タンザナイト公爵家の別荘で過ごしていたことは、フィリーもご存じですよね?」
「え、ええ」
突然何の話を、とフロリアナは戸惑いつつも頷いてくれます。
「タンザナイト公爵家の領地は、海に面してはいませんし、基本的に酪農に向いていない……というのも有名ですよね」
「……そうですね。タンザナイト公爵家の領地の特産物は基本的には魔鉱石ですから」
その魔鉱石の純度と、その産出量が多いことも有名ですが、今はいいでしょう。
「けれど、まったく農業ができないわけでもありませんし、暮らしていた別荘がある場所はハーブなどが多く植えられた畑が近く、小さくとも野菜などを育てている畑もありました」
「…………つまり、そこで取れた雑草を?」
あくまでも雑草と言ってしまうフロリアナに、思わず笑いそうになってしまいましたが、とりあえず頷いておきました。
「体にいいということも考え、養蜂もはじめまして……それで採集したハチミツもよく料理に使っていますよ」
ポカン、と何と言っていいかわからないというように、フロリアナが小さく口を開けたままにしていたので、私はそっと顎に手を添えて閉じさせました。
(……あら? なにか既視感がありますね?)
そう考えて、ついこの間の第一王子とウルフェナイト小公爵の行動を思い出しました。
なるほど、ポカンと口を開けてしまうのは似ているところなのかもしれません。
王族としてどうかとは思いますが……。
私が顎に手を添えて口を閉じさせたことには反応する様子もなく、じっと真剣な目で私の手元を見つめ……。
「その……雑草は口にしてもおいしくないと思うのですが、雑草を使ったお菓子は、おいしいのでしょうか?」
と困ったように尋ねてきました。
「私は美味しいと思いますけれど、味の好みは人それぞれですからね」
「うーん……」
フロリアナは悩むように私と、私の手にあるマフィンを交互に見た後、「す、少しいただいてもよろしいでしょうか?」と、なにか覚悟を決めた顔で言ってきました。
(いえ、そんな覚悟をして食べるようなものではありませんよ?)
よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m
こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。
あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




