判明する謎と赤の苦さ
話を終えたフロリアナは、表情の抜け落ちた人形のように体温を感じさせず、私は膝に置かれた手をそっと握りしめてから、ゆっくりと顔を近づけ、コツリと額と触れ合わせました。
触れた場所から私の温度がフロリアナに届けばいいと思いを込めて、近すぎてぼやけてしまうフロリアナのペツォッタイトの瞳を見つめました。
きっとフロリアナも私のタンザナイトの瞳がぼやけて見えているでしょうね。
子供特有の高めの体温は徐々にお互いの間で溶け合っていくように広がり、安心させるように少しだけ握りしめた手に力を入れました。
「フロリアナのその最初の人生こそ、すでに歪められたものだったのです」
「……最初から?」
吐息のように囁く私の声に、フロリアナも同じように吐息に近い声で返してきます。
近すぎる距離は、見る角度によっては誤解を招きそうですが、今は気にしないでおきましょう。
「ヴィヴィアナは本来、そんなところで死ぬ存在ではありません。フロリアナだって、簡単に死ぬような、そんな存在ではありません」
今は言わないけれど、そもそも縋るように、依存するように、フロリアナがアウリティアに友愛を抱くことはない。
それが、本来の星暦なのです。
「わたくしの言葉が、あの時のヴィヴィアナを追い詰めてしまったのかもしれませんわ」
何も知らなかったと、ただ巻き込まれただけのヴィヴィアナに対して、友人を悲しませたというだけで責め立ててしまったと、フロリアナは後悔しているのでしょう。
そしてそれが、最初の惨劇に繋がったのだと、今でも思っているに違いありません。
いえ、ある意味引き金はその時のヴィヴィアナの死ですが、そもそもの彼女はどうやって服毒をしたのでしょう?
公爵令嬢になったとはいえ、平民として暮らした時間の長いヴィヴィアナが、公爵家にいる間、もしくは離宮に移動してから毒を手に入れるとは思えません。
私は手を握りしめたまま、フロリアナから顔を離すと、ピントの合った視界でペツォッタイトの瞳を見つめながら問いかけました。
「追い詰めたという可能性は否定できませんが、毒はどこから入手したのでしょう?」
「…………と、いうと?」
話を聞くと、フロリアナは何度かのループで、ヴィヴィアナが服毒死をしていたそうです。
だからなのか、どこかから入手できる伝手があると思っていたようで、私の問いかけに目をパチリと瞬かせました。
「普通、毒なんて貴族になりたての令嬢が簡単に入手できないでしょう?」
「……あっ」
言われて、初めてその事実に気づいたように、フロリアナはポカンと声を小さくあげました。
「それに、溺愛している第二王子の生首を、その母親が持っているというのも、不気味というか……」
口論、もしくはいさかいがあり殺害に至り、狂気に包まれたという可能性はありますが、その狂気がフロリアナが出生にどう結びつくのでしょうか?
まあ、狂気に飲み込まれた人の言動など、それこそめちゃくちゃなのでまともに取り合うのも馬鹿らしい話かもしれませんけれど。
私の言葉にフロリアナは何かを考えるように唇をきゅっと結ぶと、「そういえば」とつぶやきます。
「いつかのループで、実母が第二王子に対して、こう叫んでいました。『こんなに愛して尽くしてやっているのに、お前もわたしを裏切るのか、わたしを捨てて離れるなんて許さない』と……」
耳にした時は意味がよくわからなかったし、実母ではなく皇女を優先するような態度をした実父に重ねたのだと、フロリアナは思っていたそうです。
もしかしたら、最初の人生にあった謎を解き明かすカギはそこにあるのかもしれませんね。
そこまで話してから、私は重い空気を払うようにすっと壁際の侍女たちに視線を向けます。
すぐさま意図を察した侍女たちが軽食やお菓子を用意していきますが、ふと握ったままだったフロリアナの手に力が入ったのを感じました。
フロリアナの視線は、テーブルの上に並べられていくお菓子やお茶に注がれていますが、特に変わったものは……。
(…………なるほど)
フロリアナの視線の先にはないものを視界にとらえて、私は心の中でトラウマはなかなか消せないと呟きました。
そして、あえて「うーん」とのんびりした声で悩ましげに口に出してから。
「なんだか、イチゴやラズベリーより、ブルーベリー……いえ、さっぱりとしたオレンジ……レモンもいいですね。申し訳ないけれど、そちらのジャムに変えてもらえるかしら?」
「っ!」
子供の何気ないわがままのような軽口で言えば、驚いたようにフロリアナが見てきますが、私は何ともないような笑みを浮かべて頷きました。
滴る血を連想させるようなものは、フロリアナの中でいまだに瘡蓋のできない傷として残っているのでしょう。
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あ、この作品のPVあります。
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↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




