私は本当のヴィヴィアナほど甘くないのです。
2話目だぞぅ!
書きためをちょっとずつだしていくよぉ!
よろしくね☆
腹痛と胸やけ、そしてこみ上げる吐き気に眉間にしわを寄せながらこの世界で私が初めて目を開けたのは、5歳になって一ヶ月ほど経ったある朝だった。
体調不良も甚だしい状態に、その日の予定をすべてキャンセルし、安静にしていたいと目が覚めたことを察したのかたまたま時間だったのか、ちょうど入室してきた乳母であり専属侍女であるマリッサに声をかけた。
「マリッサ、お腹が痛いしなんだか気持ちが悪いです」
「そうですか」
どこか冷たさを感じるマリッサの声に、体の体温が少し下がったような感覚がした。
言わずとも休みたいという気持ちを汲み取って欲しいとは思ったが、それは無理なようなので、自分の要望を伝えるべく言葉を続けた。
「だから今日はこのまま寝ていたいで―――」
「お嬢様」
先ほどよりもさらに冷たさ、そして鋭い棘を含んだような声に無意識に喉の奥に息が詰まった。
そんな自分に驚きながらも、マリッサの顔を見ればそこには蔑みの表情が浮かんでいる。
「本日は王家主催の大事なお茶会に参加すると、以前より決まっております。この日のために多くの人が動いております。お嬢様のささやかな体調不良で予定を変えることはできません」
確かに、王家主催のお茶会に出席となれば、公爵令嬢である私が他の参加者に見劣りしないようにと入念に準備されているだろう。
準備を無駄にしないため、また王家の顔に泥を塗らないために欠席するなんてとんでもない。
それはわかる。わかるけれども、体調が悪い状態で参加し、粗相をしてしまう方が問題なのではないだろうか。
「でも―――」
「わからないのですか?」
反論しようとした私の言葉を遮るようにマリッサが口を開く。
「お嬢様は何があっても本日のお茶会に出席しなければなりません。いつものようにオイドクシ公爵家の娘として堂々としていればいいのです。なにがあっても、わたしの言いつけ通りにしていれば、すべてがうまくいくのです」
威圧するような声と視線。
それを全身で浴びて、私はこの体に刻まれた記憶を思い出す。
記憶の整理にしばらく沈黙していると、それを反抗的な態度と受け取ったのかマリッサが髪を掴んで力強く引っ張る。
「いっ―――」
容赦のない行動は当然痛みを伴い、涙が浮かぶほどで咄嗟に声がつまってしまう。
「わかっていますか? お嬢様はわたしの言うことを聞かなければなにもできないんですよ。いつものように、黙って言うことを聞いていてください。いいですね」
「…………は、い」
小さな声で返事をすれば、満足したように髪から手を離し、何食わぬ顔で洗顔用の水盆とタオルを用意された。
体調の悪さに震える手でなんとか洗顔を済ませると、マリッサはいつものようにコップ一杯のオレンジジュースを置いて、水盆とタオルを片付けるために部屋を出て行った。
マリッサが部屋を出たのをしっかりと確認し、浅く息を整えながら、震える手でコップを握りしめてオレンジジュースを一気に飲み干した。
(……何か、混ぜられていますね)
オレンジジュースの香りとは別の、甘い花の匂い。
これは夕べ飲んだホットミルクと同じ香りだと記憶を整理して確認する。
(私は、ヴィヴィアナ=オネルヴァ=オイドクシ。このオイドクシ公爵家の一人娘)
表向きは、蝶よ花よと甘やかされて育ったせいでわがままで横暴。
粗野な行動も多く、使用人からもよく思われていない。そして、両親も扱いに困っている。
唯一、乳母であり専属侍女のマリッサにだけは懐いており、彼女の言う事であれば他の人間よりは受け入れる。
けれど、その実態はマリッサに洗脳のように普段の行動を指示され操られている人形。
そうしなければ愛されないと言われ続けていた。そうしなければ生きている意味がないと言われ続けていた。
幼い子供は、両親に尋ねることもできず、何かを言おうとしても、マリッサの言うことを聞けと逆に言い含められ、ヴィヴィアアナの中で、マリッサの言葉に従うことは生きていくために必要なことになっていた。
ここまでは今までのヴィヴィアナの真実。そして―――
(この世界のヒロイン、とは……なかなか責任が重いですね)
マリッサに気づかれないように、ため息をグラスから口を離す仕草で隠す。
ドロリと流れ込んでくる液体は、記憶の中で飲んだオレンジジュースとは全くの別物に感じられた。
まぁ、実際に混入されたもののせいで変質しているのかもしれない。
けれども、ヴィヴィアナにそれを知るすべはなかった。
(でも、私はヴィヴィアナと違って甘くありませんよ)
いつものようにグラスをマリッサに返すと、早く起き上がるように言われてベッドから離れると、すぐさま着替えが始まる。
着替えが終われば両親との朝食の時間。
(まずは、そこから動きましょうか……。待っていてね、フロリアナ)
暗い表情を保ったまま、心の中だけで笑うと、体調の悪さを訴えるように鏡越しにマリッサを見るけれど、こちらを見ようともしない彼女が気づくはずもない。
せめて、ヴィヴィアナの体調が悪いく、お茶会前に少し休みたいからと朝食の場に出ないように手配をすれば、このあとに起こる出来事は防げたでしょうに……。
着替えを終え、いつものように時間をかけて身支度をしてから食事の間に向かう。
部屋を出た瞬間、マリッサは先ほどまでの不遜な態度を隠し、ヴィヴィアナを心配する健気な乳母兼専属侍女の顔を作る。
合わせるようにいつものように私もわがままなお嬢様の顔を作った。
わざとゆっくり歩く私に、マリッサは心配そうな声で早くしないと遅れてしまうと注意をしてくる。
「少しぐらい遅れてもいいでしょう。歩くのがおっくうなのよ、見てわからないのかしら」
多少の舌足らずさを意識して、活舌を悪くし、言葉の後に深く息を吐き出すことで、いつも通りのわがままな態度の中に少しだけ違和感を滲ませる。
マリッサ以外に私に話しかけてくる使用人はいないけれど、見てくる使用人は大勢いる。
ささやかな違和感でいい。
どこかいつもと違った気がする、と思わせる程度でいい。
いつもなら歩きながらマリッサに対して何かしらの文句を口にするはずなのに、どこか気だるげな息を吐き出す。
まるで話すことすら億劫だというように。
普段と違う私に気づいたのか、マリッサが向けてくる視線の中に咎めてくるものを感じるけれど、それこそ、わがままなヴィヴィアナが気にするようなことではないでしょう?
そのまま、僅かな違和感を混ぜながら食事の間に到着し、静かに席に着けばほどなくして両親が入室する。
「……おはようございます、お父様、お母様」
「「おはようヴィヴィアナ」」
いつもより、ほんのわずかだけ挨拶の言葉を出すまでに間を開ける。
注意しなければ気づけないほどの僅かな間。
朝食中、特に話を続けるような話題は普段はないけれど、今日は違う。
王家主催のお茶会があり、それはヴィヴィアナの社交デビューのお茶会でもある。
「今日のお茶会では、オイドクシ公爵家の一人娘として恥じない行動をするように」
「……もちろんです、お父様。私はちゃんとやれます」
父は私の言葉に頷いたけれど、お母様はわずかに驚いたような気配を滲ませてこちらを見てくる。
だって、「ちゃんとやれます」なんて、普段のヴィヴィアナなら口にしない言葉。
出来ることが当然で、その事実を疑わないわがままな令嬢。
そんなヴィヴィアナが「ちゃんとやれます」だなんて、なにかを背負わされているようなこと、言うはずがない。
だけど、違和感はまだほんの僅か。
子供だから、初めてのお茶会だから、社交デビューだから緊張しているのだろうと思えば、それまでのこと。
あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




