陽だまりの守護
社交界デビューのお茶会から一週間。春の日差しも温かさが増してきました。
散歩をするのもいいですし、風が強くなければ外でお茶をしてもいいかもしれません。
フロリアナがタンザナイト公爵家を訪問したのは、そんな、春の暖かい日差しが降り注ぐ日です。
「ようこそ、フィリー」
「お招きいただき、感謝いたしますわ、ヴィア」
玄関先に停められた馬車から降りて来たフロリアナを笑顔で迎え入れます。
私以外の家族、お爺様とお婆様、お母様とお養父様は頭を下げています。
「皆さま、どうぞ頭を上げて楽にしてください。こちら、皇帝陛下から夫人にと預かってまいりましたの」
フロリアナが言えば、一緒に来たアンディア様が執事にバスケットを渡しました。
「お兄様から……お心遣い感謝いたします、とお伝えいただけると幸いにございます、第一王女殿下」
「承りました」
お婆様は現皇帝陛下の妹、言ってしまえば元皇女ですから、皇帝陛下もフロリアナに手土産を持たせたのかもしれません。
溺愛とまでは言わなくとも、兄妹仲は良かったそうですしね。
「皇帝陛下より、次期タンザナイト公爵夫人のご懐妊に対するお祝いの品も預かっております。こちらは……その……」
そこで少し言いよどんだフロリアナが困ったように私を見たので、何か困ったことでもあるのかと近づいて手を握ると、安心したようにフロリアナが息を吐き出しました。
「その……まだ、男女のどちらかもわからないそうですし、どちらであっても困らないようにと……その……」
それでもまだ言いにくそうにするフロリアナを待たず、アンディア様が護衛たちに馬車の中から箱をどんどん出させています。
(ひーふーみーよー…………え?)
さすがに多すぎですね……。
6箱目を超えたあたりで数えるのをやめましたが、積み上げられていく箱に、私だけでなくお母様たちも唖然としています。
積み上げられた箱から視線をフロリアナに戻せば、何とも言えない感情を浮かべています。
「どうやら、ヴィアやわたくしにあまりよくできなかったことを悔いているようで、せめてこれから生まれる妹の孫にと……はりきってしまっておりますの」
身内が迷惑をかけて申し訳ない、とフロリアナが神妙な表情をしていますが、私としては、皇帝陛下の気持ちがわからなくもないですね。
皇女の実子は第一王子のみ。その皇女が養女として引き取ったフロリアナには、なにもしなかったというのは有名な話だそうです。
事情は色々ありますが、皇女の養女にするための調査で判明したフロリアナの境遇に、罪悪感が湧いているのでしょう。
だから、せめて妹の孫でその贖罪代わりにお祝いをと思ったのかもしれませんね。
(それにしても、多いとは思いますけれど……)
孫かわいがり……この場合妹の孫ではありますが、とにかく孫かわいがりをしたい気持ちはわかりますけど……、まだ生まれてもいませんのに……。
困ったように、けれども丁寧にお礼を言うお母様たちを眺めつつ、私は先にフロリアナを庭が見えるサロンに誘いました。
タンザナイト公爵家の庭にある花は、家を象徴する青系統のものが多いですが、バランスを考えて庭師が他の色も配色しています。
目に涼しい、もっと言えば寒々しい色にならない技術は、さすがタンザナイト公爵家お抱えの庭師の技術ですね。
私の視線が庭にあったせいか、フロリアナも庭に目を向け、緊張した様子で花々を確認した後、ほっとしたように小さく息を吐き出しました。
なにか、嫌いな花でもあるのでしょうか?
僅かな疑問を感じたままサロンのソファに並んで座ってみますが、フロリアナはまだどこか緊張した様子が残っています。
どうしたのだろうと横顔を見つめていれば、視線に気づいたのか、フロリアナは困ったように笑みを浮かべました。
「実は、こうして誰かのお宅にお伺いしたことが、今までの人生を含めてもほとんどなくて、緊張しておりますの」
私の耳に口を近づけて小声で言うフロリアナに、少し驚きながらも、この家は安全だとわかってもらえるように、膝にある手に私の手を重ねてにっこりと微笑みを浮かべました。
「我が家はフィリーを歓迎していますわ」
「……ええ」
頷いたフロリアナは肩の力を少しだけ抜き、用意された紅茶に口をつけます。
その様子を見て、とりあえずこの家で出される飲食物への抵抗はなさそうだと判断し、私は安堵するとともに、タンザナイト公爵家侍女やメイドだけでなく、フロリアナが連れて来た侍女とメイドも部屋の壁まで下げさせました。
「夢の中で大まかに聞いていますが、改めてお互いの今の状況を確認いたしましょう」
「そうですわね」
私の言葉にフロリアナは頷くと、まず、こんな幼い年齢に巻き戻ったこと自体が初めての経験だと話し始めました。
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あ、この作品のPVあります。
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↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




