幕間② 誰も知らない星暦(せいれき)の先へ
第一王子が指揮を執る中、今後の対応が決められていきました。
私が感じたなにかについては、フロリアナに今のところ直接の害はないと判断し、保留。
ただし、お茶会が開催されている間、会場を覗き見ることができる位置に存在した人物については、リストアップしておくということになりました。
ついでに、会場内にいた子女のフロリアナに対する感情についての一覧も、アンディア様とアングレサイト男爵令嬢、そして私とフロリアナの意見を元にまとめ、その場で提出しました。
その時、リストを受け取った第一王子よりも、その後ろからリストを覗き込んだウルフェナイト小公爵の反応の方が怖かったですね。
フロリアナに良くない感情を向けていた令嬢の中には、ウルフェナイト公爵家に縁のあるお家の令嬢もいましたからね。
今頃、彼の頭の中では色々な対応方法が練られているのかもしれません。
話し合いをしている間に、スファレライト子爵家に連絡が入ったようで、荷物は追って送るので、今夜からでもフロリアナの専属侍女として王宮に入るよう、指示があったようです。
行動が早いですね。
こうなる事も予想していたのでしょうか?
取り急ぎ決めるべきことを決め、第一王子も次の予定があるとのことで、報告会は解散となりました。
フロリアナが、今夜は王宮に泊まっていくのはどうかと提案をしてくれましたが、少し思うこともありましたので、次の二人でのお茶会の約束をして帰宅することにしました。
馬車に乗り込み、ふかふかの座席に座りながら、前世での車と違ってシートベルトがないため、体が固定できず不安定なのが心配ですね。
……シートベルトのようなものが付いた馬車、提案してみましょうか?
揺れる馬車に、前世での車のクッション性の良さはなにを使っていたのかと、意味もなく思い出していると、不意に馬車の揺れが止まったことに気づきました。
家に着いたのかとも思いましたが、それにしては随分と早いですね。
(さて……)
空気すら動きを止めたような馬車の中、私は目の前に現れた人物を見据えます。
「レディの乗る馬車に挨拶もなくいらっしゃるなんて、随分だと思いますよ」
亜人、というのでしたか?
羊の角のような輪を描く二つの角、長い銀髪は緩く編まれていますが、特徴的なのはやはり背中にあるコウモリのような羽でしょうか?
金色の瞳は、私を探るように見つめてきますが、私も目の前に現れた人物を探るように見ているのでお互い様でしょうか。
しばし無言の時間が過ぎ、私は少し息を吐き出して、意図して作り物めいた笑みを浮かべました。
「お茶でもいかがでしょう、といいたいですが、あいにくこの場では難しいですね」
「では次はお茶を貰える場所で逢おうか?」
言外に無礼者とお茶を飲むつもりはないと言えば、次は私とお茶をできる場所に来ると宣言されてしまいました。
「お茶をできるようなお話しが出来る間柄になるのでしょうか」
「さて、それはそなた次第では?」
作り物の笑みで無礼者と親しくしたくないと言えば、私の行動次第で相手の行動も変わると言われてしまいます。
なんとも言葉遊びのお好きそうな、手ごわい相手ですね。
「よく存じ上げない方とは緊張してしまいます」
「誰だって初めはよく知らない者同士だろう? 重要なのはその後の関係性だと僕は思うのだけど、君は違うのかな?」
「私も同じ意見ですよ」
軽い探り合いの会話の中、金色の瞳の縦長の瞳孔が探り当てた、というように細く引き締まりました。
「……ヴィヴィアナ=オネルヴァ=オイドクシは、僕の知っている星暦だと、約一年前の王家が主催したお茶会で誘拐されているはずだった」
その言葉に、私は作り物の笑みを深めました。
「もう一点あげるなら、その生母は心労などが原因で亡くなっているはずだった。だが、君は誘拐されず、生母も生きている。星暦は簡単に変わるはずがないのに、どうしてかな?」
「………………おかしいことをおっしゃいますね」
目の前の人物の言葉に私は作り物の笑みを消し、挑発的な笑みを浮かべているようです。
「ヴィヴィアナも、その生母も、オイドクシ公爵家から約一年前に籍を離れました。星暦にとってそれはささやかな変化でしかないはずですよ」
「なるほど?」
誘拐された事実が消えても、生母が死ぬ事実が変わっても、オイドクシ公爵家から2人がいなくなったという星暦は変わらない。
それは、オイドクシ公爵家に後妻と新たなる令嬢が籍を入れるという星暦に繋がります。
「今は小さな波紋が、大きな波に繋がる可能性はあるよね」
「そうですね?」
「さて……君の作り出した波紋は、この星にとって薬か毒か……」
明らかな挑発的な口調。けれどもそこに浮かぶ表情はひどく楽しげなのがなんとも不気味ですね。
「過ぎてしまえば薬といえども毒になります。適量であれば、毒であっても薬となるでしょう。ただ……外からの異物にはいつだって注意すべきですよね」
「…………ふーん?」
私の言葉に満足したのか、クスリと笑った目の前の人物は肩をすくめました。
「君がこの星にとって、毒にならないことを願うよ」
笑みと共に告げられた言葉が聞こえ終わった時、馬車の揺れは戻り、目の前の人物は消えていました。
動き始めた馬車の中、耳に「またね、神の選んだ外からの異物」という囁かれた言葉が残りました。
(………………お名前を聞きそびれてしまいましたね)
そう考えながら、動き出した外の景色に目をやります。
星暦の存在を知るということは、あの人物が神が口にしていた星の守護者なのでしょう。
(また……お会いするのでしょうね……)
出来れば味方になって欲しいけれど、と思いながら流れていく景色と、そこに息づく人々や物を眺めて思わず自然な笑みが浮かんでしまいました。
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




