幼きジュエリアたち②
いったい何を言い出しているのだという空気を作りだした第一王子本人は、至極真面目に聞いているようで、私が呼んだ2人の令嬢をじっと見つめています。
「………………第一王女殿下の隣には、常にタンザナイト公爵令嬢がいらっしゃいましたので」
「第一王子殿下のご心配なさるような子息は、近づくことも出来なかったようですよ」
スファレライト子爵令嬢の妹君の言葉を引き継ぐように、アングレサイト男爵令嬢が言うと、安心したのか第一王子がほっと息を吐き出した後、私を見て頷きました。
(いえ、そんなよくやった、みたいに頷かれても困るのですけれど……)
第一王子からさりげなく視線を外し、フロリアナを見れば、私の意図を汲み取ったのか、フロリアナは咳払いをして空気を変えてくれました。
「えっと、……ごめんなさいヴィア。お二人も、わたくしのお兄様が急に妙なことを聞いてしまって、驚かせてしまいましたわね」
「「いえ」」
私はあえて何も言いませんでしたが、スファレライト子爵令嬢の妹君とアングレサイト男爵令嬢は、お気になさらずにと苦笑をしています。
苦笑するしかありませんよね。
「……改めて、発言をよろしいですか、第一王子殿下」
「その前に」
私が発言の許可を取ったとたん、遮るように口をはさんだ第一王子に全員が「またか?」と思ったのは仕方がないでしょう。
「第一王子殿下とタンザナイト公爵令嬢に呼ばれるのはおかしいと思う」
「……と、おっしゃいますと?」
今度は何を言い出す気なのだろうと思えば、意外なことを言われ、思わず首をかしげてしまうと、第一王子はコホン、と少し照れた様子を見せながら言葉を続けます。
「フロリアナのツインレイというのなら、俺にとっても妹のようなものだろう。なら、今後は俺のことはヴェスペリオンお兄様と呼ぶことを許可しよう」
「「ブフッ」」
「—っ」
恥ずかしそうに、けれども自信満々に言った第一王子の斜め後ろに立っているウルフェナイト小公爵とジンカイト小伯爵が、笑いをこらえきれなかったのか同時に吹き出し、スファレライト子爵令嬢は声にこそ出していませんが、顔を逸らして口元に手を当てて笑いをこらえています。
一方、フロリアナを含めた私たちは、いったい何を言われているのかと一瞬ポカンとしてしまいます。
「……恐れ入ります……?」
いえ、名前呼びを許可してくださるのはありがたいのですが、お兄様とはいったい?
思わず疑問形の返答になったのは仕方がないのではないでしょうか。
フロリアナも複雑な心境なのか、私の腕に両腕で絡み付くと、じっと第一王子を睨みますが、シスコン……いえ、フロリアナ大好きな第一王子を喜ばせるだけだと思います。
「それで、その……ヴェスペリオン第一王子殿下」
「……」
一応、名前呼びをしつつ、第一王子殿下という敬称を付けたのですが、お気に召さないようで睨まれてしまいます。
「………………ヴェスペリオンお兄様」
「なんだ」
仕方なくお兄様と呼べば、満足したのか嬉しそうに頷きますが、これはこれでどうなのでしょう?
フロリアナと第一王子の呼び方が全く同じなのは、他の貴族に示しが付かないのではないでしょうか。
まあ、このことに関してはあとでお話し合いをしましょう。
「本題に入りたいのですが、よろしいでしょうか?」
「……ああ」
私の言葉に、嬉しそうにしていた第一王子の表情が引き締まり、ウルフェナイト小公爵たちにも緊張感が戻ってきます。
「まず、スファレライト子爵令嬢の妹君……少々呼びにくいですね、お名前で呼んでもよろしいですか?」
「ええ、どうぞアンディアとお呼びください」
「ありがとうございます、アンディア様」
「……わたくしも、アンディア様と呼びますわね」
「はい、もちろんでございます、第一王女殿下」
どこか対抗するように申し出たフロリアナだけれども、アンディア様は穏やかに微笑んで頷くだけで受け入れた。
「それで、アンディア様には今後フィリーの侍女となって欲しいのです」
第一王子に対する姉君のように、と言外にいえば一瞬考えるそぶりは見せたものの、私の視線を受けると、姉に視線を向けてなにか確認した後、私に視線を戻しゆっくりと頷きました。
「謹んでお受けいたします。いつからこちらに移ればよろしいでしょうか」
「ご両親の許可が出たら、出来るだけ早めにしていただきたいですね」
「承知いたしました」
幼いとはいえ、アンディア様は10歳。
スファレライト子爵家であればもう基本的な侍女の実技だけでなく、護身術や護衛術を身に着けているでしょう。
フロリアナもアンディア様が専属侍女になる事に反論はないようで、相変わらず私の腕にしがみ付いてはいますが特に何も言いません。
「次に、アングレサイト男爵令嬢」
「はい」
私としてはこれが一番の本題ですね。
喉の渇きを潤すために、用意されたミルクを一口いただきました。
「……ジンカイト小伯爵にも確認をお願いしたいのですが、本日、お茶会の会場内が見える場所に、なにかあった、もしくは感じましたか?」
ピリっとした空気をジンカイト小伯爵とアングレサイト男爵令嬢は出しましたが、二人で視線を交わした後に「今のところ、そのような報告はありません」とジンカイト小伯爵が答えてくれました。
「そうですか……」
「不審人物がいた報告はありませんでした。ただ、不審人物ではない人はいた、という事実はありますね」
ジンカイト小伯爵の言葉は、その不審人物と判断されてない者も調査対象にいれるか、という問いかけでしたが、どこまでを範囲に入れるかは悩ましいですね。
「タンザナイト公爵令嬢、私も会場内にいましたが、不審なものは特に感じませんでした。第一王女殿下のそばにいる時も、もちろん感じておりません」
アングレサイト男爵令嬢の言いたいことはつまり、フロリアナではなく、私に向けられたなにかではないかということ……。
「それは…………面倒ですね」
不安そうに私を見るフロリアナを安心させるように、腕に巻き付いたままの手を撫でて、私は窓の外に視線を向けました。
★アンディア=セレストア=スファレライト
ジュエリアの血筋の1つ。子爵令嬢。ヴィヴィアナより4歳年上。
ヴィヴィアナの依頼でフロリアナの侍女として王宮で暮らすことになる。
忠誠心が強いが、内心ではヴィヴィアナとフロリアナのてぇてぇを至近距離で観察できて幸せ。
★アングレサイト男爵令嬢
ジュエリアの血筋の1つ。男爵令嬢。ヴィヴィアナより5歳年上。
情報収集や諜報を得意とする王家の影を多く輩出する家出身の令嬢。
中性的で将来男装の麗人になると今から期待されている。
周囲にボケが多いのでツッコミが追い付かない苦労人。
★フェンリス=ルビーレイ=ジンカイト
ジュエリアの血筋の1つ。伯爵子息。
ヴェスペリオンよりも4つ年上の専属護衛騎士。
婚約者はいるが仲睦まじくしているという話は本人からも周囲からもない。
お茶目な性格だが、主であるヴェスペリオンを守るためには修羅になる一面がある。
★ミラグマ=レセプター=スファレライト
ジュエリアの血筋の1つ。子爵令嬢。
ヴェスペリオンの2つ年上の護衛も兼ねる専属侍女。
文官の恋人がいるらしいという噂があるが真偽は不明状態を維持している。
親しみやすいどこにでもいそうな容姿をしているが、化粧で印象が変わりすぎると評判。
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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。
あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




