子狐との違いは…
今にも爆発しそうなほどの怒りを抱えているのが分かる第二王子の後ろでは、未だにどうしたらいいのか判断ができない子女たちがオロオロと私たちを見てきます。
公爵家、いえ、ジュエリアとはいえ許可もなく王族に口を利くことは当然無礼なことです。
私だけであれば、ですけどね?
「ヴィアの言う通りですわ、第二王子殿下」
僅かな震えを含んだ小さいはずの声は、妙に会場内に通りがよく、誰の耳にもしっかりと届いたのが分かります。
これが、ループを繰り返したことで獲得したフロリアナの技術のひとつなのでしょう。
「わたくしは女ですから、皇帝にこそなれません。けれど、ヴェスペリオンお兄様に万が一何かがあった場合、お養母様の夫の次に皇帝の座に一番近くなるのは、わたくしの夫になる方ですわ」
フロリアナの言葉は、第二王子に皇位継承権が巡ってくることはないと宣言しているもので、彼に取り入ろうとしている子女達は互いに視線を交わし、誰がどう動くかを探り合っているのが分かります。
特に令嬢たちは、第二王子の婚約者の立場を狙っていたこともあり、皇位継承権が発生しないと分かった今、どう動くのが自分たちにとって有利なのかを必死に考えているのでしょう。
「それに、ヴィアはわたくしの親友……ヴェスペリオンお兄様にとってのウルフェナイト小公爵と同じですわ。無礼を働くことは、このわたくしへの侮辱と判断させていただきますわ」
いつの間にかフロリアナの声からは震えは消え、弱々しい声は王女にふさわしい堂々としたものに変わっていっています。
(その堂々とした姿こそが、貴女の本質の輝きですわ、フィリー)
私はフロリアナの横に並び立ち、第二王子を見つめます。
「身分を口に出すのであれば、自らもまた身分をわきまえるべき。そうではございませんか、第二王子殿下」
「ふざけるな!」
顔を赤くして怒鳴った第二王子に威厳などあるわけもなく、フロリアナと私や他のジュエリアの子女たちだけでなく、良識ある子女達からも冷たい視線を向けられています。
歪められた星暦の中で、貴方は多くの味方を作ることになります。
けれどもそれは、あくまでも歪められた星暦。
私はその星暦をあるべき形にするために、私のツインレイと共に生きるためにここにいるのです。
「ふざけているつもりなどありません。先ほどのフィリーの言葉をもう忘れたのですか? 私を第二王子の下に置くことは、フィリーを下に置くことと同じ。そのようなことを、身分にこだわる第二王子がなさるはず……ありませんよね」
にっこりと、何の疑いも抱いていない純真な子供の笑みを浮かべ、そう言ってしまえば、反論することも出来ず、第二王子は口をパクパクと開閉し、私を指さしてきます。
その態度が随分と情けないと思っていれば、不意にフロリアナが私の腕に自分の両腕を絡ませ、第二王子を見つめました。
「わきまえていただけますわよね、第二王子殿下。……そうそうあまり目に余る行動をとり続ければ、それこそ第二王子殿下の母君に迷惑がかかってしまいますわよ? これ以上お爺様にお叱りを受けるようなことになっては、いかに第二王子殿下が母君に大切にされているとはいえ……いえ、わたくしと違って第二王子殿下は母君に大切にされているから大丈夫でしょうか?」
少し寂しそうに言うフロリアナに、誰もが双子なのにフロリアナだけが皇女に引き取られた理由を思い出す、もしくは想像してしまう。
自分に似た第二王子だけを溺愛する母親。蔑ろにされた王族の正統なる色を持つ第一王女を皇女が救い出した。
なんと悲劇的で喜劇的なのでしょう。
それこそ、いずれ国民向けに演劇の脚本の題材に提供してもいいかもしれません。
歪められたこの世界の物語より、よほど面白おかしいものになるでしょう。
(ならば、今この場では貴方の退場を告げる役回りになりましょう)
心でそうつぶやき、フロリアナを守るように身を寄せてから、改めて第二王子に視線を向けます。
「フィリー、私が……私たちが傍にいます。そうですよね、皆さま」
フロリアナに寄り添いながら、ジュエリアの子女達に視線を向ければ、にっこりと温かい微笑みを返され、そのまま私たちは第二王子に冷めた視線を向けます。
第二王子、フロリアナと違って貴方の完全な味方は、ここに誰もいないようです。
視線だけで語ってみましたが、意味が全ては通じなくとも言いたいことを多少察したのでしょう。
「こんな恥を僕にかかせて、ただで済むと思うなよ。お母様にはお前の望み通りきちんと話してやる!」
三下のような捨て台詞を吐いて会場を出ていく第二王子の後ろ姿はひどく情けないものでした。
(物心がついた子供のおままごとのほうが、まだ見ごたえがありそうですね)
そもそも、第二王子の母君に言いつけて欲しいなど、言った記憶はありません。
星暦だけでなく、記憶まで改ざんしてしまうのが、この世界の特徴なのでしょうか?
「…………そういえばフィリー、お勧めのお菓子がありますの」
「あら、それはぜひともいただきたいですね」
まるで何もなかったように振舞うフロリアナに、私は合わせるようににっこりと笑みを浮かべます。
そうすれば、第二王子の愚行など忘れるべき、もしくは、今は心のうちにとどめておくべきだと賢い子女達は理解するでしょう。
ジュエリアの子女たちを中心に、フロリアナの作り出した空気に従い、お茶会の中心は当たり前のようにフロリアナとなります。
もともとフロリアナの社交界デビューのためのお茶会ですから、第二王子が目立とうと動いたことがおかしな話なのです。
(とはいえ…………)
フロリアナと言葉を交わしながら、私は窓の外にさりげなく視線を向けました。
(先ほどといい、この違和感はなんでしょう……?)
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
https://youtu.be/0_eG4LgSRxc?si=sVh6MfslAAvzeO6r
https://youtu.be/6nR6zqxGNPY?si=SRqlyHR7kBCSOvNL




