ジュエリアの共感力と共犯者宣言
じっとこちらに向けられる視線に、私も微笑みを崩さずにいると、見つめ合う私たちがお気に召さないのか、フロリアナが座る位置を私のすぐ横に移し、触れ合った腕をしっかりと抱き込んできました。
「お兄様、ヴィアを見すぎですわ」
「いや、そんなことは……」
フロリアナに睨まれたからか、第一王子が慌てたように私から視線を外し、誤魔化すように咳払いをしています。
私からしてみれば、どちらもかわいらしい嫉妬なのですが、この場で指摘してしまえば二人とも拗ねてしまうのでしょうね。
「……母からすでに話は聞いている。ずいぶんと妹と仲良くなったそうだな」
わずかに威圧を込めた声でそう言われますが、私としては「ありがたいことに、親友にさせていただきました」と答えるしかできません。
フロリアナ的にはその言葉は少しだけ不服なのか、抱き込んでくる腕に僅かに力を込めてきましたけど、私たちの関係を言葉にして人に伝えるのは、まだ難しいでしょう?
だから我慢してくださいね。
「親友、か……」
こちらもこちらで不服なのか、面白くないという感情を隠しきれない声で第一王子が言います。
第一王子の今の年齢は16歳のはずですが、フロリアナのことになると少し王族の仮面が外れやすいのでしょうか?
仲良しなのはいいことですけど、やはり少し心配ですね。
「タンザナイト公爵家の令嬢であり、母も認めているのであれば俺に文句はないが……」
いえ、そんな文句があるという顔で言われても説得力がありませんよ?
「今は母の庇護下にいるフロリアナだが、実母と同母兄との間にいまだにくすぶる問題がある事は、タンザナイト公爵令嬢であれば耳に入っているだろう」
「はい」
夢の中でフロリアナにも聞いているし、お母様と養父であるお父様、お爺様たちからも聞いている。
フロリアナを蔑ろにして、支給される養育費を着服していただけではなく、侍女から受ける虐待めいたものもあえて見ないふりをしていたらしい。
だからこそ、証拠を集めてすぐに皇女様の正式な養女に出来たのだという。
「こう言うのは失礼だとはわかるが、君も似た境遇だったな」
「お兄様!」
咄嗟にフロリアナが止めようと声を上げたけれど、私はフロリアナの手に自分の手を重ねてそれを止めて、第一王子に向けて微笑みを向けた。
「はい。私は専属の侍女……乳母であった人に毒を盛られていましたし、実父はそれを黙認していました」
「フロリアナの傍にいるのは、同じ境遇ゆえの、傷の舐め合いでもしようとしているのではあるまいな?」
あえてこちらを試すような言葉に、思わず笑いそうになるのをこらえ、第一王子の背後に控えるウルフェナイト小公爵に視線を向ければ、僅かに困ったような、それでいて楽しそうな色合いを瞳に乗せています。
彼もわかっているのでしょう、これが第一王子の本心ではないことに。
いえ、気づいていて当然ですよね、彼らの関係もまた、かけがえのない親友同士なのですから。
「フィリーと傷の舐め合いなんて、そんな非生産的で停滞することをするつもりはありません。だって……」
そこで言葉を一度切ってフロリアナに視線を向け、目を合わせて微笑みます。
「私たちは共に未来を切り開いていく共犯者なんですから」
驚いたように目を大きくしたフロリアナですが、すぐに私と目をしっかり合わせて頷き、鋭い視線を第一王子に向けました。
「わたくし、同情心を向けられたぐらいで親友を選ぶような、愚かしい王女でいるつもりではありませんわ。お兄様やお養母様が誇れる王女になるつもりですもの」
思わぬ反論に第一王子が焦って「お前がそんな愚かしい子とは思ってない」と弁明をしたところで、こらえきれなかったのか、ウルフェナイト小公爵が「くふっ」と息を漏らして笑いを押し殺しました。
「悪いね、タンザナイト公爵令嬢。こいつはフロリアナ王女殿下のことになると、どうしても警戒心が上がってしまうんだ」
「仲が良いのは喜ばしい事ですね」
ウルフェナイト小公爵に視線を向けて頷けば、それだけで私が本心でフロリアナを共犯者であると言ったと理解できたのでしょう。
「ヴェス、僕は彼女のことを信じていいと思うけどね」
ウルフェナイト小公爵の言葉に、第一王子が訝し気な視線を向けました。
「それは、同じジュエリアとしての勘か何かか?」
「否定はできないかもしれないけど、彼女の目には覚悟がある。そういうのはわかるよ。……あ、これがジュエリア同士の共感性ってやつかな?」
ヴェスは感じない? とウルフェナイト小公爵が言えば、第一王子はむっと唇を尖らせました。
「王族のジュエリア……ペツォッタイトの血筋は自分のパートナーになる相手以外には、そういう共感性はなかなか発揮されないんだ」
知っているだろう、と低い声で言う第一王子にウルフェナイト小公爵が楽しそうに笑みを浮かべます。
そしてフロリアナに視線を向けました。
「フロリアナ王女殿下は、タンザナイト公爵令嬢に覚悟を感じている……そうですよね?」
「ええ。わたくしは、ヴィアを信じておりますわ」
はっきりというフロリアナに、「だ、そうだけど?」とウルフェナイト小公爵が第一王子に言えば、小さなうなり声をあげて第一王子が「そんなこと、フロリアナの態度を見ればわかる」と、負け惜しみのような声を絞り出すように言うので、今度こそウルフェナイト小公爵が声を出して笑い、私も思わず「ふふっ」と声を出して笑みがこぼれてしまいました。
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あ、この作品のPVあります。
見ていただけるとヒャッホーーーーーーーーーイって飛び上がった末の感謝の土下座をします(イマジナリーで!)
↓ こちらです。楽曲もオリジナルです!歌詞頑張りました!
https://youtu.be/lGgzV-qP2d4?si=qfMnJDU_K_SPcavB
↓ 曲 2バージョンあります(歌詞は同じです)
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