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勇者の隣は、茨道。〜最愛の少女の隣に立つために、弱肉強食の異世界で必死に足掻く少年〜  作者: とい
2章 王国騎士の日々

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幕間 茨道の隣

 アストリア王国の中心、アストリア城。

 部外者は決して入る事の出来ない、落ち着けるのは高貴な者だけの聖域。


「王国騎士団に最年少の騎士が2人‥‥‥ずいぶん有望らしいなぁ」


 豪華な椅子に座り、両手に広げた新聞記事を見つめる少年。足を組んで座っていて、近くの紅茶カップへ右手を伸ばす。


「って、紅茶切れてるぞ! 早く持ってこい!」


 すると数人のメイドへ怒鳴り、舌打ちしながら新聞に目を通す。


「ったく、最近は気の利かない奴が多すぎるな」


 第三王子、ジーク・アストリア。

 14歳となった彼は、王立学院の入学が残り1年後に迫っている。


「おい菓子も切れたぞ!! 早く持ってこい!!」


 その傍若無人な言動は、身分という壁によって殆どの人間が拒めない。


「ったく‥‥‥って、あの女」


 ジークは悪態をついた直後、無意識に声を漏らしていた。


「‥‥‥ふぅ」


 彼の目に映ったのは、廊下を歩いている少女。ただ呼吸して歩いているだけで、周囲を虜にしかねない可憐な容貌と眩い銀髪。そして、どこか儚さもある。

 ジークが眉を顰めて新聞を机に置き、通り過ぎようとする銀髪の美少女を睨み付ける。


「おいセリカっ!! 兄への挨拶すら出来ないのか、礼儀知らずが!!」


 そして立ち上がりながら右手を伸ばし、唾が飛ぶほど大声で怒鳴っていた。異母兄妹である、妹に。

 すると彼女の足がピタリと止まり、身体を僅かにジークの方へ向ける。


「‥‥‥話しかけないでくれる?」


 そう呟いた言葉は、氷のように冷たい。視線は醜い化け物でも見ているかのようだった。

 その態度にジークが睨み付けながら、歯軋りし始める。


「私の事、嫌いなんでしょ? 私もあなたの事が死ぬほど嫌い。だから関わらないでくれる?」


 少女の全身から溢れ出す、底無しの魔力。

 彼女の身体を流動している魔力は、まるで生き物のように暴れている。

 周囲を一瞬で消し飛ばしかねない。そんな威圧感が今の彼女にはあった。


「っ、なんだその口は!? おいセリカぁッ!!!」


「ーーーだから、気安く呼ばないでくれる? 気持ち悪いから」


 第三王女、セリカ・アストリア。

 兄であるジークを一蹴し、彼女は前を向いて淡々と歩いていく。


「〜〜〜本当にお前と、半分でも血が繋がってるのか!? 孤児院なんてゴミ溜め暮らし、俺なら耐えられないなぁ!!?」


 直後に響く、ジークの容赦無い罵倒。

 セリカは何も言い返さない。ただ唇を噛んで、廊下を歩き去るのみ。

 このような嫌がらせは、セリカにとって眼中に無い。


「‥‥‥」


 セリカは自室に入り、無意識に息を吐く。

 まるで居間と勘違いしそうなほど広い空間。だが最低限の家具とベッドのみで、あまりにも殺風景な室内。とても一国の王女とは思えない。


「何があっても‥‥‥心は、ずっと一緒だよね」


 小声で呟き、右手を胸に当てて目を閉じた。手のひらで胸のポケットを押さえ、微かに力を込める。


「一緒だよね‥‥‥アベルっ」


 その場で崩れ落ちて、床に座り込む。顔が自然と俯き、涙が溢れる。


「もう会えないけど、側にいるよね‥‥‥?」


 孤児院で過ごしてきた金髪少年は、もういない。

 セリカの認識では、もうこの世にすらーーー。


「私たちは、ずっと一緒だよねっ‥‥‥?」


 セリカは泣いた。最年少の冒険者が死刑になった事を知ってから、時折悲しみに押しつぶされそうになる。1年以上経った今でも、それは変わらなかった。


「そうじゃないと私、こんな世界で生きられない‥‥‥!!」


 そして駄々を捏ねる子どものように、嗚咽を漏らして泣きじゃくる。


「もう一回だけでも、あなたに会いたかったよぉ‥‥‥!!」


 勇者と称される王女の道が、生易しいはずがなかった。

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