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勇者の隣は、茨道。〜最愛の少女の隣に立つために、弱肉強食の異世界で必死に足掻く少年〜  作者: とい
2章 王国騎士の日々

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第49話 初任務の後

「ーーー動きが遅い!! もっと踏み込んで圧を掛けないと切り込まれますよ!!?」


 新人の王国騎士セレノアは、自己研鑽を積む普段の日常に戻った。

 教育係のシレーナは、相変わらず手厳しい。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ‥‥‥」


「いつまで寝そべってるんです? 辛いなら、もう終わりにしますか?」


「っ、まだまだッ!!」


 だがセレノアは、彼女の修練を苦しいと思った事は無い。むしろ感謝しているくらいだった。

 強くなりたいと、心の底から求めているから。


「はぁッーーーゔっ!?」


 だが、セレノアは眉を顰めて足を止める。左手で無意識に、頭を押さえていた。


「大丈夫ですか!?」


 するとシレーナは短剣を収め、声を出しながら近付いてくる。セレノアはそれを左手を前に出して制止しながら、意識して息を吸う。


(急に痛みが来て‥‥‥思考が乱されるっ)


 これが初任務の後から不定期に起こる‥‥‥突発的な頭痛。意識が散漫になってしまうほど、無視できない痛み。


「今回は2日連続で、ですか‥‥‥大丈夫ですか?」


 彼女の右手が肩に乗り、優しく撫ででくる。

 存在を主張してくる頭痛は、時間が経つにつれて次第に薄くなっていった。


「‥‥‥大丈夫です。心配させました」


 やがてセレノアは深く息を吐き、目前の彼女を見つめる。

 だがシレーナは、顎に左手を当てて物思いに耽っていた。


「あの、シレーナさん?」


「‥‥‥やっぱり、一度診てもらいましょうか」


 顔を上げた彼女が、強い意志を持った目付きで話しかけてくる。

 セレノアは一瞬だけ口を曲げ、咄嗟に視線を逸らす。


「いや、そのうち治りますって」


 発言の通り、あまり乗り気では無かった。

 王国騎士の任務を受けられるよう、もっと強くなりたかった。


(もう4年弱しか無い‥‥‥王立学院の学費、その4割も届いてないのに、余計な時間は掛けられない)


 セリカに会いたいという自分の気持ち。

 セレノアにとって、それが何よりも最優先事項だった。


「それよりもまだ今日の修練をーーー」


「おだまり」


 早まる気持ちを言葉に乗せると、続きを遮られた。

 シレーナが眉を顰め、睨み付けてくる。


「自分の身体を大事に出来ない馬鹿に、教える事は何もありませんから」


 その言葉に、何も言い返せなかった。

 セレノアは俯いて下唇を噛む。


「頭だけでなく、左肩もです。なんとか明日に診てもらえるように、頼んできます。今日の修練は終わりです」


「そんなっ」


 セレノアは目を見開いて、声に出して抗議する。

 だがシレーナは聞き入れず、踵を返して歩き始める。


「言っておきますが自主練も絶対ダメです」


「そんなッ!!」


 セレノアの声が更に大きくなる。

 心を見透かされたような発言に驚き、悔しがる。


「あ、あのっ、日課の素振りだけはさせてください!! おねがいしますッ!!」


 そして、せめてもの反抗を行う。

 駄々を捏ねる子どものように、懇願の目で彼女を見つめる。


「‥‥‥わかりましたよ。ただし今から50回だけ、夜は絶対にしない事。見ててあげますから、丁寧に振りなさい」


 その意志に免じて、シレーナは少しだけ折れた。

 セレノアは勢いよく返事をすると、右手に持った王国騎士の剣を‥‥‥意識して振り始める。


「ッ、ッ! ふッ!!」


 空を切る音が、シレーナの耳に届く。

 素振り50回は、あっという間に終わった。


「はいじゃあ明日まで没収ですー」


 するとシレーナがむんずと近寄り、セレノアの手から剣を奪い取っていく。


「ぁ」


 セレノアは一瞬反抗しそうになったが、約束を思い出して微動だにせず受け入れた。


「じゃあ明日の朝、ぇ〜っと11時にここへ集合。そのまま頭と左肩を診てもらいに行きます」


 手に持った剣を下ろしたシレーナが、翌日の予定を一方的に話す。


「‥‥‥あの、診てもらうって誰にですか」


 セレノアは気になった事を質問する。

 彼女の話を受け入れた事で、詳細を知りたくなった。


「そういえば、まだ会ってませんでしたね。ついでに挨拶も済ませましょうか」


 シレーナが目を丸くして呟くと、ニィ〜っと口を横に広げて笑みを浮かべる。


「人体に詳しい人が、五番隊にいるんですよ」


 彼女の言葉は、あまり答えになっていなかった。

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