夢のなんでもありの設定にもご注意を
一日目 SHR前
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どうして十数年前に卒業した学校の教室にいるんだ?
どうして卒業以来は着ていなかった学校の制服を着ているんだ?
どうなってるんだ?
俺は家で仕事をしていて、戦いの女神が買ってきてくれたお粥を意識が朦朧となるまで食べさせられ、その場で横になり、意識をなくしたはずだ。
なのに意識を取り戻したら、どうして学校の教室に? どうして制服を?
教室には俺以外に誰もいない。
廊下の遠くから会話をしている弾んだ声が聞こえてきたが、そのまま消えてしまった。
レトロな掛け時計を見ると、七時半過ぎ。
外の爽やかな風景からすると、当たり前だけど、朝の七時半過ぎ。
ここの学校の生徒たちが登校してくるのは、これからか。
近くの席の椅子に座り、途方に暮れる。
懐かしの教室で懐かしの制服を着て途方に暮れるなんて、トホトホだね……なんつって。
寒いオッサンギャグだったな、これはいくらなんでも。
それにしても、まだ胃の破裂しそうな痛みを感じるぞ。
「おっさん!」
優しさの半分でできているバファリンとは違い、優しさが完全無欠の戦いの女神の声が聞こえた気がして、椅子から立ち上がり、辺りを見渡した。
待っていても、戦いの女神が現れなかったので、教室から廊下に出る。
廊下で出くわしたのは、戦いの女神ではなくて後輩だった。
なんも考えてなさそうな顔をした後輩も俺と同じ制服を着ている。
「な、なん……おま……え……?」
「先輩、おはようございまっす。なにそんなに驚いてるんすか?」
「当たり前だろう! なんでお前がここにいるんだ?」
「先輩、落ち着いてくださいっす」
「いや、これは夢か? 俺は夢を見てるのか? だから、後輩が出てきてもおかしくないってことなのか?」
「先輩、しっかり混乱してるっすね。落ち着かないと、髪の毛の抜け毛が増えるっすよ」
「おっ、マジかよ」
俺は窓に映る自分の頭を見る。
窓の外の体育館やグラウンドや校庭や校門と重なってよく確認できないが、抜け毛はなさそうだ。
そうだと信じたい。
「さっき、先輩は夢を見てるのかって言ったっすよね。先輩の言う通りっす。先輩は夢を見てるっす」
「……やっぱりか?」
「そうっす。やっぱりっす。だから、先輩がここにいるのも、制服を着ているのも、変じゃないっす」
「だよな」
そうだよな。
目覚めたら懐かしの教室にいただなんて、懐かしの制服を着ていただなんて、おかしいよな。
「じゃあ、お前は俺の夢の中に出てきているだけなんだよな?」
「そうっす。夢を見ているのは先輩なんすから」
「だよな」
後輩が俺と同じ制服を着ているなんて、おかしいよな。
俺は夢を見ている途中なんだ。
「夢だったら、はやく目覚めないとまずいな。やり残した仕事がある」
「ここの学校の校名は『なつかしの高校』っす」
「ああ、そうか。俺が訊くのも変だけど、どうすれば夢から目覚められる?」
「先輩と俺はなつかしの高校の高校生で、同じクラスの二年抜け毛組っす」
「人の話を聞きなさいって。どうすれば夢から覚められると思う? というか、抜け毛組ってなんだよ」
「そして、そこの教室が先輩と俺のクラスの教室っす。抜け毛組の教室っす。抜け毛が気になる先輩は抜け気組の学級委員長っす。抜け毛のリーダーっす」
「抜け毛、抜け毛ってうるせえな。なんだよ、抜け毛のリーダーって」
「隣の教室のクラス名は禿頭組、その隣の教室のクラス名は植毛組っす」
「……俺の夢、なんでもありだな」
とにかく俺は夢を見ているということはわかった。
はやく目覚めて仕事の続きがしたい。
古典的手段として頬を抓ろうとしたとき、窓の外でセーラー服を着た戦いの女神が空飛ぶ馬……ペガサスに乗り、ゆっくりと降下していくのが見えた。
「先輩、戦いの女神さんの登校っす」
なんでもありすぎだろ、俺の夢。




