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23.どっちに行こうか決まってます


 あれから俺は皆に冒険者になる事を伝えたり、そのための準備をしたりと大忙しだった。 

 屋根裏部屋も、俺の荷物は残しつつ今後はアルテマとアルマナの部屋にするそうだ。そのための片付けをした。

 数日後、俺は村の皆に見送られた。



「…ユーマ、本当に行くんだ?」

「うん」


「さ、さみしくなるね…」

「大丈夫、時々は帰ってくるからさ」


 ジャンヌとルナは寂しそうだった。本当にいい友達を持った。



「ちゃんと毎日剣の稽古はするんじゃぞ」

「はい、師匠」


「弓の鍛錬も忘れるな」

「はい、エル師匠」


「鍛治は…専門家に任せろ…お前は…研ぎだけにしておけ…冒険者になるならなおさらな」

「はい、ゴル師匠」


 師匠達の有難いお言葉。



「時々は帰ってきなさい。それと定期的に手紙を書いてね。あと、女の子には騙されない様に。あとお酒とギャンブルは大人になってからよ。しても程々にしときなさい。あと毎日歯はきちんと磨いて。あと野菜も残さず食べなさい。あと…」

「母さん、大丈夫だよ。さんざん聞いたからちゃんと覚えてるよ」


 母さんは相変わらず心配性だ。大丈夫、言われなくても定期的に手紙は書くつもりだ。だって書かなかったらこの人絶対に様子を見に来る。



「父さんからは…特にない。ユーマも男だ。男なら頑張って夢を掴んでこい!」

「分かってるよ、父さん」


 父さんはサバサバしていた。まぁ今生の別れという訳でもないし、変に感動的に別れると今度会う時が気恥ずかしくなる。これでいい。



「じゃあ行くかい?」

「うん」


 俺は冴えなくてモテなくて足が臭くてタバコ臭い、商人のおじちゃんの馬車の荷台に乗り込んだ。



「じゃーねー! みんなー! またねー!」


 俺は力一杯手を振りながら10年生まれ育った村を後にした。





♢視点変更



「行っちゃったねユーマ…」

「うん…」


 ユーマの乗る馬車を見送りながら、ジャンヌとルナは互いの手を握っていた。



「ねぇルナ…」

「な、なにジャンヌちゃん?」


「私たちも来年村を出ようよ」

「え?」


「私、やっぱり3人一緒がいい…と思うの」

「それは…そうだけど…私にはきっと冒険者の才能なんてないよ…」


「…大丈夫だよルナ」

「え?」


「前にユーマ言ってた。私には剣の才能があるって。ルナには僧侶や神官系の才能があるって」

「ユーマくんが?」


 ジャンヌはコクリと頷いた。



「そうだよ、あんなに凄いユーマが言ってたんだよ」

「…そうなんだ」



 2人は必死だった。

 大好きな幼馴染みであるユーマがあまりにも多才で凄すぎて、おまけに将来の事もずっと考えていた。置いていかれたくない…2人はその一心で必死にくらいついていた。

 当の本人だけが自分には才能がないと勘違いをしていた。しかし、それも若干だが仕方なかった。一芸において2人はユーマの実力を明らかに超えていた。幼いユーマにはその才能が眩し過ぎて自分の多才さに気づかなかったのだ。自分は並であると。



「でも、どうするの? ジャンヌちゃんは冒険者になれるかもだけど、私は…」

「そんな事ない。ルナは凄いんだよ。だから、ルナは来年『教会本部』に入ればいいんだよ」


 教会本部…世界各地に点在する『女神教』の総本山。セイクリッド王国の王都にそれはあった。そこには全国から信徒が集まるのだが、それとは別に『聖魔法』の適正がある者を育成する機関も存在した。そこを卒業した者の中には、各地の教会に属し神官を勤めたり、冒険者となり仲間を癒し布教活動に勤しんでいる者もいた。



「そうか…教会を卒業して冒険者になれば…」

「ね。そしたらまたユーマと冒険出来るって」


「あ、でもジャンヌちゃんは?」

「私? 私は『学園』に行こうと思う。私、剣だけならユーマにだって負ける気がしないし多分学園に入れると思う」


 学園…セイクリッド王国の王都にある、貴族や才ある者を集めて育成する機関である。剣や魔法、学問など様々な分野を育成する場である。貴族等はコネクションを築いたり婚約をしたりする場でもあり、ジャンヌみたいな平民は卒業後、王国勤めの騎士となったり、冒険者となったりする者もいる。



「うん、ジャンヌちゃんならきっとなれるよ」

「でしょ! だから2人で卒業して、冒険者になって、またユーマと一緒に冒険しようよ!」


「うん!」

「約束よ!」



 2人は約束を交わした。

 ジャンヌは学園に、ルナは教会本部に入り、卒業後は冒険者となり、またユーマと一緒にいようと。

 しかし、2人はまだ知る由もなかった。

 どちらも卒業するまでにどんなに才があろうと5年はかかるのだ。つまり…鑑定の儀まで1年、卒業まで5年で2人がユーマと再会するためには6年を要するのだ。

 勿論、ユーマが帰省したり、街で偶然再会する可能性は大いにあるが、もしそれがなかった場合は実質6年後であった。




♢視点戻ります




「そいでよ〜ユー坊」

「何、おじさん?」


 おじさんは煙草を咥えながら怠そうに聞いてきた。



「どっちにいくんだい?」

「どっちって?」


「いや、冒険者になるのはいいけどよ〜王都にあるギルドで冒険者登録するのか、迷宮都市で冒険者登録するのか、どっちかな〜と思ってよ」

「え、なんか違いあるの?」


「違いは別にねぇよ。冒険者なんてどこのギルドでも登録出来るし。まぁただ、王都で冒険者活動するなら色々と便利よ。宿屋、飯屋、風呂屋、本屋、雑貨屋、土地屋、オマケに鍛冶屋、魔道具屋、魔導書店、最新のもんはみんな王都にある。依頼内容も大型魔物の討伐や貴族様の護衛、報酬金額もバカ高いし、交通も便利だ。てっとり早く名前を売るにも住むにも王都は最適だ。有名人になればあっという間に名が世界各地に知られるぜ」


「へ〜」


「迷宮都市は、まぁユーマなら知ってると思うが…簡単に言ったら迷宮攻略が目的だな。迷宮にはそこでしか採れないもんがある。財宝、資源、武器、防具、魔導書…お宝の山って訳だ。まぁ勿論こっちもリスクはある。階層主…いわゆるボスモンスターは何階層か毎に出てくる強力な魔物だ。こいつが落とすアイテムも超レアだが、中々倒せない。ハッキリ言って迷宮攻略を主とする冒険者の死亡率が1番高い」


「へ〜」



 なんかダラシないおじちゃんからは想像もできないくらい饒舌でしっかりとした知識だった。俺は…実はもう決めてある。



「実はもう前から決めてたんだ」

「へ〜。で、どっちに行くんだい?」



「うん、俺は…迷宮都市に行く!」

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