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22.父さん、母さん、俺…行きます


 鑑定の儀を終え、俺と両親は村に帰っていた。村に帰ってきた日の夜。俺はベッドに仰向けで寝転がり天井を見ていた。



「結局、はんたまってどんな固有スキルなんだろう…」


 鑑定の儀では、職業スキルと固有スキルの有無しか教えてくれなかった。そのスキルの詳細が分かればいいのだが…

 やはり、1年前に収納魔法ではなく鑑定スキルを買えば良かったのだろうか?



「確か…『ステータス』、なんつって…笑」



 すると、頭の中にスキルを覚えたりした時みたいな声が流れた。

『スキル鑑定Lv5を取得しました』

『スキル大魔術Lv5を取得しました』


 そして透明な板が目の前に現れた。



「え、嘘…なんで?」




【名前】

ユーマ

【職業スキル】

冒険者5 、勇者王5、大魔王5

【固有スキル】

半魂

【スキル】

剣術3、速読2、剥取り2、罠師2、研師2、採掘2、縮地1、天駆1、身体強化1、弓術1、鑑定5、大魔術5

【魔法】

ライジングテンペスト、アイテムボックス【小】

【装備】

十握剣、ナトゥリエルの弓

【収納魔法内】

剥取りナイフ、罠道具、砥石、子供用採掘道具




 俺は目をパチクリさせ、何度もゴシゴシと擦った。いや、だって…おかしいでしょ。え、だって…職業スキルになんか凄そうなスキル名が…なんだこれ?



『勇者王』

勇者を超えし存在。その力は勇者も魔王も軽く凌駕する。剣技は剣聖を超え魔法力は勇者も賢者も超える。あらゆるスキルを覚えられる。

奥義:ー未解放ー


『大魔王』

魔王を超えし存在。その力は魔王も勇者も軽く凌駕する。スキル大魔術…レベルに関係なくあらゆる魔法を習得でき習得数に制限がない。

奥義:ー未解放ー



 いやいやいやいやいやいや…

 なんで?

 え、これってあの勇者と魔王の事だよね…?

 異世界から呼ばれて、お互いに人類と魔族を率いて争いあう…今は勇者と魔王が駆け落ちしてしまい両者不在。


 え、俺って異世界人なの?

 いやいや、そんなバカな…




 等と数刻考えたが結論は出なかった。




「ま、いっか」


 勇者や魔王を超えると言ってもそれはレベル9の事で、ど真ん中の5ならレベル9の勇者と魔王よりも下だと思う。

 それに鑑定の儀でも文字化けしてたし、本当に発動してるのか分からない。そんな訳のわからない職業スキルは当てにできない。

 そんな事よりも重要なのが…



『半魂』

 中途半端な魂の持ち主。このスキルの所持者はあらゆるスキルのレベルが『5』までしか上がらない。



 とんでもないマイナススキルだった。いや、一概にそうとも言えない。5も上がると考えればプラスだ。

 つまりプラスでもマイナスでもない…世界で俺だけの固有スキルはプラマイゼロスキルだった。



「なんだよ…中途半端な魂って…もう訳が分からん…俺ってなんなんだよ…結局、凄いのか凄くないのか…どっちなんだよ…」





 次の日の夜、夕食を食べ終えた俺は意を決して両親に相談した。



「父さん、母さん、俺は…冒険者になりたい! です…」


 アルテマとアルマナの子守りをしていた父さんと、食器を洗っていた母さんは同時に手を止めた。

 2人は黙ったままだ。

 ダメか…?

 反対されるのだろうか…



「ええ、分かっていたわ」

「母さん…?」


 母さんは優しく微笑んでいた。



「あなたは昔から冒険モノや絵本が好きで、大人びていて、言葉もすぐに覚えていったし、どこかマセていて…手のかかる様な手のかからない様な…よく分からない子だった」

「家にいる時は本を読んでいて大人しいのに、外で遊ぶ時は一瞬でいなくなる…そんなユーマを育ててきたから分かっていたわ」

「ああ、この子は冒険がしたいんだって…いつか私たちの元を離れるんだって…覚悟してたわ」

「だからせめて今だけはと思って貴方を村から出さなかったわ…ごめんなさい」


「母さん…」


 母さんは少し嬉しそうな、少し悲しそうな、笑顔の様な、切なそうな顔をしてた。



「母さんを許してやってくれユーマ」

「父さん…?」


「前にも話したがお前は生まれた時最初、息をしていなかった。父さんも母さんもお前が生きている、それだけで嬉しいんだ」

「だからあの日…お前が山の中でボロボロで倒れていたのを見つけた時は気が気でなかった」

「父さんも母さんもお前を守るためならどんな事だってする、それこそ世界を敵に回したって構わない」

「だから…だから過保護に育ててきてしまった父さんと母さんの事を許して欲しい」


「父さん…」


 父さんは深々と頭を下げた。自分の息子にこんな風に出来るだろうか?

 うん、やはり俺の父さんはイケメンだ。



「大丈夫だよ、父さん。寧ろ俺は感謝してる。父さんと母さんの子に生まれてきて本当に良かった。だから、俺は…」


 ダメだ…

 上手く言えない…

 涙が溢れて…



「ユーマ、決して無理はしないで…辛くなったらいつでも帰ってきなさい」

「うん…」


 母さんは俺を優しく抱きしめてくれた。



「いや、男ならやっぱ偉業を成さないとな! 迷宮踏破でも、ハーレムでも、チートでも、無双でも、なんでもいいぞ!」

「なんだよそれ…」


 父さんはめっちゃいい笑顔だった。



「にぃに、ぼーけ?」

「にぃい、ぼーけ?」

「うん、冒険者になるよ。アルテマ、アルマナ。2人が自慢できる様な…カッコいい冒険者になるよ」


 可愛い弟妹も俺を癒してくれた。



 俺はこの家族の1人で本当に良かった。

 俺は…冒険者になる。


ー???ー



「テメー、やってくれたな!」


「アナタこそ!」


 それぞれ、黒と白のドレスに身を包んだ女性2人は取っ組み合いをしていた。



「折角、『破壊神の加護』と『魔王の心臓』を授けたのにどうしてくれんだ!」


「それはこっちのセリフです! 折角、『創造神の加護』と『勇者の心臓』を授けたのに、加護は打ち消され、オマケになんですか! あの『半魂』とかいうスキルは! とんでもなくマイナスなスキルですよ!」



「うるせー! お前のせいだろーが!」


「いいえ! アナタのせいですよ!」



「ああ、もう最悪だ!」

「ああ、もう最悪だ!」



 揉みくちゃの取っ組み合いはひと段落した。




「てか、テメーやってくれたな…」

「なんのことです?」



「は、シラを切るか? とぼけんな、腹黒女神が! なんだあの、幼馴染が剣聖に聖女って…勇者にさせる気満々じゃねーか!」


「あなたこそ! 気づいてないとでも思ってるんですか? あの子をこっそり彼と会わせたでしょうが! あわよくば魔族領まで連れ去る気だったのでしょ!」



「ふざけんな! 国境とはいえ、人間領。オマケに幼馴染は剣聖に聖女。師匠共もかつての人類の英雄! あれくらいお前に比べたら可愛いもんだぜ!」


「どこが可愛いもんですか! アナタは昔からそう! こっちが油断してたら直ぐに掠め取ろうとするんだから! だからガチガチに固めてるんですぅ! 私をそうさせたのは、今までのアナタが原因なんですから、怒るならかつての自分自身に怒りなさいよ!」



「なんだとテメー!」

「なによー!」



 どうやら第二ラウンドが始まった様です。第二ラウンドはボクシング形式で互いの拳が空を切る。その度に、どこかの世界は破壊され、またどこかの世界が創造された。




 しばらくすると両者は、仰向けで倒れていた。互いの頬には相手の拳の痕がクッキリと残っていた。




「まぁでも…」

「ええ…」



「「生きていてくれて良かった」」



 それはもう見事なまでにハモったのであった。両者は顔を真っ赤にさせ顔を逸らした。



「ふん」

「ふん」



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