表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/80

74話

 その母の気持ちが、素直に嬉しかった。

 リシャンの母の想いが、今回「魔物が出た」という形で北の村々を巡る機会を生み、そしてこの村がいまだいけにえを使っている事実を、王家に示す結果となった。


(これで……村長が迷いの森に、生贄をささげることは許されなくなる)


〈シャーリー、よかったな〉

〈えぇ。これから犠牲になる子はいなくなるわ〉


 兄とうなずき合った。私はポシェットの中を探り、魔力を抑える魔法を込めた、白い花の髪飾りを取り出した。そして、先ほどまで生贄として差し出され、今は両親の腕に抱かれている少女のもとへ歩み寄る。


「よく頑張ったわ。……これは、私からのプレゼント」


 この髪飾りは、身につけなくても彼女を守ってくれる。魔力を抑える魔法と、魔女の祝福を込めてあるのだから。


「可愛い! ありがとう、お姉ちゃん」


「えぇ。……兄、森へ帰りましょう」

「ああ、帰ろう」


 ドラゴン夫婦の卵も見つかり、生贄にされかけた少女も救えた。この村の壁は十分に堅牢で、新たに手を加える必要もない。依頼はすべて果たした、そう判断して帰ろうとしたそのとき。


「ずるいです。僕にも何かください。今回、僕も頑張りましたよ」


 まだ完全には動けないのか、アルバートは地面に座ったまま、こちらを見上げている。少女を見つけ、首飾りを回収した彼の働きは確かに大きかった。


「……わかったわ。これは前に作ったものだけど」

「なになに? 僕にくれるの?」


 私はポシェットから、魔女の祝福を込めたラベンダーのポプリ袋と薬水の代わりに、苦いガラーナ飴を取り出して彼に手渡した。


「飴と魔女のポプリ⁉︎ もらっていいの?」


「いいよ。本当に、魔法使いアルバートは頑張ったもの。でもその飴、魔力は回復するけど……かなり苦いから覚悟してね」


「ありがとう。大切にする。……っ、うわ、本当に苦い!」


 ガラーナ飴を口に放り込んだ途端、苦さに顔をしかめるアルバート。あのときのお茶会とは違い、素直に喜んでくれるその様子に、私の口元も自然と緩んだ。


「魔女」


 村長が騎士に拘束されている場所から離れ、ローサン殿下と騎士団長ミハエルがこちらへ歩み寄ってくる。


「村に出入りしていた商人の話を聞くため、村長はしばらく拘束する。それと魔女、近くに魔物の気配はあるか?」


「いいえ。魔物寄せの首飾りはアルバートの魔法の玉の中ですし、卵も元の場所へ戻しましたから、いま魔物の気配はないです。……気になるのでしたら、兄と一度、森を見回ってきますか?」


 殿下は一瞬考え込み、まっすぐ私を見つめて言った。


「……頼んでいいか?」

「はい。兄、行こう!」

「おう!」


 私は兄の背に乗り、迷いの森へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ