73話
アルバートが渡した首飾りに、見覚えがあった。それは兄も同じだったようで、石にかけられた魔法に気付いた途端、兄は今にも村長へ飛びかかりそうな気配を放つ。
〈兄、落ち着いて〉
〈落ち着けるか! こいつらはシャーリーを傷つけ、生贄にしたんだぞ〉
〈……そうだけど。でも、この石が付いた首飾りを、どこで手に入れたのかしら?〉
〈そうだな。魔法を付与できる魔法石は貴重だ。扱うにしても、その価値を知っている者でなければ無理な話だ〉
そう、これは貴重な魔法石。
魔物の体内からしか採れない、そう簡単には手に入らない石で、魔法を付与することができる。
(そもそも、魔力がなければあの石は見つけられない。付与した魔法も、魔力がなければ発動しない……)
ということは、あの子も。
私と同じように、魔力を持っているのだろうか。いまは両親に抱かれ、安心しきった表情を浮かべる女の子。私とは違う。愛されて育った子。
ふうっと、小さく息を吐く。
それにしても、魔物寄せと魔法遮断かぁ。
迷いの森を熟知していなければ、まず選ばないような魔法だ。
(九年前の私はこれを付けられて、迷いの森に捨てられた……。だから魔物に追われ、守りの出口にも辿り着けなかったのか)
……でも、あの子はどうやって助かったのだろう。
「シャーリー。卵が、森の奥まで出てきてくれたらしいですよ」
地面に腰を下ろしたままのアルバートが、私の思考を読み口を開く。また。この人は、私の考えを読んだ。
そうか、村長が拾ったというドラゴンの卵が、魔法石の反応に引かれて森へ向かい、そこであの女の子を見つけ助けた。
あの子がなんにしろ、助かってよかった。
私は運良くリィーネの森へ辿り着けたけれど、あの子には難しかったはず。一応、魔力は持っているようだけれど、ほんの僅かしか感じない。
(もしかすると、それも良かったのかも)
「ねぇ、あの卵が何だったのか、知ってるの?」
「さぁね」
「知っていても、お前に教えるか」
私と兄が同時に答えると、アルバートはハハッと笑い、肩をすくめた。
「仲がいいんですね」
そのやり取りを背に、殿下が村長に向かって声を張り上げる。
「この村は注意を受けているのに、まだ生贄を使っていたのだな。陛下が禁じているはずだ! 村長、この件とあの首飾り、村を出入りする商人、そして魔女への支給品についての話は、すべて持ち帰り陛下へ報告する」
「それだけは……!」
「聞く耳は持たぬ! 今から九年前、生贄にされた少女のことを、考えたことはあるのか!」
「あれは仕方がなかったのだ……! あの娘が魔物を倒したせいで、この村は目を付けられた。だから、生贄にするしか――」
「嘘をつくな」
殿下の声は、鋭く村長を断ち切った。
「あの娘は、一緒にいた少年を助けようとして魔法が発動したと、前の薬師魔女が父上に報告している。そして、お前たちは少女の力を恐れ、あの首飾りを付け森へ捨てたのだろう、ともな。今回、ようやく村に入ることができ、嘘ではなかったと知った……」
(……え)
胸が、どくりと音を立てる。
(リシャン母が……私のことを、そんなふうに陛下へ話していたの?)




