↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/141

100話──怪しい雲行き

 




「うーん……」

「どうしたんですか望さん」

「いや、やっぱおかしいと思ってな」


 王都南門にて。俺はやはりさっきの事に納得がいかないままでいた。


 イクリプス撃破後。変身も解除し、ギルドで薬草の提出と報酬の受け取りを終えてからそのまま戻って来たのだが、あのイクリプスとの戦闘でのモヤモヤした気持ちが消えない。


「いくらなんでも呆気なさ過ぎるっつうか……」

「それだけ望さんが強いって事ですよ!」

「まあ、そうなのかねえ」


 確かに、ハトエルの言う通りかもしれん。それに、苦労せずに倒せるならそれに越した事はねえんだが。どうも引っ掛かる。


「今回も四天王は現れなかったな」


 考えたって仕方ないし、俺はやる事もやったんで問題は無いのだが、何か釈然としない。




 そのスッキリしない感覚を携えたまま家に戻ると、ドアに何か紙が挟まっていた。


「ん? 手紙?」


 開いてみるとアルメお付きの執事オーネットからであった。

『突然申し訳ありません。こちらの手紙を読みましたら、西門にお出で願えないでしょうか』

 といった旨の事が書かれている。


「なんだ? またアルメがボーナスでもくれるってか?」

「とにかく、行ってみましょうよ」


 帰ってきて早々また外出だ。




 すぐに西門へ向かうと、オーネットは目立たない一般的な御者の服装と粗末な馬車で待っていた。


「急なお呼び出しで申し訳ありません。アルメ王女がぜひお話したい事があると申しております」

「ボーナスか?」

「恐らくは違うかと」

「なら却下だ。あいつにはスープで顔洗って出直せって伝えてくれ」

「望さん!」


 渋々オーネットの馬車に乗り、王城へと向かう。もう昼飯の時間になって腹が減ってきた。


 腹ペコな状態で城に着き、裏口から入ってアルメの部屋へと赴く。


「お二人をお連れしました」

『入ってください』


 中へと入ると、アルメが何時ものように待っていた。


「突然のお呼びだし申し訳ありません。どうぞお掛けください」

「おう、俺は腹が減った。今日の茶菓子はスパイスグリルセットとパスタにしてくれ」

「え? あ、そう言えばもうお昼ですね。かしこまりました。爺や、お二人にお食事を」

「承知いたしました」


 オーネットが出ていき、部屋には三人きりとなる。


「すみません急に。まだ食事も摂っていらっしゃらなかったのですね」

「おう、そうだ。お仕事の帰りにそのまま来たんでな。言っておくが俺は味にはうるさい方だぞ。出汁の取り方一つにでも不備があったら皿ごと料理をぶちまけて作り直させるからな」

「望さん! 態度が大きいですよ!」

「くくく、一度やってみたかったんだよな。美食家ぶって『コック長を呼べ!』てな」

「どうぞお手柔らかに」


 アルメは穏やかに微笑んでいた。



「それで王女様。早速本題なのですが、今日はどうしたんですか?」


 ハトエルがそう話題を切り込むと、アルメも頷いた。


「はい、実は……。王都周辺地域で奇妙な事件が昨日から発生しておりまして……」

「奇妙な事件?」

「はい。例のシャドー帝国の使役する召喚獣ことイクリプス。それが複数の地点に同時に現れたのです」

「なんだって?!」

「イクリプスが?!」


 思わぬ言葉に俺とハトエルは声を上げた。


「王都を囲む東西南北の村や市場、農場や牧場。さらには隣町の近辺にも現れたと報告を受けてます。対応した兵士や騎士団、冒険者の話からも、望さんが過去に撃破したイクリプスの特徴と一致している部分が多いため──」

「ちょ、ちょっと待てよ! ならそいつらは今どこに居るんだ?」


 イクリプスは普通のモンスターとは違う。不死身で強大な化け物だ。魔法少女──つまり俺以外に倒せる相手ではない。


「そういう事か……。分かったぜ王女様。つまり、その現れた複数のイクリプスを俺に倒して欲しい。そういう話で呼んだんだな?」

「え?」

「おい、ハトエル。お前のエンジェルレーダーで徘徊しているイクリプスどもの位置がわかんねえか?」

「分かりましたっ! やってみますね! む~~~ん! むむむむっ、ピピピピッ……」

「おう、どうだ?」

「サッパリです!」

「よーし、失せろ」

「ひどいや、ひどいやー!」

「仕方ねえ、最後の目撃地点に行って調査して捜すか」


 一度に複数のイクリプスとは穏やかじゃない。今日は派手な一日になりそうだぜ。


「王女様、その逃亡中のイクリプスがどこに居るか分かるか?」


 そうアルメに尋ねてみたのだが、返ってきたのはこれまた思いもよらぬ答えだった。


「いえ、その必要はありません。出現したイクリプス達は既に撃破されております」

「えっ?!」

「その説明が抜けていましたね。詳しくお話します」


 そこからアルメによる事の詳細が語られた。




 話はこうだ。王都周辺や近くの町に奇妙なモンスターが現れたという連絡が各地の守備隊の元に入り、兵士や騎士団が主として対処した。


 そこで遭遇したモンスターは、既存のモンスターを大型化し、強化したような怪物で、兵士達はすぐにイクリプスだという事が分かったそうだ。何より、最大の特徴であるコアも確認されている。


 イクリプスの脅威は知れ渡っていたため、兵士らもそれ相応の戦力で事にあたったのだが、思いの外すんなりと撃破する事に成功したらしい。


「各戦闘の指揮を担当した者達によれば、ドラゴンよりも劣る戦闘力だったとか」


 昨日現れたのが四体。そして深夜から今朝にかけて三体現れたそうだが、いずれも既に撃破済みだそうだ。王国軍側の損害も軽微らしく、肩透かしを食らった感じという事だ。


「ふーむ。複数のイクリプス同時発生。が、その強さは微妙で、俺の力無くとも撃破か」

「はい。報告によれば、コアなる部部へ重点的に魔法攻撃を加えたところ倒せたそうです。普通のモンスターより強力なのは間違いないですし、再生能力も確認されていますが……」


 今回の事件に当たった兵士の中にはヌーンタイド山や王都でイクリプスと直接交戦した者も数人居るそうだが、『全く別物』と証言するくらい、弱かったそうだ。


「そういやあ、俺もさっきサンセットレイクで一体倒してきたな」

「えっ? そうなのですか?」


 アルメは驚きの声を上げた後、すぐに頭を下げてきた。


「まだ報告を受けておらず、知りませんでした。どうもありがとうございます」

「おう、ボーナスよろしくな」

「申し訳ありません、今は厳しく……」

「ちっ。ならツケにしといてやる」

「もう、望さん。茶々を入れないで」


 ともかく、たしかに妙な話だ。


「俺が倒した奴も微妙な奴だったな。キングガーニンを素体としたイクリプスだったんだろうが、一発で呆気なく仕留められたし」

「そうなのですか? やはり魔法少女の力は凄まじいですね。いくら弱いと言っても、我が軍の兵士達は数十分の断続的な攻撃によって倒したと聞いております」

「ふーむ。なあ天使様よ。お前はあの化け物の原理を知ってたよな? 何か分からないか?」

「う~ん…………分かりません!」

「すまなかったな。お前が役立たずなのを知っておきながら毎回こんな風に聞いちまって」


 わーんっとアルメの膝元に泣きつくハトエル。


「いずれにせよ、帝国はまた何か企んでいるのは間違いなさそうです。この前の三限祭の時のような事にならないよう、警戒が必要そうですね」

「そうだな」

「さ、天使様。もう泣かないでくださいませ。ノゾムさんは口は悪い方ですが、本心から貶してるわけではありませんから」

「うぅ……。分かってはいます。けど、意地悪なんです~!」


 グスっとヘソ曲げたハトエルが俺の隣に戻って、話が再開する。


「現段階では、まだノゾムさんの魔法少女としての力を必要とするような事態にはなっておりません。しかし、不気味なのは四天王の動向です」

「四天王……」


 オニックス、ジェイド、サフィラ。そしてガルネット。


「ノゾムさんとヌーンタイド山で戦闘をしたという話以来、彼らの消息はパタリと消えています。今回の騒動でも、四天王が現れたという報告は受けておりません」

「ああ、俺もそこが腑に落ちなくてな。イクリプスが出たから奴らも近くに居ると思ったんだが……」


 てっきり、あのイクリプスは四天王でなければ召喚出来ないものなのかと思っていたんだが、違ったのだろうか。


 それとも、やはり彼らが近くに隠れて様子を見ていたのだろうか。



「難しい問題ではありますが……悲観的になる事もないでしょう」


 アルメが落ち着いた様子で言った。


「私達には魔法少女が──ノゾムさんがついていますから」

「おいおい、頼りにしてくれてるな」

「はい」


 華やかな笑顔。


「さ、そろそろ食事が来る頃でしょう。暗い話はいったん置いといて、楽しみましょう」


 その言葉が予言のように当たり、すぐにオーネットが飯を運んできたので、まずは腹ごしらえする事となった。




お疲れ様です。次話に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。