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第47話 闘技大会:Ⅴ(二日目)

二日目の開始から時間は経ち、リュー達の試合の順番が近づいてきた。


なお、白百合以外のSランクパーティの試合は白百合同様に短時間で終了したため、様子は概要だけを紹介する。

まず第2シードの『狂乱の嵐』についてだが、相手はCランクであり単純な試合となった。狂乱の嵐のメンバーが開幕早々に敵へ突っ込み、ほぼ一撃ずつで倒していく、というものだ。相手とのランク差も相まって、あまり盛り上がる試合では無かった様子であった。


次に第3シードの『ウェルビス』。こちらの試合もある意味単純ではあったのだが、会場に与えたインパクトは大きかった。

相手はBランクに成り立てで勢いはある面々だったのだが、何を思ったかウェルビスのリーダー、アレクサンドは彼らを1人で相手取った。1対5の構図となり、観客にどよめきがおとずれたが、決着はあっさりしたものだ。1人1人を、反応もできないほどの速さで屠っていく。

全く息も切らさずに、である。まるで準備運動でもしているかのような有様だったために、解説もやや呆気に取られて試合終了の宣言が遅れたほどだ。



さておき、マスターピース(仮)の面々は、試合の時間が近づくと昨日と同様に準備運動を始めた。2回戦の対戦相手はBランク。昨日のように一筋縄ではいかないことが予想される。

それを意識していることもあってか、入念に準備を行っている様子だ。

身体を動かしながらも、どのような作戦で行くか、それぞれの動きについても真剣に打ち合わせをしている。


ウォーミングアップを終え、高い集中を保ったまま控室に移動する。

やがて待つこと十数分、彼らの試合の順番がやってきた。

言葉少な気に声を掛け合い、場内へと入って行く。そして聞こえてくるのは昨日と同様か、それ以上の歓声。しかしそれに気圧されることは無く、リューはむしろ心地よさすら感じていた。


〔さあ!3番ゲートから入場してまいりますのはDランクパーティ、マスターピース(仮)!昨日の初戦では開幕から非常にえぐい戦術を見せてくれました。目と耳がイカれそうでしたね!〕


『あれは驚きでしたね。Dランクより数段上の実力を持っていると言っても過言ではありません。ああ、Dランクといえば、昨日の一回戦を勝ち進んだDランクパーティはここを含めて3チームだけという情報ですね。彼らはどこまで勝ち進むのか、はたまたここで終わってしまうのか。勝負は分かりません。まさに必見です』


〔さてさて、お次に4番ゲートから入ってまいりましたのはBランクパーティのゴルディルです。5人のうち盾持ちの剣士が3人という構成で、昨日の試合でも堅実な攻守を見せてくれました〕


『あなたの好みで解説のテンションを変えるのはやめてください。トリッキーなのが好きなのかもしれませんが、安定感のある強さというのも高ランクになってくると重要ですからね。彼らの実直な戦い方は他の冒険者の参考となる点も多いでしょう』


〔さすがはコールさん、マジメですねえ。元Sランカーの言葉は重みがあります〕


実況が進む中、両パーティの代表が握手をする。やる気が高まっているからか、今回はリューが握手に応じた。

両者無言のままに握手を終え、所定の位置へつく。


〔はい、それではお馴染みの10カウントから試合開始となります!私としてはさっさと試合を見たいので5カウントぐらいでいいと思ってるんですが仕方ないので従いましょう!〕


『オルタスさんの喋りが少なくなれば進行は早くなると思いますが。それでは皆さん、ご一緒に!』


カウントが始まり、ひとつずつ数字が減っていく。

彼らは昨日と同様、フードを目深に被り、その時を待つ。


そして、ゼロ。

試合が始まる。


昨日の光景と重なるように、ティファの頭上には光球が形成される。

それを見たゴルディルの面々は当然警戒していたのか、こちらへ走り込みながらも視線を下げるか腕で眼の周りを護るか対応している。


が、同じ手を二度使うなどという愚策を用いるはずもない。


《濡れ羽の霞》


リューが呟いた瞬間、敵の頭部周辺を黒いもやが覆う。一瞬のうちのことであったため、半数は咄嗟に脚を止めてしまっていた。幸いなことに思考の停止は刹那だったようで、視界が無いながらも前進をやめて素早く下がっていく。

仲間の魔術師に解除を求めているようだ。その声を聞いて魔術師が詠唱を始める。


しかし黙って見ているはずは無く、リュー達は3人で距離を詰めていく。リーナなどはほとんど音もなく地を滑るように接近していく。


最も早く敵に相対したのはリューだったが、魔術師の詠唱を耳にして違和感を覚え、攻撃を踏みとどまる。

すると直後、敵5人を囲うように炎の障壁が形成される。

途中で判断を覆し、防御を優先したようだ。これにはリーナもエルも刹那、足を止めざるを得なかった。

そして驚くべきことに、炎の中から敵の攻撃が向かってくる。流石に当たることはなかったが、こちらからの通常攻撃での手出しは難しいものとなった。

中では炎の維持をしつつ、もやの解除のための詠唱を行なっているのだろう。


せっかくなので、リューはそれを無駄にすることにした。


《大地の顎門》


もやを自ら消し、すぐさま土魔術で攻撃。

炎の内部にいる敵の足元に、トラバサミを模したような針状のものを出現させた。

この攻撃は文字通り相手に刺さったようで、くぐもった悲鳴が聞こえてくる。

魔術師もそれを喰らったのか、炎の維持ができなくなり霧散する。

針の強度はそれほど高くはないために、足を捕らえている部分を破壊して脱出したようだが、彼らは少なくないダメージを負っていた。


そしてまだ体勢を立て直していないうちに、3人で攻撃を仕掛ける。

リュー、リーナの攻撃は相手にいくらかの傷をつけるに留まったものの、エルはその大剣のフルスイングで1人の持つ盾を弾き飛ばすことに成功した。


ここで、長めの詠唱を行なっていたティファの魔術が発動する。


「アクア・ウルフ」


そう呟いて発現したのは、まさに水でできた狼。3体現れたそれは、ティファの指示によってまるで生きているかのようにそれぞれが敵へと向かっていく。


初めに相対したのは槍使いだったが、予想外の猛攻に慌てて判断を誤ったのか、突きを繰り出してしまった。水狼はいくらか身体の水を弾けさせたものの、ほとんど体積も減らすことなく槍使いに食らいついた。

もちろん、水なので噛みつき自体に大した攻撃力はないが、巧みに形を変化させて纏わり付いていく。

あっという間に身体を包み、手足には圧力をかけてギリギリと締め上げる。

どうにか引き剥がそうとするものの、身体が思うように動かずに苦戦をすることとなっていた。


残りの2体の水狼は、盾を失っていない剣士の1人と、魔術師の方へと向かっていった。

剣士は盾で水を薙ぎ払うという、有効的な対処を行って凌ぐ。

一方魔術師は、咄嗟に下級の火魔術で火弾を作り出して水狼へ撃ち出した。

だが驚くべきことに、ティファは水狼に水球を吐き出させることでこれに対応。

無防備になった魔術師に水狼が取り付くこととなった。


『これは非常に無駄のない魔術を出してきましたね。相手に取り付き、行動の阻害を行う。単純ですが水だけに払いのけにくいですからね。それに、魔力操作による形状維持、そして変化などが中々高い水準に達しているようです。この若さでこの制御力は大したものです』


〔お墨付きをいただきました。私としてもこのエゲツない魔術には感嘆の声を上げざるを得ませんね!さて現在2人が取り付かれて身動きが取りにくくなっていますので、マスターピース(仮)の数的不利はほぼ無くなったと言ってもいいでしょうね。ああっと!?アクアウルフが口元にも絡みつくう!!詠唱をさせないようにですね!酷い!上手い!慈悲は無い!〕


『本当に悪い笑顔で解説しますね』



2名が動きを封じられ、盾を取り落としている者もいる。

またとない好機を逃す彼らではない。


1人ずつ対応していけば個人の技量としては劣ることはないため、3人は少しずつ押し込んでいく。

均衡が完全に崩れたのは、相手取った剣士をリューが後ろに弾き返したタイミングだった。剣士が弾かれた先には、自らが取り落とした盾がちょうど転がっていた。


当然、チャンスと見て素早く拾おうと試みる。


だが、盾は全く持ち上がらなかった。

それもそのはず。エルが弾き飛ばした数瞬後には、リューは土魔術によってその盾を地面に貼り付けていたからだ。

あえて拾わせるために、盾の近くに弾いたのも計算。


混乱によって思考に空白の生まれた剣士は、直後にリューの手で昏倒した。


そのあとは早かった。

エルとリーナがそれぞれの相手を撃破するうちに、リューが槍使いにとどめを刺し、ティファも魔術師を気絶に追いやる。


オルタス氏の興奮冷めやらぬ中、マスターピース(仮)は3回戦へと駒を進めることとなるのであった。

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