第48話 闘技大会:Ⅵ(二日目)
1年投稿しなかった。けどエタってはないんですよね、これが。
二回戦が終わると、再び待ち時間がやってくる。
その間の時を、4人は雑談をしつつ過ごしていた。
買ってきた食べ物をパクつきながら、リーナがふと呟いた。
「そういえばリュー、だいぶ髪の毛伸びてきたねえ」
「ん、そうだね。もうそろそろ切らないとって時期かなー」
「揃える程度な感じか?」
「そうそう。切るならアゴから下に行かないくらいまでのもんだね」
「その、すごい短くしようとかは思わないの?」
リーナが抱いた疑問に、ティファが同調する。
「…そうすれば性別間違われないんじゃない…?」
その意見にリューは苦笑した。
「そう、なんだけど。僕ってその…短髪が絶望的に似合わないんだよね。母親に『うわっ』て言われるくらい」
リューに対して否定的なことはあまり言わないトリシアだが、その時は流石に首を横に振ったという。
「まあ確かに…なんかこれじゃない感は出そうだな」
「そうなんだよ。あの時は幼馴染に切ってもらったんだけど、その子も変な表情しながら切ってたし」
「途中でやめろよ…?」
「それも考えたけど、ここまで来たら行くとこまで行っちゃおうって思って…こう、冒険心が、ね?」
「似合うようになるといいな…?」
「なるもん…きっと」
口を尖らせ、願望を語る。時が経てば叶うのだろうか。
そうして30分ほどが過ぎた頃、僕達4人に声をかける人物の姿があった。
「ああ、居た居た。こんにちは、マスターピースのみんな」
そこには以前に僕達が護衛依頼を請け負った、商人のショーンさん。そしてその妻であり、リンコマギルドに職員として在籍しているセレスさん。2人が寄り添い立っていた。
「ショーンさんにセレスさん!お久しぶりですー!」
真っ先に席から立ち上がったのはリーナだった。少し遅れつつそれに続く。
「久しぶりですね。お二人で休暇ですか?」
僕の質問に対して、ショーンさんは鷹揚に頷いた。
「うん、一応はそうだよ。闘技大会の情報が発表されてすぐに彼女へ知らせて休みを取ってもらって、私自身は視察と言う名目でね。…今日一緒に来た部下は察してどこかに離れて行ってくれたよ」
そう言って苦笑する。
続けてセレスさん。
「最近はリンコマの方で見ないと思ってたから、もしかしたら大会のために王都を拠点にしてたんじゃないかなー、と予想してたんですよ。カンが当たってましたね」
「まさにその通りです。対人戦闘の経験が少なかったので、とにかく慣れるところからでした」
王都は修練所もありますしね、と口にしてうんうん頷くセレスさん。
そんな調子で久々の再開を喜んでいると、不意に横から声が掛かった。
そちらに皆が意識を向けると、強面の男性が2人立っていた。
2メートル近くはありそうな巨躯に分厚い筋肉を携え、肌は浅黒く眼光も非常に鋭い。
もうあれだ。パッと見でヤのつく職業の方にしか見えない。
若干の警戒を露わにしつつ、彼らの行動を目で追う。すると、前に立つ男性が後ろを指しながら呟いた。
「…席が空いた。座れ」
そちらを見ると、丁度ふたつ、空いた席がそこにはあった。恐らくはこの2人が先程まで座っていた席なのだろう。
予想外の言葉に戸惑いつつも、ショーンさんはおずおずと窺う。
「その、よろしいのですか?あなた方が座っていた席なのでは…」
「何も問題は無い。我々は昼食を買いに行くのでな。空いた席は有効に使うべきだ」
なんとも厳めしい表情で、彼はそんなことを口にする。顔に似合わず(と言っては失礼だけど)、紳士的だ。
そして彼の後ろに控える、こちらもまた凶悪な顔面を携えた男性は、その行動を誇るようにニヤァ…と口角を上げる。
はい怖いです。
彼らはそのまま早々に去っていった。
空いた席は僕たちの丁度後ろで、6人で飲み食いしつつ話すこととなった。
まずは近況の確認。
「ショーンさんは最近どうですか?お仕事の方は」
「仕事ね。ここ最近、少しずつ落ち着いて来た感じかな?君たちに最初護衛してもらった時は忙しくて人手が足りなくてねえ…。それに比べればだいぶん楽にはなったよ。こうして抜けて来れるくらいにはね」
コーヒーに一口、二口と口をつけながら苦笑する。
「それはよかったですね。昨日から試合は観に?」
そう聞くと、彼はセレスさんと一度顔を見合わせる。
「あ、いやあ…それがね」
「この人ったら、昨日も行けるって言ってたのに急に予定が変わった、とか言い出すんですよ?」
「その…それは仕方ないだろう?仕事でちょっとトラブルがあったわけだし…」
「でも約束してたでしょう?」
「うんごめん…そ、それはともかく!さっきの君たちの戦い、見させてもらったよ」
「露骨に話を…まあ後でゆっくり話しましょう」
「えぇ…ゴホン。昨日はなんでも、爆音と強烈な光で奇襲を仕掛けたんだってね?そしてそれを意識させた上での今日の先制攻撃。見事なものだったよ」
「奇策だけじゃなくて単純な技術も高い水準にあると思うわ。Dランクに居るようなレベルじゃないし、少なくともBランク相当か…あるいはAランクにも届きうるんじゃないかしら」
セレスさんは特に非常に高い評価をしてくれているらしい。それはギルドに身を置いて居る人間としての審美眼ゆえのものなのだろうか。
その意見に異を唱えたのは、いつも強気の発言をするティファだった。
「……それは言い過ぎだと。私達の連携がまだまだなのは、昨日今日の試合を通しても感じたこと。そして決定打にも欠けていて、これと言った際立った部分が無いのも現状。ゆえに、その品評は今の私達には不当だと思う。…ただし、数か月後にはそれに見合うように成長したいとは考えている」
淡々と分析しているが、このパーティのことを客観的によく見ている。
そして確かな情熱も感じさせる言葉だ。
その言葉にショーンさんもセレスさんもうんうんと頷いている。
そして、増長していないのもすごく良いところだ、と口々に褒め合う。
こう、褒められるのは嬉しいんだけど…とてもむず痒い感覚に襲われる。
そんなこんなでしばらく二人と話をしていると、試合の時間が近づいてきた。
例の如く準備を始めるために、僕たちはショーンさんたちに一旦別れを告げ、席を後にした。
ストレッチをしながら、僕たちは三回戦の戦略について議論する。
「さてと、どうする?次はBランクで6人の相手だったよね」
「4対6か…んー、そうだな…。まだ俺が元気だから、ぶん投げとかでもいいけどな」
「あ、ぶん投げるの?リューと…私も行きたいな!」
ぶん投げというワードに反応して、リーナが目を輝かせる。
「リーナ、お前あれやってみたかったのか」
「まあね?リューとエルが練習で試してるの見て、何あれ楽しそう!って思ってたの」
「それじゃあ、私も」
「魔術師が飛んで行ってどうする」
「たぶん着地もままならない」
「あれだよ、敵に着地すればいいんだよ」
「人はそれを体当たりか跳び蹴りと呼ぶなぁ?」
微妙にふざけつつも、作戦を組み立てていく。油断しているわけでは無いがそこに気負う心は無く、実績に基づいた自信が形作られているのを感じた。
試合まで残り15分。
闘いの場へ、向かう。
…自分で言っててなんだけど、ご愛読ありがとうございました!って言いそうな終わり方だ…




