海は通過点であり、帰る場所はそれぞれにある
白い門へ向かう列は、静かだった。
負傷者を先頭に、歩ける者は支え合い、歩けない者は担架で運ばれる。
損傷の激しい艦から順に人が降ろされ、記録板が手渡され、名簿と戦死者一覧が防水布に包まれていく。
誰もが疲れきっていた。
それでも足を止めなかった。
白い門が開いているあいだに、生き残った者を帰さなければならないと、全員が知っていたからだ。
その一方で、主艦の内側、もっとも静かな一室には、あの双子が眠ったまま安置されていた。
厚い毛布にくるまれ、小さな胸を規則正しく上下させている。
顔色は悪くない。
傷もない。
ただ、目を覚まさない。
サトリはその寝顔を見つめながら、ようやく口にした。
「……でも、おかしいですよね」
部屋にいたタキオンとラビ艦長が、静かに視線を向ける。
「この子たちは、たからばこから別の世界線の両親のもとへ行ったはずです」 サトリは声をひそめた。 「なのに、どうして今ここにいるんですか」 「戻ってきたなら変だし、戻ってきてないなら、なおさら変だ」
その問いは、誰もが胸のどこかで抱えていたものだった。
戦場のただ中では、助かったことだけで十分だった。
けれど戦いが終わり、帰還が具体的な手順になり始めると、矛盾は輪郭を持って立ち上がる。
双子は本来、この世界に留まるはずではない。
それなら、この眠りは何なのか。
答えたのは、部屋の入口に立った女神ニケだった。
金の翼はもう大きくひらいていない。
それでも、その姿がそこにあるだけで、空気の構造が少し変わる。
「おかしくはありません」
ニケは眠る双子を見下ろした。
「この子たちは、戻ってきたのではありません。
通過しているのです」
サトリが瞬きをする。 「通過……」
「ええ」 ニケの声は静かだった。 「たからばこが選んだ行き先は変わっていません。
この子たちが最終的に託されるのは、別の世界線にいる両親のもとです」 「ここは、その途中にある受け渡しの岸です」
誰もすぐには理解できなかった




