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深海の快適空間と、烏賊族の美意識

潜水艦といえば「狭くて重苦しい鉄の筒」を想像する者が多いだろう。だが、**軍烏賊「ラビ」**の体内は、女神の魔法による「閉鎖空間」によって、外見からは想像もつかないほど広大で快適な空間が広がっていた。


ゆったりとしたソファのような操縦席に、整然と並ぶ操作パネル。正面の巨大モニターには、ラビの巨大な眼が捉えた深海の景色がリアルタイムで映し出されている。通信、ソナー、魚雷――各セクションのスタッフが機敏に動く中、艦長であるラビの声が空間に響いた。


「ルビー閣下、お目にかかれて光栄です。快適な烏賊の旅をお約束いたします。船酔いのご心配は無用ですよ」


ミケが「女神様の庭で見たのに似てる!」とはしゃぎ、タマは「僕の鞄にすごい武器があるよ、使っていい?」と物騒な提案をする。ラビは困ったように「沈みそうになったら頼みますよ」と、大人の対応で子猫をなだめた。


「外からは皆様の姿は消えて見えています。透明マントで基地入りし、そのまま閉鎖空間へ収容されましたから、いかなる敵も探知不可能です」


緊張気味に語るラビの視界(烏賊族特有の認識変換)には、ルビーの姿が「この国にもいないほどの絶世の美烏賊」として映し出されていた。思わず見惚れるラビ。しかし、そこに冷水が浴びせられる。


「艦長殿。ルビー閣下は確かに美烏賊ですが、中身はおじさんですから」


サトリの無慈悲な一言に、イツモアの拳がサトリの鳩尾みぞおちにめり込んだ。

「……ラビ、許してくれ。こいつは心が読めるのだ。敵の思考も読めるゆえ、戦術に組み込んでくれ。給料分は働かせる」


驚くべきことに、軍人であるラビは怒りを見せなかった。むしろ「その能力をどう戦場に活かすか」という思考に即座に切り替えた。これぞドルドア軍人の本能である。


「ねえ、私のことも忘れないで! ピンキーです。ダーリンと潜水烏賊デートができて幸せです! 艦長様も素敵なおじさま烏賊で感激しちゃいます!」


ピンキーの明るい声が響く。彼女はすでに、例の「悪役令嬢舞台」を艦内に広める気満々だ。

「ああ、ピンキーさん。実はこの閉鎖空間に劇団を呼んで、私もあの芝居を観ましたよ。実にスカッとしますな!」


艦長すらもファンに取り込んでいた悪役令嬢舞台。ルビー(おじさん)は、もはや自分の伝説が深海にまで到達している事実に、静かに紅茶を啜って現実逃避するしかなかった。

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