復興の街角と、魔法のクローゼット
先週の激戦が嘘のように、ドルドアの街は活気に満ち溢れていた。
漆黒のトリケラトプスが穿った巨大なクレーターは、「ドラゴン建設会社」のドラゴンたちが持ち前の怪力で埋め立て、瞬く間に基礎固めを完了。その後を追うように国の建設局と民間企業が連携し、街の形を元通りに復元させたのだ。
戦争賠償金による好景気と「復興記念セール」の熱気が、人々の表情を明るくさせている。
そんな賑わう商店街を、微笑ましい一行が歩いていた。
先頭を行くのは、ミケと手を繋いだディーアナ公爵。その後ろを、ルビー(おじさん)と手を繋いだタマ、そして爽やかウェイター君が続く。
「さあ、今日はミケちゃんとタマちゃんのお洋服を買いに行きますよ。可愛いのをいっぱい選びましょうね」
ディーアナの弾んだ声に、ミケは少し困ったように首を振った。
「おばさん、私いらない。お母さんに作ってもらった服をいっぱい持っているから」
大人たちは胸を締め付けられる思いだった。ミケがいつも着ているのは、花の香りがする不思議と汚れない赤い服。母を想うあまり、他の服を着たくないという健気な嘘をついているのだと解釈していた。
だが、事実は違った。本当に、同じ服を「30着」持っていたのである。
「違うの、この服がいいから同じのを30個持ってるのよ」
「僕も違うのを30個持ってる。女神様がくれた『イカレポンチな服』もいっぱいあるけど、お父さんはそれを見て女神様に電流ビリビリってやられてた」
タマが笑いながら、肩の魔法の鞄を前に抱え直した。
「鞄さん、朝僕が着てた服を皆に見せてあげて」
タマがそう唱えた瞬間、サファリルックだった彼の姿が、お洒落なセーターとジーンズ、そして猫の形の靴へと様変わりした。どうやら鞄を肩にかけると自動的に「サファリスタイル」の冒険服に固定されるが、中身は毎日着替えているらしい。
「ははは、すごいわね!」
ディーアナは感心したように声を上げたが、すぐに優しく二人の視線に合わせるように腰を落とした。
「でもね、ミケちゃん、タマちゃん。お母さんに作ってもらったお洋服はとっても大事な宝物でしょう? だから、お父さんとお母さんに再会できる日まで、それは大切に取っておきましょう。今日おばさんが買ってあげる服は、思いっきり泥んこになって遊ぶための服。いくら汚してもいいのよ」
「「はーい!」」
素直な返事が重なる。
パンゲア大陸に点在する七つの勢力圏。その中でも、ドルドア以外の勢力は腐敗しきっていた。ドルドア王国は今回の戦争を経て、それらの腐敗国家を併合。まともな形に建て直してから独立させるという、長く困難な、しかし希望ある戦後処理の真っ最中だ。
平和を取り戻した街で、おじさんは子猫たちの手を引きながら、この平穏が一日でも長く続くことを願わずにはいられなかった。




