不死身の二人と、女神の「うっかり」副産物
舞台はドルドア公爵領内にあるレストラン。中世ヨーロッパ風の設えながら、どこか日本のファミリーレストランを彷彿とさせる明るく清潔な空間だ。
テーブルにはポトフにステーキ、色鮮やかなサラダと焼きたてのパンが並ぶ。
「いやあ、本当に旨いです。それに驚きましたよ、ウェイターさんが爽やかで。私の国の店なんて、注文は間違えるし仏頂面で皿を置いていくだけですからね」
グレートグレープのスパイ、タキオンが感銘を受けたように言った。
「そうそう。俺はクマ族なんで同族の店に行くんですけど、あっちじゃ大皿にドンと鹿の頭が盛られてくるんですよ。それを己の爪で叩き割り、脳みそを頂くという超グロいやつ。ゾンビじゃないんだから」
相方のツキノワも、目の前のまともな料理に感動している。
このテーブルには今、ルビー(おじさん)、ピンキー、イツモア、ディーアナ、妖精サイズの女神様、そして双子のミケとタマというオールスターが揃っていた。拷問も尋問も終わり、なぜか釈放されたスパイコンビとの会食。時間は翌々日の午後三時である。
「実験の結果、君たちが不死身なのはわかった。どんな攻撃も効かない。閉鎖空間で普通の人間なら即死する雷撃を受けても平然としていたからな」
イツモアが鋭い視線を向ける。彼は透明マントで潜入し、子猫たちの閉鎖空間での一部始終を観察していたのだ。
「グレートグレープは不死の魔術を完成させたのか?」
ディーアナが興味深げに問うと、タキオンが肉を頬張りながら首を振った。
「違いますよ閣下。俺たちは『死なない病気』にかかったんです。それについては、そちらの女神様がお詳しいはずだ」
全員の視線が、卓上の小さな女神様に集まる。
かつて獣人の森で、幼いタキオンとツキノワが人間サイズの女神様に出会った時のことだ。二人が「女神様だー!」と駆け寄り抱きついた拍子に、女神様の手元から「病の素」がこぼれ落ちた。一瞬で二人を黒い雲が覆う。
「女神様、この霧なに?」
「病の素であるぞ、少年」
女神様は明るく笑った。心配する二人に「気にするな、それは死なない病じゃからな」と言い残し、黒い霧を手の平に吸い込んで消えてしまったのだ。
当時、女神様は人口調整のために様々な病を撒いていた。増えすぎた人類が飢えに苦しまぬよう、眠るように逝ける病や、元気すぎて寿命が縮む病、美人になりすぎて寿命が縮む病――。そんな神の気まぐれな調整の副産物が、この「死なない病」であった。
女神様のろくでもない説明を聞き終え、イツモアは考え込み、ルビー(おじさん)はなぜか笑顔で、ディーアナは飽きて遊び始めたミケを捕まえて「こら、ダメでしょ」と言いつつ抱っこしてくすぐり始めた。
「お皿をお下げしてもよろしいでしょうか?」
そこへ、先ほどの爽やかなウェイターが絶妙なタイミングで現れた。




