第24話 バレた後の距離
(……やばい)
教室に入る前から、分かってた。
(絶対バレてる)
昨日の、あれ。
言った。
完全に。
「好き」
(……無理)
ドアを開ける。
一瞬、静かになる。
(ほらね)
次の瞬間。
「七瀬来た!」
「ねえねえ昨日のあれ何!?」
「マジで付き合ったの!?」
一気に来る。
「ちょ、待って」
「待たない待たない!」
「どういうこと!?」
(無理無理無理)
「別に、そんな――」
言いかけて。
「そうだよ」
横から、声が聞こえてきた。
「っ」
凛花。
「付き合ってる」
あっさり。
教室が、一瞬止まる。
それから。
「えええええ!?」
爆発。
「マジ!?」
「やっぱりじゃん!」
「いつから!?」
「どっちから!?」
(ほんとにやめて……)
「ちょっと落ち着いてって」
「いや無理でしょ!」
「てか黒瀬さん普通に言うんだ……」
「隠す気ゼロじゃん」
「ないよ?」
即答。
「だって事実だし」
(強すぎるって……)
「七瀬は?」
「え」
またこっち。
「どうなの?」
「……どうって」
「黒瀬さんのこと」
言葉に詰まる。
でも。
(……もう隠す意味ないか)
「……好き、だけど」
小さく答える。
一瞬の沈黙。
それから。
「うわぁ……」
「言った……」
「やば……」
勝手に盛り上がる。
(なんでこんなことになるの……)
「でもさ」
一人が、少しだけトーンを落とす。
「なんかあれだよね」
「え?」
「黒瀬さんの方、ちょっと強すぎない?」
(……あ)
「七瀬、流されてるだけじゃない?」
空気が、少し変わる。
「それな」
「昨日のもさ、押されてた感じだし」
「大丈夫?」
「……別に」
反射的に言う。
でも。
言葉が、続かない。
「やめて」
低い声。
「っ」
凛花。
「そういうの、いらない」
空気が、止まる。
「でもさ」
「事実じゃん」
その瞬間。
「違う」
凛花じゃない。
「……え?」
気づけば、口が動いていた。
「違うから」
心臓が、うるさい。
「流されてるとかじゃない」
「……七瀬?」
「ちゃんと、自分で決めたし」
言葉が、少し震える。
「……好きって思ったから」
静かになる。
誰も、何も言わない。
「だから」
少しだけ、息を吸う。
「そういうの、やめて」
沈黙。
それから。
「……ごめん」
小さく、謝る声。
「別に、悪気はなかったんだけど」
「……いいよ」
それだけ言う。
「……ありがと」
すぐ隣。
凛花の声。
「別に」
そっけなく返す。
でも、少しだけ嬉しかった。
「ねえ」
「何」
「ちょっと来て」
「……は?」
手を引かれる。
「ちょ、どこ行くの」
「いいから」
そのまま。
教室を出る。
廊下を歩いて人気のない場所で、止まる。
「……何」
振り向く。
すぐ近く。
「さっきの」
「……何」
「ちゃんと、言ってくれた」
「……言ったけど」
「嬉しい」
素直に言われる。
「……そう」
目を逸らす。
「ねえ」
「何」
「もう一回言って」
「は?」
「さっきの」
「無理」
即答。
「なんで」
「恥ずかしいから」
くすっと笑う。
「じゃあ」
一歩、近づく。
「代わりに」
そのまま。
ぎゅっと、距離が詰まる。
「っ」
「これでいい」
「……近いって」
「今さら」
「……ほんとに、もう」
でも、離れない。
むしろ。
(……これでいいかも)
そんなことを思ってる自分がいる。
「ねえ」
「何」
「これからも、ちゃんと言って」
「……何を」
「好きって」
「……無理」
「言わせる」
「なんでそうなるの」
くすっと笑う。
「だって」
すぐ近くで。
「私の彼女でしょ」
「……っ」
言葉が、出ない。
でも。
「……うるさい。それに彼女じゃなくて姉だから」
それだけ返して。
少しだけ、距離を詰め返した。




