第21話 ちゃんと、選んで
帰り道。
当たり前みたいに隣にいる。
でも。
(……さっきまでと、少し違う)
会話がない。
いつもなら、何かしら話してくるのに。
「……何」
耐えきれずに口を開く。
「何って?」
「静かすぎ」
「そう?」
「そうだよ」
少しだけ、間。
「……考えてるから」
「何を」
「さっきのこと」
心臓が、跳ねる。
(……やっぱり、それ)
「……別に、大したことじゃないでしょ」
「大したことだよ」
即答されて言葉に詰まる。
「ねえ」
「何」
立ち止まる気配。
つられて、足が止まる。
「なんで、私にしたの?」
「……は?」
「選んだでしょ」
「……それは」
言葉が、出ない。
「なんで?」
逃げられない。
「……なんとなく」
やっと、それだけ。
「嘘」
即答される。
「顔見れば分かる」
「……分かんないって言ってるじゃん」
少しだけ、声が強くなる。
「分かんないから」
「じゃあ」
一歩、近づく。
「分かるまで、選ばないでよ」
「……は?」
「中途半端なの、嫌い」
その目。
冗談じゃない。
「……じゃあどうしろっていうの」
「簡単でしょ」
少しだけ、間。
「私にするか、しないか」
「……っ」
それ、ほぼ。
(告白じゃん……)
「今すぐは無理」
やっと、それだけ。
「なんで」
「分かんないからって言ってるでしょ!」
思わず声が大きくなる。
「意味分かんないし」
「普通じゃないし」
「こんなの……」
言葉が、詰まる。
「……でも」
小さく、続ける。
「嫌じゃない」
空気が、止まる。
「むしろ」
心臓が、うるさい。
「……落ち着くし」
言ってしまってから、気づく。
(何言ってるの私)
凛花は少しだけ目を見開いた。
それから。
「……それで十分」
小さく、笑った。
「え」
「今は、それでいい」
一歩、距離が詰まる。
「その代わり」
「……何」
「他の人に行かないで」
「……っ」
また、それ。
でも。
「無理」
反射的に言う。
「約束とか、できない」
「なんで」
「分かんないから」
即答。
一瞬、沈黙。
それから。
「……そっか」
少しだけ、視線が落ちる。
「じゃあ」
ゆっくり顔を上げる。
「約束じゃなくていい」
「……は?」
「私が、そうさせるから」
「何それ」
くすっと笑う。
でも、その目は真っ直ぐで。
「ちゃんと、私選ばせる」
「……っ」
逃げ道がない。
「だから」
ほんの少しだけ、近づく。
「覚悟してて」
「……何の」
「私のこと、好きになる覚悟」
「……っ!!」
言葉が、出ない。
冗談じゃない。
でも、否定もできない。
「ほら」
何事もなかったみたいに、歩き出す。
「帰るよ」
「……ほんとに、もう」
小さく呟く。
でも、その背中を自然と、追いかけていた。




