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クラスで一番の美少女が、私の義妹になってから距離がおかしい  作者: 柴咲心桜
第1章 関係形成編

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第20話 当たり前を崩す人

(……なんか、静かすぎる)

教室に入ってすぐ、そう思った。

昨日までのざわつきが、少しだけ落ち着いてる。

でも。


(……見られてる)

視線は消えてない。

ただ、様子見って感じ。

席に向かう途中で呼び止められる。


「七瀬」


「っ」

振り向くと見慣れない顔。

同じクラスだけど、ほとんど話したことない男子。


「ちょっといい?」


「……何」


「今、時間ある?」


「あるけど」


「じゃあさ」

少しだけ笑う。


「放課後、話せない?」


「……は?」

一瞬、理解が追いつかない。


「いや、ちょっとだけでいいから」


「なんで」


「気になってるから」


「……何を」


「七瀬のこと」

言葉が、止まる。


(……は?)

周りの空気が、少しだけざわつく。


「ちょ、直球すぎでしょ」


「え、やば」

好き勝手言われる。


「だからさ」

少しだけ距離を詰めてくる。


「ちゃんと話したいなって」


「……別に、いいけど」

気づけば、そう答えていた。

その瞬間、ぴたり、と空気が止まる。


「へぇ」

低い声。

背中越しでも分かる。


(……来た)

振り向く。

凛花。

いつもの顔。

でも。


(……機嫌、悪い)


「珍しいね」

ゆっくり歩いてくる。


「そういうの、受けるんだ」


「別に普通でしょ」

言い返す。

でも。


「普通、ね」

小さく繰り返す。


「黒瀬さんも来る?」

男子が軽く言う。


「来ない」

即答。


「……そう」

でも目は、私から逸らさない。


「じゃあ、放課後」

男子がそう言って、離れていく。

重い空気が残る。


「……何」

先に口を開く。


「何って?」


「今の」


「別に」

それだけ。

でも。

「行くんでしょ?」


「……行くけど」


「そっか」

あっさり。

それだけで終わる。


(……何それ)

拍子抜けする。

昨日みたいに止めると思ってた。


「止めないの」

気づけば聞いていた。


「なんで?」


「なんでって……」


「行ってほしくないんじゃないの」

言った瞬間、少しだけ後悔する。

一瞬の沈黙。


「……行けば?」

それだけ。


「……は?」


「好きにすれば」

声は、いつも通り。

でも。


(……違う)


「どうでもいいし」

その言葉。

妙に引っかかる。


「……ほんとに?」

思わず聞き返す。


「うん」

視線が、合う。

笑ってる。

でも。

「どうでもいいなら」

少しだけ、近づく。


「なんでそんな顔してるの」


「……してない」

即答。

でも。


「嘘」

小さく言う。


「分かりやすいよ」

一瞬、間。


「……っ」

何も言い返せない。


「……行ってきなよ」

少しだけ、声が落ちる。


「ちゃんと、見てるから」


「……は?」


「どっち選ぶか」


「何それ」

意味分かんない。

でも、心臓が妙にうるさい。


───放課後。

約束の時間。

廊下で待っていると。


「来てくれたんだ」

朝の男子。


「ちょっとだけだから」

そう言いながら、歩き出す。

並んで歩く。

少しだけ、距離が近い。


(……なんか、違う)

昨日と同じ。

でも、落ち着かない。


「七瀬ってさ」


「何」


「黒瀬さんと、付き合ってるの?」


「違うって」

すぐに否定する。


「ほんとに?」


「ほんとに」

でも。


「じゃあさ」

少しだけ笑う。


「俺にもチャンスあるよね」


「……は?」

言葉が、詰まる。


(何それ)


「だって、フリーでしょ?」


「……」

返せない。

その瞬間。


「……へぇ」

背後から、声。


「そういう感じなんだ」

振り向くと凛花がいた。

いつからいたのか、分からない。

「……なんでいるの」


「迎え」

当たり前みたいに言う。


「で」

一歩、近づく。

「どうするの?」


「……何が」


「そっち」

男子を見る。

それから。

「それとも、私?」


「……っ」

心臓が、大きく跳ねる。

逃げ場がない。


(なんで、こうなるの……)

でも。


「……帰る」

気づけば、そう答えていた。


「どっちと?」


「……」

一瞬の沈黙。

それから。


「……凛花と」

小さく、答える。


「……そっか」

男子が、少しだけ笑う。


「ごめんね」

それだけ言って、離れていく。

静かな空気だけが残る。


「……何それ」

小さく呟く。


「選んだだけでしょ」

凛花の声。

そのまま、少しだけ距離が詰まる。


「ちゃんと」


「……っ」


「分かりやすい」

何も言えない。

ただ、さっきの言葉が頭の中で繰り返される。


『俺にもチャンスあるよね』


(……ない)

そう思った自分に少しだけ、驚いた。

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