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クラスで一番の美少女が、私の義妹になってから距離がおかしい  作者: 柴咲心桜
第1章 関係形成編

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第14話 視線の先にあるもの

教室に入った瞬間、いつも通りの空気が広がっていた。


ざわざわとした声、椅子を引く音、誰かの笑い声。


───いつも通り。

(……のはずなんだけど)


なんか、落ち着かない。

理由は分かってる。

昨日のこと。

それと、さっきのこと。

席に座ると同時に、小さく息を吐く。

その時。


「七瀬」


「っ」


反射的に顔を上げる。

───凛花。

何でもないみたいな顔で、私の横に立っていた。


「おはよう」


「……おはよ」

それだけ。

それだけなのに。

近い。


(だからそれ、やめてって……)

言えないまま、視線を逸らす。


「七瀬ってさ」

前の席の子が振り返る。


「黒瀬さんと仲良くない?」


「……は?」

思わず変な声が出た。


「いや、最近よく話してるじゃん」


「別に普通でしょ」

すぐに返す。


「そう?」

その子は、ちらっと凛花を見る。


「黒瀬さんってあんまり人とつるまないじゃん」


「……」


「なのに七瀬には話しかけてるしさ」


「それは――」

言いかけて、止まる。


「仲いいんだなって思ってた」


「……そんなことないって」

少しだけ、強めに言う。


その瞬間。


「そうだよ」

横から声。


「……仲良くないよ」


「っ」

一瞬、息が詰まる。


「え、そうなの?」

クラスメイトが首を傾げる。


「うん」

凛花はあっさり頷いた。


「普通」

その言い方が、妙に引っかかる。


(普通……?)

昨日のこと、全部なかったみたいに。


「じゃあさ」

その子が少し笑う。


「なんでそんな近いの?」


「は?」

思わず声が出る。


「だってさっきから距離近くない?」


「……っ」

一気に、周りの視線が気になる。


(やば……)


「別に」

凛花は変わらない。


「これくらい普通でしょ?」


「普通じゃないって」

すぐに返される。


「黒瀬さんがそんな距離で話してるの見たことないし」


「……そう?」

本気で分かってないみたいな顔。


(いや絶対分かってる……)


「七瀬はどう思ってんの?」


「え?」

急に振られる。


「どうって……」

言葉に詰まる。

普通じゃない、って言う?

でも、それを言ったら。


「……別に、普通」

結局、そう答えてしまう。


「でしょ?」

すぐに重ねられる。

逃げ場がない。


「ふーん……」

納得してない顔。


「なんか怪しくない?」


「怪しくないって」

思わず強く否定する。

そのせいで、余計に怪しく見える。


(最悪……)


「ねえ」

すぐ近くから、声。


「っ」

顔を向けた瞬間。

近い。

さっきより、近い。


「ちょ、近――」


「そんなに嫌?」

小さい声。

周りには聞こえない距離で。


「……何が」


「私と、こうしてるの」


「……っ」

言葉が出ない。

否定しないといけないのに。

できない。


「ほら」

小さく笑う。

少しだけ、距離が詰まる。

わざと、見せるみたいに。


「やっぱ近いって!」

クラスメイトの声。


「ねえ絶対仲いいでしょ!」


「違うって――」

言いかけて。


「うん、仲いいよ」


「え?」

止まる。


「ね、お姉ちゃん」


「っ!?」

一気に血の気が引く。


(ちょ……!)


「え、今なんて言った?」


「お姉ちゃんって……」

ざわつく声。

やばい。


「……あ」

凛花が口元を押さえる。


「ごめん。間違えた」


「間違えた?」


「うん」

平然と続ける。


「家族みたいに仲いいって意味」


「いや今のは――」


「ね?」

ぐっと腕を引かれる。

逃げられない。


「そうでしょ、お姉ちゃん」


「……っ」

もう、無理。


「……そう、だよ」

小さく答える。

それしか言えなかった。

ざわつきは、完全には消えない。

でも、一応は収まる。


「紛らわしいって」

そんな声が聞こえる。


(……最悪)

心の中で呟く。

バレてはいない。

でも。


(これ、時間の問題じゃん……)

横を見る。

凛花は、何もなかったみたいに座ってる。


「……ねえ」

小さく声をかける。


「何」


「今の、わざとでしょ」


「さあ?」とぼける。


「バレたらどうするの」と小声で言う。

すると。


「別に」

あっさり返ってくる。


「バレてもいいし」


「は?」

思考が止まる。


「だって」

少しだけ、こっちを見る。


「隠す必要、ある?」


「……っ」

何も言えない。


「お姉ちゃんはさ」

静かな声で。


「私のものなんだから」


「……ほんとに、もう」

小さく呟く。

でも、嫌だとは――思えなかった。

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