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自分の立ち位置を把握してみた

ラブキン世界の学園寮は二つに分かれている。特別クラスと一般クラスである。

七海の部屋は特別クラス寮にあった。

特別クラスの部屋は一人部屋である。生徒会長など一部のさらに特別な生徒の部屋はかなり広いと聞くが七海含めた普通の生徒はワンルームほどの広さである。

一般クラスは複数人によるルームシェアらしい。


「ルームシェアも楽しそうだなぁ」


七海は机に向かい紙とペンを広げた。ペンは魔法のある世界ならではというか、羽ペンである。

しかしインクは不要で紙にペン先を押し付けると自分の望んだ色のインクで書けるという大変便利なものであった。


さてなにをすべきか、と七海は考えた。

ひとまず紙にはラブキンの基本的な流れを書いた。ノーマルエンドでは誰とも恋仲にはならず、ヒロインは普通に卒業するだけ、バッドエンドでは恋仲どころか憎まれる形となり、ヒロインは死んでしまう。

ラブキン世界において高位の貴族は様々な異能力を持っており、大小さまざまな力のコントロールを学ぶために学園へと入学してくる。特別クラスはそれこそ王族とその側近の貴族たちの集まりであり、一般クラスはそれ以外の貴族たちの場所であった。

平民であるために能力を持たないはずだったヒロインだが、ある日特殊な異能力を発現しそれに気づいた学園の関係者によってこの学園へ推薦された。入学して間もなく、平民であるにも関わらず、ただ力があるというだけで攻略キャラの男性陣からちやほやされるヒロインが気に食わないのがほかの女子生徒である。

種々様々な嫌がらせをものともせずにヒロインはどんどん頭角を示す。その中で男性陣と愛を育み、トゥルーエンドにて結婚までこぎつけるのである。

ノーマルエンドのルートに各キャラクターのイベントをどんどん書き込むうちに紙を継ぎ足す羽目になってしまった。

一通りの流れを見つめ、現在の自分のルートを書き込む。現在の自分はフェルディアークのルートに入ってからしばらくたったあたりと読んだ。

ガセポでの会話は個別ルートに入ってから話を二話程度読んだ当たりだったろうか。今後のことを考える。

フェルディアークのルートではユズフィーナと最も関わる。フェルディアークの選択肢を間違えなければイベントのたびに出てくるはずだ。


「とはいっても選択肢なんてゲーム画面みたいに出てくるわけじゃないだろうしなぁ…私の言葉を間違えなければいい話だよね。フェル様のルートは一番に攻略しちゃったから随分前のことなんだけど大丈夫かな…」


七海は椅子に寄りかかり天井を向いた。

考えても考えてもこれがいい、というような答えは絶対に出せない。


「…目指すはヒロインとユズフィーナ様との大団円…じゃなかった、穏やかな卒業エンド…」


ノーマルエンドでヒロインは無事に卒業するものの、ユズフィーナは結局ヒロインをいじめていた首謀者とされ、貴族としての身分を剝奪の上国外追放の憂き目にあった。

ノーマルエンドですらそんなことになってしまうのであれば、ノーマルエンドも目指すべきではない。


「フェル様もユズフィーナ様への誤解がすごいからそれを解いて…可能ならほかのキャラも味方につけてユズフィーナ様と和解ってのが無難かな」


ならばどこから攻めようかと七海は考える。

フェルディアークはユズフィーナへの風当たりがまだ強い。それであれば自分に対して援護射撃をしてくれそうな相手を増やすべきである。

ならば身近なところから攻めるのがセオリーだろうか。

七海はルートを記入した紙を見つめた。


「決めた。ガイクスから落としていこう」


ヒロインの幼馴染であるガイクスは平民のため学園の生徒ではない。学園内で父親が営む食料品や日用品の売り場を任されているのだ。

日々様々に役立つ品物を売っているが頻繁に買いに行けば買いに行くほど二人の仲は深まっていく。幼馴染補正というのもあり、割と攻略しやすいキャラクターであったと思う。

ガイクス以外の個別ルートに入ってから売り場に足を運ぶと攻略キャラの好きなものを教えてくれたり、ほかの生徒から聞いた話だと色々な情報を与えてくれるお助けキャラでも会った。

人気ランキングの総合値は低いのだが固定ファンが多く、季節イベントなどにもよく登場してくる。


「そうと決まれば明日は休み時間に買い物に行こうかな。ガイクスと約束を取り付けてユズフィーナ様の情報をゲットしなきゃ」


ペンを置いて七海は寝る支度をする。ひとまず状況は簡単にだが把握ができた。

行動次第でこのあとまた作戦を建て直さなければなるまい。

疲れていてはその作戦も立てられないため休めるときは休むに限る、と七海はベッドに潜り込んだ。

柔らかなマットレスとふかふかの枕、ベッドサイドのランプは温かみのあるオレンジ色、そんなものを見ながら目が覚めたら自分の部屋にいるのではないだろうかと七海は思った。

それはもったいないしありえない。自分は異世界転生とやらでここにいるのだ。

何らかの要因で死んだのならば戻れはしないだろう。

寂しさを飲み込み七海は目を閉じた。せっかく転生したのだから思いっきり楽しみたい。

七海は明日のことを考えながらその日は眠りについた。

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