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【キセイシリーズ】国のクソ制度で解雇された薬師の華麗なる辺境ワークをとくと見よ!  作者: mizuchi_0307
第一章 人間なくして拠点なし!

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第8話 なかなか話し上手じゃない。でもあたしに勝てると思ってる?

「ヴィエラ。どうしました? そんなにこの仕事にしか興味がありませんという風貌をした女性に興味がありますか?」


 オリエラが無表情に淡々と言うのだが……あんた、言葉の端々に嫉妬丸出しだからね!? 隠せてないわよ!


「ねえ、貴方、名前は?」


 あんたもあんたでオリエラに何か言ってあげたら!? 長い付き合いなんでしょ、反応で察してあげなさいよ! 無視してあたしの名前を聞いてるんじゃないわよ! それ、最悪の一手でしょうが!

 そんなあたしの心の中のツッコミを無視するかのようにヴィエラはあたしに迫ってくる。しかし、その間にはオリエラがいた。オリエラは迫るヴィエラに物怖じすることなく背筋を伸ばしたまま、ヴィエラを問い詰めた。


「ヴィエラ。答えてください。どうして彼女が入る前から彼女に興味を持っていたのですか? 貴方が答えるまでここをどく気はありません」


 一瞬、ヴィエラは物凄く冷たい目を見せた。しかし次の瞬間。


「……どうかしてたわ。帰って」


 何かに気が付いたようにくるりと背を向けた。


「聞いてた通りね。あんた、正気を失って人を怪我させてこんなところに引きこもったって聞いたけど……あんた、正気に戻り切れてないって自覚が、あるんでしょ?」


 びくりと、肩を上げ、顔だけをあたしの方に向けるヴィエラ。その表情はとても不快そうな、いや、苦しそうな表情だった。


「症状を聞かせて。こんなところでうじうじ引きこもるのは良くないわ。あたしは、医者じゃないけど薬師よ。薬師は、症状に合わせて薬を作る仕事でもあるわ。根本的な治療ができるかはわからないけど、他の連中よりは自信があるわ! お願い、話を聞かせて!」


「何が目的?」


 冷たいヴィエラの声が場を切り裂く。最初は恐ろしく歓迎してくれたのに、今度は拒絶。正気を失いかけててあたしを受け入れようとして怖くなって拒絶してる、とすれば理解はできる行動だけどちょっと極端すぎやしない?

 まあ、確かにご指摘通り、まったく目的がなく、首突っ込んだわけじゃないんだけど。


「オリエラに止血剤の依頼を受けた時にあんたの事情を聞いて。で、首突っ込んだのは確かよ。下心もあるわ。オリエラに恩を売っておけば、いざという時あんたの力も借りられそうだ、ぐらいのね」


「なるほどね。貴方、素直ね」


 そういうとヴィエラは再びあたし達の方へと向き直る。その時の表情は至って普通の綺麗な人、ぐらいのイメージ。最初のやたら妖艶な女という雰囲気はもちろん、一瞬見せた苦しそうな様子も微塵もなかった。


「改めまして。私はヴィエラ。オリエラの相方として冒険者をやってるわ。他にも、仲間がいたわ。だけどあいにく、今は私、一人がいいの。だから、悪いのだけど、しばらく貴方がオリエラの面倒を見てくれる?」


 ……まともに会話できると思った途端に、また理解不能な単語をぶつけられる。ちょっと、なんで今度はオリエラとのコンビを一時解消するなんて話が出てくるのよ? あたしは症状を聞かせろと言ったはずよね? この人、聞こえてない?


「ヴィエラ! どうしてそういうワガママばかり言うのですか! それに、面倒を見るのであればわたくしがこの方を見る形の方が適切だと思われますが!」


 オリエラ! あんたもあんたでわざわざ本命から話を逸らそうとする話に乗る必要ないのよ! ……まさか、そういうこと? これだからヴィエラはこの話題を切り出したんだわ! 深入りされたくないから! なるほどね、だからあんた達、なかなか話が前に進まなかったんでしょ!

 これはあたしが切り込んであげるしかないようね!


「ああもういいわよ、オリエラ! まずは、あたしが名乗る! あたしはシルバーナ! このクリッパーに来たのは一週間ぐらい前! でもパーティの定員問題であたしはここに残って拠点を作ることにしたのよ。で、お金も人手も欲しかったの。オリエラはちょうどいいと思ったわよ」


「そうね、ちょうどいいじゃない。引き取って」


「勝手に決めないでください、ヴィエラ」


「そうよ、勝手に決めたらダメでしょう! あんた達がどれくらい組んでるか知らないけど、解消しなくていいようにあたしはあんたの症状を知って、薬を作りたいの。その報酬として、あんたとオリエラの手を貸してほしいわけ! さあ、あたしはあたしの目的、全部話してあげたわよ。ほら、今度はあんたがあたしの質問に答えなさいよ! 症状は!」


 ふぅ、と小さくため息をつくヴィエラ。ようやく観念したわね……


「なかなかはっきり言う薬師さんね。私、そういう人大好きよ。だけど、あいにく根本的な原因はわかっていて、それが治癒不可なのが体で理解できているわ。症状を話したところで、貴方にできることなんて何もないの。気持ちだけは受け取るわ」


 至って真剣な顔でヴィエラはあたしに答える。……それが誤解だって言ってんのよ……わかんないやつね!


「さっきも言ったけどあたしは根本的な治療ができるとは言ってないでしょ。症状よ! あんたが困ってる症状を抑えることぐらいはできるかもって言ってるの。あんたが、人を遠ざけないといけないって思ってる、症状を抑えることができればあんたはまたオリエラとコンビで活動できるでしょ! だから聞きたいって言ってんの! わかる?」


「……シルバーナ……ありがとうございます。ヴィエラのために、そこまで言ってくれて、嬉しいです」


 いや、あたしはオリエラ、あんたから感謝の言葉を聞きたくて言ったわけじゃないのよ。というか、あんたもだからね。自分を除外してるんじゃないわよ。とはいえ、今回はそっちの頑固者に言い聞かせてんの! そうヴィエラに対して目で訴えた。すると、ヴィエラは最初に見せた妖艶な笑顔を再び見せる。

 ……ちょっと、またどうしたのよ……


「そんなに症状が見たいの? まあ、貴方にならいいわよ?」


 ……症状ってもしかして、情緒不安定とかそういう、精神系だったりするわけ? 接近しようとするヴィエラを、再びオリエラが遮るように止める。オリエラ……それ助かるわ……!


「ヴィエラ。体の状態が分かってると言いましたね? 彼女にその説明をするつもりですか?」


「知りたいというのなら、体験させてあげようかと思って」


「貴方本気で言ってますか? メリッサの次は、彼女にするつもりで?」


 その一言でヴィエラがはっと目を見開く。いや、だからどういうことなのよ。それを説明してって言ってるのよ、あたしは!


「オリエラ、ありがとう。最近こうなの。魔素が強いモノに、妙に惹かれるのよ……油断するとタガが外れるというか、ね」


 ……そう! そういうの! そういうのを聞きたかったのよ! でも、なにそれ。聞いたことない症状なんだけど……


「えっと、それは発作的な感じで?」


 あたしの質問の意図を察したのか、ヴィエラはコクリと頷いた。なるほどね、発作的に魔素が高い人を襲いたくなっちゃう病気、と……いや、だからなにそれ。聞いたことないわよ。というか、地味にこれあたし褒められてない? 魔素高いって。薬師として滅茶苦茶誉め言葉なんだけど! 聞いたことはないけど、文献や薬効とか調べていけば効果ある薬は作れるかも! なんせ、魔素絡みだものね。原料が魔素なんだから、何とかなるでしょ!


「オッケー! わかりました! ならこのあたし、天才薬師シルバーナさんが、その症状を抑える薬を開発して見せましょう!」

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