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【キセイシリーズ】国のクソ制度で解雇された薬師の華麗なる辺境ワークをとくと見よ!  作者: mizuchi_0307
第一章 人間なくして拠点なし!

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第7話 この小屋、怖いんだけど。現住民含めて。

 まだ日が傾き切る前にあたし達は洞窟を出てヴィエラがいるという山小屋へと向かった。

 洞窟は寂れた登山道から奥に入った場所にあったのに対して、その山小屋は登山道に沿った中腹ほどの所にあるそうで、迷うことはないらしい。


「いいですか。小屋に着いてもそれほど長くはいられません。もうすぐ日が暮れます。今日は奇跡的に吹雪いておりませんが、ヴィエラも嫌がりますので小屋には滞在できません。ですので、絶対に洞窟までは戻る必要があります。夜は、流石にあまり長時間動きたくはありません……」


 道中、オリエラはあたしに何度も断りを入れる。わかってる、わかってるわよ。っていうか、あんた、洞窟での生活を諦めた理由、吹雪でしょ。その口ぶりからわかるわ。でもやめて正解。死ぬわよ? 内心少し呆れながらあたしはオリエラの後を追う。


 やがて、小さな山小屋が見えた。雪の重さで潰れそうにも見える。おそらく、十年以上前に作られた、寒い時期に積もる雪を想定していた古い小屋だろう。今どき、こんな雪山化した所にこの辺りの人間はわざわざ来ないし、流石の管理国家もこんな所まで手を回す余裕はないから、この捨てられた小屋を使うのは正解ね。


 オリエラが小屋の扉をノックすると奥から声が聞こえてくる。


「オリエラ、貴方、また来たの? 来るなって言ったでしょう!」


「貴方が何を言おうと来ます。小屋の中の惨状を見ればそうせざるを得ません」


 オリエラの苛立ったような声が響く。

 ……惨状? オリエラ、あたし何も聞いてないんだけど? オリエラが何かを言い忘れているような予感を抱きつつ、あたしも声をかけてみる。


「あの~ 寒いんで、口論も、口論聞くのも中でお願いしたいんですけど、ダメですかね?」


「……オリエラ? 貴方、なんで人を連れてきたの?」


「この人が貴方に興味があると」


 今度は静かに怒りを含んだ声が響く。というか、オリエラ。その回答は何? 妙に含みのある言い方するの止めてくれる? まあ最初のやり取りであんたが不本意な時にそういう皮肉が出るの知ってるけど!


「私に、興味? 面白い事を言うのね…………ふふっ、良いわよ。今日は特別に入れてあげても」


 ……オリエラと顔を見合わせる。ねえ、間、怖くなかった? あたしが目で訴えると、オリエラが頷く。ああ、あんたも怖いって思った? いつも来てるあんたが怖いっていうとあたしは一層怖いんだけど?


「……絶対に、わたくしから離れないようにお願いします」


 オリエラが真剣な顔であたしに小さく呟く。また正気を失っているといけない、という警戒もあるのだろう。その警戒は助かるわ。そしてオリエラはゆっくりと扉を開く。


 小屋に一歩足を踏み入れて、なるほど、オリエラが『惨状』と言った意味が理解できた。扉を開いてすぐの小屋の壁には無数の血痕が染み付いていた。床にもわずかに散っている。流石に、小屋に最初からあったものではないだろう……あったものだとしたら、それを無視してここで暮らすという判断をしたヴィエラの正気を疑う。あ。正気失ってここに来たんだったわ……


「ヴィエラ、今日は止血剤を持ってきました。この方に作ってもらったものです。怪我をしているのでしたら、使ってください」


 あたしがそんなことを考えている最中、オリエラはヴィエラがいつも使っている部屋の方向に向かって声をかけてから、キッチンのテーブルの上に止血剤を置いた。


「止血剤……?」


 ギィ、と床がきしむ音が響き、オリエラが声をかけた方向にあった扉の一つが開く。


 そこから現れたのは綺麗な銀髪の女性だった。オリエラの着る踊り子衣装に倣ったような服だが、その形状はどちらかというと剣士のもので、凛とした意匠が施されている。服の青と流れるような銀色の長髪が神々しくて、あたしは思わずその姿に釘付けになった。こんなに綺麗な人は初めて見たわよ……

 あたしの視線に気が付いたのか、ヴィエラがあたしに微笑みかける。だけど……その笑みに最初は惹かれて、その表情を読み解いたら、背筋に不意に寒気が走って、後ずさった。その笑みは……妖艶で、まるで、あたしを誘っているような、ねっとりとしたものだったから……


「あら、思ったよりもしっかりした体つきをしているのね。綺麗な栗毛の髪が、勿体ない気もするけれど、その荒々しさが、素敵ね」


 褒め、られてるの? ね、ねえ。オリエラ、少し、話と違わない……?

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