第4話 細かい事は後から考えるつもりだったのよ!
「とりあえずこっちに座ってよ! 今日の夕食はさ、あたしが奢るから!」
「いえ、見知らぬ方に理由なくそのようなもてなしを受けるわけにはいきません」
「理由はあるのよ。あたしが話を聞きたい。だめ? あ、見知らぬっていうのがダメだっていうんなら、そうね。あたしはシルバーナ! はい、これで知った仲でしょ?」
「……はあ。名乗られたからには、お応えするのが筋でしょう。わたくしはオリエラと申します。それで、どのようなご用件なのでしょうか」
「だから、それを話すからとにかく座ってって!」
あたしは強引にオリエラを酒場の一席に座らせることに成功した。そして、あたしは自分の事情を一方的に話した。オリエラはそれに対して、ひたすら頷くだけだった。
「つまり、貴方はこの地に自分が所属していた冒険者パーティの拠点を作るため資金稼ぎをしている。そして、そのために自分の仕事、薬師として稼ぐための材料である薬草の在処を教えて欲しい。こういうことでよろしいでしょうか」
しかし、最後に綺麗にまとめて見せたことからまあ、適当に受け流されたわけでもないってのがわかった。
「ざっくりいうとそんな感じ。ただまあ、教えてくれなくてもいいわよ。あんたから直接買うのもアリだと思うし。そうなればあたしはあの雑貨店に製品を卸すだけ。いずれにしても誰も損しないと思うのよね」
「確かに貴方に調合技術があるというお話が前提でしたら誰も損はいたしませんね」
「あ! あたしの腕、疑ってんの!?」
「信じられる要素が今まで一切ございませんでしたが」
オリエラは至極真っ当な話を、真剣な顔であたしに切り返す。いや、普通ならむかついてもいいかもしれないんだけど、あたしは丁寧なのにものすっごい正論をものすっごくド直球に投げ返してくるやつ、正直大好き! オリエラの態度が気に入っちゃったあたしはつい口走っちゃった。
「じゃあ、信じさせてあげるわよ! あの薬草、調合して……あ」
そこまでいって、気が付いた。レシピは知ってるけど備品や設備がない! 蒸留器具や粉砕器具、計量器。あと混ぜる中和剤とか基本的な魔素粉末とか、薬師として基本的な物で持ち運びできるサイズは持ってるけど! あの薬草と毒消しはすりつぶして他の材料と配合する際にかなり精密な分量配合しなくちゃいけないからあたしが持ってる計量器じゃ成功率が滅茶苦茶下がる!
「どうかいたしましたか。もしや、自分が詐欺師であることをお認めになりますか?」
「んなわけないっての! 手持ちじゃ満足にできないの! あの中じゃ簡単な方の止血剤にしても、細かい計量ができる機器を調達してからじゃないと百パーセントは無理なの! 今手持ちの器具だと三回に一回成功できればいい方よ!」
「ほう。止血剤……三回に一回は成功できる自信はおありなのですね」
オリエラが興味深そうに聞いてくる。何よ、そんな確率じゃ金にならない……とかそういう話ではなさそうね。
「何、あんた、欲しい理由でもあるの?」
「あの材料からできる止血剤はこの街でも販売されているのは確認しております。銅貨三枚。それを購入するために今こうしてこの街に滞在しているのですが……手に入るのであれば今すぐ欲しい品ではございます」
待って。銅貨三枚? 首都じゃ一枚が相場よ? 薬師がいないからってぼってんじゃないわよ! 決めたわ、この薬草の採取地の情報が手に入ったらまずはこの止血剤の価格破壊よ!
それにしても、止血剤がすぐに欲しい……? 雪山への出入りは依頼かな、って思ってたけどそういう事情じゃないってこと?
「そういうことならわかったわ。証明してあげるけど、材料の薬草は全部あんた持ち。他に使う物とかはまあ、証明がてらってことだからあたしが自分で持つわ。で、あんたが用意した薬草はあんたの目の前で調合するわ。成功品は全部あんたにあげる。この条件であんたは、薬草の専売契約、もしくは採取地の情報のどちらかをあたしに報酬としてちょうだい。これでどう?」
「専売契約についてはお勧めいたしません。わたくし自身、ここに定住する気のない通りすがりの冒険者です。目的を果たしたらこの地を去る人間でございます。そこで、こちらから逆に提案させていただいてもよろしいでしょうか?」
本当、馬鹿丁寧なやつね。ますます好きになっちゃうじゃないの。変に腹の探り合いなんてしなくていいのはやりやすいわ!
「何? 今までの言い回しとか聞いてても、あんたは騙す気とかなさそうだし、あんたの提案通りでいいぐらいよ、あたし」
「このような態度で騙してくる輩が現れないとも限りません。もう少し警戒感をもって接するべきかと。それはさておき、わたくしからの提案ですが……三回に一回調合に成功できる道具であればいつも持ち歩いているという認識で間違いございませんね?」
「ええ、そうよ」
「でしたら、採取地までわたくしがご案内いたします。そして、安全な所まで案内の上、そこで成功するまで調合していただきます。もちろん、道中の警護はわたくしめが責任を持って行います。これで、いかがでしょうか」
あたしは言葉で返事をする代わりに満面の笑みでオーケーのサインをオリエラに見せた。
何よ、その提案! 面白そうじゃない! いいわよ、受けて立つわ!




