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【キセイシリーズ】国のクソ制度で解雇された薬師の華麗なる辺境ワークをとくと見よ!  作者: mizuchi_0307
第一章 人間なくして拠点なし!

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第2話 客入れる努力したら? 品揃えはいいんだし

「じゃ、気を付けていくのよ、エリシア。トルン、あんたもきちんとエリシアの面倒見てあげるのよ」


「言われずともわかっている。お前こそ、すぐに泣きついて金をせびる手紙を出してくるようなことだけはやめろよ」


「もう、二人とも! 別れ際にそういうのはやめようよ!」


 クリッパーの外へ出るための検問所。あたしとエリシア達パーティは最後の別れの挨拶を交わしていた。そんな時間をぶち壊すように門番があたし達に声をかけてきた。


「冒険者パーティか。通行許可証の提示を」


 ねえ、もう少し空気読みなさいよ! 一言ぐらい申し訳なさ出してみたらどうなのよ!


 クリッパーは高い壁に覆われている。今はこの壁こそが比較的近くにある雪山からの風や雪崩を食い止める障壁になっているが、元々の役割としては人の流れの管理。

 ここ、ハーゲルン王国では人の流れを統制するため全ての街にこうして壁を作り、誰が出て誰が入ったか、全て記録している。本当に堅苦しい国よね。


「ああ、そうだ、シルバーナ。これを」


 トルンは懐から小さな袋を取り出し、あたしに手渡す。受け取るとずっしりとした重量感があることが分かる。ちらりと中を見ると金、銀、銅の三色が輝いていた。


「ちょっと、これ、世界三貨じゃない。あたし、ここにとどまるからハーゲルン銭貨で問題ないんだけど?」


 この地域で使えるお金は二種類ある。一つはハーゲルン王国内だけで使えるハーゲルン銭貨。そしてもう一つは世界共通として使える銅貨・銀貨・金貨。まとめて世界三貨。基本的に、世界三貨の方が価値がはるかに高い。ハーゲルン銭貨百枚でも銅貨一枚に敵わないほど。なんで、そんな高価な世界三貨の方を渡すのよ。


「……お前をここに留める、というのは他にも理由があるということだ。エリシアには悟られるな」


「は? ちょっと、どういうこと?」


 あたしがトルンに真意を問いただそうとしたちょうどその時、国からの書類と許可証を照合していた門番が、あたしに声をかけた。トルンが軽く頷くとあたしから離れる。答える気はないってことね。


「お前は許可証に名前がないようだが」


「ああ。ここで見送りたいからついてきただけ。あたしは出ないわよ。面倒かけるわね」


「そうか、ならば問題ないな。わかってるとは思うが、途中死亡者が出た場合は必ず死者の身元が分かるものを提示するように。そうでなければ同行者が殺したものとして処罰されるので十分に注意すること。では、気を付けて」


 門番はパーティを押し出すように外へ出してしまった。本当、気が利かないんだから!


 ……それにしても、いつ聞いても気が滅入るような文言なこと。そもそもそれさ、相手を殺す目的で一緒に許可証とって外出て殺すならOKだしてない? とも思うのよね。ああもう本当、規制規制って抜け穴増やすだけで誰にもメリット無いじゃない。なんでこう人は人を信じられないのかしらね。


 そんなことを考えながらあたしは元気よく手を振るエリシアに手を振り返す。あの子は見えなくなるまで何度も何度もこちらを見て手を振る。その度にあたしも振り返した。


 本当、こんなことされたら何のあてもないのにやるしかないじゃない!


 エリシア達が見えなくなってから、あたしは一度、酒場へと戻ることにした。この街は酒場と宿屋が兼業してる。だからパーティから外された直後の冒険者は一旦そこしか居場所がないっていうのが正解なんだけど。まあ、基本的に仕事は酒場だし、宿は宿屋だから便利ではあるわ。とはいえ、食事別で一泊銭貨五十枚は高いのよね……まとめ払いだと少し割引してくれるけど微々たるもの。早めに拠点になる場所は探さないとね。


 戻る途中、これから暮らすことになるこの街の生活水準を確認する意味で、メイン通りから少し外れた場所にある雑貨店に立ち寄ることにした。この街は気温の関係で露店がないから、特に街中に人が少なく見える。でも店の中に入ると常時数人はいて、どの店も雰囲気はいいなという印象があった。で、暮らす上で必須ではないけど痒い所に手が届くお店ってのは大体、メイン通りから少し外れた所に構えてるってのがどの街でもあるあるなのよね。


 扉を開けて中に入る。店内は暗くて客は誰もいない。店主っぽい人はカウンターにいるけど、こちらをちらりと見ただけですぐに帳簿らしきものに視線を移す……しまった。もしかして、この店、はずれ?


 だけど、品揃え自体は悪くなかった。いや、むしろあたしにとっては大当たり。


 店に入ってすぐの籠の中にまだみずみずしい野草が無造作に置かれていた。

 これ、即効性のある止血剤になる薬草じゃない。銭貨二十枚? やっす! 製薬した状態でどれくらいで売られてるかわかってる、ここの店主? 銅貨一枚よ銅貨! パン一個が銭貨三枚の世界で! 銭貨百枚出しても銅貨にならないんだからね!? しかも見た目が悪くても効能がしっかりしてる証拠の香りが強いのが多いじゃない! これで二十枚は破格すぎよ!


 その隣にはやはりこちらもまだみずみずしい、先ほどの薬草よりも濃い鮮やかな緑色をした草が置いてある。

 あ、これ、毒消しじゃない。銭貨十枚……ちょっと、安く売り過ぎでしょ! 製薬した状態でこれも銅貨一枚で買い手がつくわ。このままじゃ毒消しにならないから? もしかして知識ないの? まあ、毒消しについては地域格差があるから理解はできなくはないけど……運搬費まで考えても、他の店に売りつけなさいよ。店頭で売るには勿体ないでしょ! ……もしかして、この街……薬師、いない?


 さらに店の奥に置かれている棚に、薄い水色の果実が三個。

 うっわ! この地方ならではのヤツがきたわね! 凍結剤の材料になる果実! 銅貨二枚。うーん、これは絶妙! そもそも他の地方じゃ見かけないし、加工手順も設備準備も面倒だものね。貴重品だけど銅貨になっちゃう気持ちはわかるわ~! まあ、加工済み商品はもれなく金貨でやり取りされるぐらいの夢が詰まってる品なんだけどね……


 でもおかしいわね……果実の値段は妥当だけど、薬草系がアホみたいに安いんだけど。加工しないと役立たずとはいえ、それでもおかしいわ。この極寒の地で薬草がわらわら取れるポイントでもあるってこと? これは一度、店主に話を聞くのがよさそうね……


 でもあの根暗そうな店主に声掛けるの?


 あたしはちらりと店主を見ると、店主もこちらを見て、怪訝そうな顔をした。


 え~ これはちょっと、気が引けるわ……


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