第17話 思いがけない武器ゲットね!
あたしとオリエラはとりあえず、遅すぎる昼食としてあたしが買ってきていた凍魚肉バーガーを食べながら作戦会議をすることになった。
「幸い、ここは雪山がすぐそばです。今から小屋まで行き、ヴィエラに今日は洞窟で待機していてもらうよう依頼することはできるかと。ただ、今のヴィエラにあまり人を接触させたくはありませんが」
「やめときなさい。流石にもうすぐ日が沈むわ。多少は雪山に慣れてきてはいるっていっても無理する必要性はないでしょ。今日来るとは限らないんだし、それは明日でいいわ」
ヴィエラの力を借りるのは良い案だとは思った。だけど、今からでは遅いし、人に会わせたくないヴィエラを洞窟で待たせるのは、オリエラにもヴィエラにも悪い。今日来てしまったら軽く追い返す程度が現実的。
「かしこまりました。貴方はどうするのですか?」
「とりあえず、野盗の連中と戦える道具と寝袋だけ持ってくるつもり。あとは、薪を調達してあるの。本当は明日運搬してもらう予定だったけど、今日必要な分だけ取りに行ってくるわ」
「でしたら特段、わたくしがやることというのはございませんね。夕食については、昨日の熊肉の一部と、買い足したものでお作り致します。少々時間は遅くなってしまうかと思いますがご了承ください」
「ちょっと待って? 熊肉は宿に置きっぱなしだけど?」
「その点でしたらご心配なく。宿で保管するよりもこちらで保管した方が鮮度が保てるという判断で移動済みです」
話はテキパキと進む。こういう時、オリエラはとても優秀だった。こっちがしたいことを伝えると自分で判断し提案してくれる。これが、昔の経験からだっていうのはちょっと痛々しいけど……
しかし、野盗はなんで、この倉庫を使っているのかしら。どうやって出入りしているのかしら? まずはこれを確認しないと。
「あたしはここに戻ったら床を全部剥がしてみることにするわ」
「おや、どうしてでしょうか?」
「だって、内覧の時、窓とか壁とかチェックしてるのよ、あたし。隠し扉とかはなさそうだったわ。でもどうやってか出入りしてる……なら怪しいのは、上と、下でしょ?」
「ああ、なるほど……確かに。床の傷み具合が激しすぎるのは気になっておりましたが可能性はありそうです。でしたら、わたくしめがここで作業を致しましょう」
そういえば、掃除とかいって傷んだ床板剥がしてたのよね……その細腕で、どうやって?
「ねえ、気になってたんだけど、どうやって床板剥がしたのよ?」
「ああ、そんなことでございましたか」
そういってオリエラは荷物の中からL字型に曲がった鉄棒のようなものを取り出した。先は平たく加工されている。なによそれ。どうしてそんなものが手荷物にあるのよ。
「簡易的にベンチが必要になった時に材料を調達するためにいつも所持しております。こういった、床を剥ぐ作業にも使えるので愛用しております。ああ、もちろん組み立てるための道具としてこちらもございますよ」
そういってオリエラはトンカチを取り出す。
簡易的にベンチが必要になる時ってどういう時、っていうツッコミはもうやめた方がいいのよね、これ……
これ以上、ツッコまなければならないネタが増えるのも怖かったあたしは、足早に宿へと戻る。あんな感じではあるけど雪山で一人でサバイバルできた冒険者。とはいえ、岩を運ぶのに四苦八苦したようなオリエラ一人を置いておくのはちょっと気が引けたし。
あたしは宿のクローゼットから寝袋と旅用の道具袋だけ素早く出すと、その足でリントの店へと駆けだした。
到着する頃には辺りが薄暗くなっており、リントが店じまいの準備をし始めていた。
「なんだ、忘れ物か? そうでないなら、もう店を閉めるから明日にして」
「薪が必要になったの! 明日運んでもらう予定の薪、一晩分だけ先に頂戴!」
「どうした、突然……事情ぐらいは聞くぞ?」
リント、あんたは本当、人がいいわよね……そうやってオリエラの話も聞いてあげたんでしょ。男前ね。あたしはリントの男前さに甘えて、職員から聞かされたクソ制度の話を怒りを隠さず話した。
「はぁ……誠実さってのが欠けるな。商人じゃないから仕方がないか。ああ、事情は分かった。関わるのはごめんだが、物はもってけ。ある場所は知ってるだろ」
「ありがと、リント! 助かるわ!」
あたしは店の奥の倉庫で持てるだけの薪を回収する。そのタイミングでリントがあたしにぽんっと小さな布袋を投げてきた。
「リント、これ何?」
「お前、薬師なんだろ。これは、上に薬品を投入してから縄に火をつけると薬の成分を含んだ煙が出る、特殊な煙玉だ。あいにく、この街には薬師はいない。薬は全部取り寄せ。そんな高価なもんをこんな形で消費する奴はこの街じゃいねぇんだ。あっても意味がないからやるよ」
話を聞く限り、『薬莢玉』。構造的にも簡単だけど使用する薬剤次第では危険物になってしまうことから、取引が著しく制限されている道具で、普通の雑貨店に置いているようなものではない。
「これ、どうしたのよ……」
「ふんっ。うちの店は昔っから国が面倒事を処理する時によく使われるんだよ。その代わりに、商売を認めてもらってる所がある。持ちつ持たれつってやつだ。だから、お前の件に直接は関われない、わかったな?」
なるほどね、同情はするけど手は貸せない。道具はやる。だけどうちが関わってるっていうのは伏せてくれ、って感じなわけね。本当、リント、あんたは商売人ね。あんたに迷惑かけないようにやるわよ!
あたしは精いっぱいの笑顔で、リントに答えると、リントは鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。まったくかわいいんだから。
そして、拠点の扉を開けたあたしの前には、事務室以外の全ての床が剥がされた上で、熊肉のシチューが入った皿が置かれたティーテーブルと椅子。そして秘密の入り口が綺麗に並ぶ、異様な空間が広がっていた……




