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【キセイシリーズ】国のクソ制度で解雇された薬師の華麗なる辺境ワークをとくと見よ!  作者: mizuchi_0307
第二章 上手い話は作るべし!

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第13話 大事なのは拠点としての有用性よ。わかる?

「……あの、シルバーナ。決めるのは貴方です。ですが、わたくしから一言、言わせていただいてもよろしいでしょうか?」


 早速、案内してもらった倉庫を一通り見て回った。あたしが満足げに頷いているのを見て、オリエラが不満げにあたしに声をかけてきた。この建物に、言いたい事って何よ?


「ん? 何? 外壁はぼろぼろだけど内装は崩れ落ちてないから良いでしょ? 天井はぼろいけど作りは頑丈。その上、高いから中にテント張って、そこを作業場にできるでしょ? 何より、事務室を居住スペースとして使えるのは強いわ。これで金貨五枚なら買いでしょ!」


「はい、五枚なら確かに、お買い得ではあると思います。外からの見た目が悪い。事務室と倉庫スペースしかない。庭もない。さらには、倉庫にするには大通りからは離れすぎでございます。他に不備がないのであれば、金貨五枚は安すぎるかと思われます」


「でしょ? お宝物件じゃない! 何に文句あるの?」


「その事務室が問題なのでございます!」


 ドンッと事務室の壁を叩くオリエラ。一体何が問題なのよ。トイレと竈があるのよ? これ以上何が必要なのよ?


「この竈は良いでしょう。竈としても暖炉としても使える、良い機能を持っています。しかし、この周辺の設備に問題がございます。優秀な調理場というのは作業台との動線がしっかりしているものです。しかし、ここはどうでしょう? 水源と作業台、竈の位置が非常に悪い」


 そう言って、竈の向かい側にある蛇口を指さす。まあ、確かに竈の向かい側に蛇口って、調理する人からしてみれば微妙な気はするわ。作業台から見てもちょっと遠いから洗い物『だけ』ならともかく調理する材料を洗うには不向きな配置ね……でも、ここ、本来事務室なのよ? あるだけで十分じゃない? それに、この配置自体は製薬を考えると便利なのよね。


「竈と蛇口の位置だけは反論させて。ここ、一応製薬拠点にするんだから、この位置でいいの。それに、竈の位置は暖房器具として建物の中心に近い側に置きたいっていう構造上の問題もある。だから、将来的に、調理場は調理場として新設して整えると考えた方が効率的だと思うのよ。どうかしら?」


 その発言を聞いてオリエラは目を見開き、腕組みをして考え始めた。


 製薬する側としては水を水のまま使うことはほぼなく、蒸留させて使うことが殆ど。すぐそばにある竈を流用できるから便利なのだ。調理場としての機能は確かに微妙だが『製薬拠点』としてはベストな配置。あたしは気に入ったからここ、買っちゃおうと思ってるんだけどな。


「……お前ら……ここで、寝泊りする気なのに、耐寒性とか暖房器具とかは気にしないのか……?」


 専門職員と一緒に様子を見にきていたバルガンが呆れ顔でそう呟く。


 ふっ、と笑ってあたしは答える。


「何言ってるの? 竈は殆どつけっぱなしになるんだから暖房器具はあるようなもんじゃない。気にしなくちゃいけないのは、断熱性だけでしょ?」


「そうですね、竈は殆どつけっぱなしになるでしょうからこの竈の温度管理能力や最高温度、燃費の方が重要でございます。断熱性については修繕で対応可能かと」


「……」


 閉口するバルガン。オリエラに対して、あたし達何か間違った事を言ってる? と目で問いかけるとオリエラも間違っていないと目で答える。


「それにだ……事務室のスペースで寝るにしてもだ……ベッドを二台、入れるスペースがないぞ? せいぜいソファーぐらいしか」


「ソファーがあれば十分かと思われますが」

「ソファーがあれば十分じゃない?」


「……」


 再び、閉口するバルガン。製薬作業では途中、目が離せない作業があることもある。光の関係上、夜にしか作業ができないこともあったりするからベッドなんてもったいないわ。でもあんたは違うんじゃない? とオリエラを見る。


(従者たるもの、主人が熟睡している傍らで熟睡などできるわけがないでしょう)


 と、目で訴えられた気がした。いや、そんなことを実際に言ったわけじゃないんだけど聞いたら一言一句違わない言葉が出てきて、あたしの逃げ場がなくなりそうだからやめとくわ。


 けれど、休める時に十分休むのも仕事のうちだとは思うんだけど、と心の中で呟きながら、あたしは内装の状態を改めて確認する。そう。一番大事なのは断熱性。当面は製薬作業場はテントで覆うから埃とかの異物混入に関してはぼろかろうが問題はない。でも、温度管理は重要。テントで覆ったところで所詮布。街中でも夜は氷点下になることはざらにあるこの街で、外気をしっかりシャットアウトして温度を保てることだけはできていないと困る。


 窓、扉、隙間……入念に一か所ずつ確認していくが特段問題はない。天井もさっきから竈で全体を温めて屋根上の雪を少し溶かして水漏れがないか確認してるけど降ってくるのは埃だけだから問題はなさそうね。


「バルガン! ここにするわ」


「本当にここでいいのか? 見た目が滅茶苦茶ボロ屋だぞ? 床も剥がれかけてる部分があるから補修がいるぞ? 商売には向かないぞ? それに普通もう少し候補見て決めないか?」


「商品は売るあてがあるからいいの! ここで売る必要がないからいいの! 床はむしろ剥がしたい所もあるし! それに、あたしとしては一刻の猶予もないの! ほら、役所戻るわよ! さっさと手続き!」


「シルバーナ。そこまで急ぐ必要性はないかと思いますが」


「何言ってんのよ。一刻の猶予もないのは、あんたの方でしょ」


 そういって、バルガンと職員、オリエラを押し出すように倉庫の入り口に移動させる。オリエラがあたしの方を何度も見ていたけれど、感謝なんていらないの。あたしが勝手にあんたらに押し売りして、勝手に笑顔って報酬強奪する気でいるだけなんだから気にする必要一切なし! さて、これで拠点は決まったわ! 次は什器ね!



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