↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【キセイシリーズ】国のクソ制度で解雇された薬師の華麗なる辺境ワークをとくと見よ!  作者: mizuchi_0307
第二章 上手い話は作るべし!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/21

第11話 計画なんて概要見えてからでいいのよ

 街に戻って一番最初にやるべきこと。それは拠点を見つけて仕上げるまでの宿の確保だった。


「お代は今日までとなっておりますが、延長はされますか?」


「もちろん! あ、そうだわ、オリエラ」


「なんでしょうか?」


「あんたさえよければあたしの部屋にきなさいな。一人一部屋は高いわ。数日だけ二人一部屋で我慢してもらえれば寝床は用意するわよ?」


「それはわたくしも助かります。稼ぐあてはあの薬草のみ。あの雑貨店の店主も困っている様子でしたのでこれ以上買い取っていただくのも気が引けていたところです」


 表情を変えずに言うけど、あんた、しっかりリントが嫌がってたのは感じとってはいたのね……


「ところで、数日とは? 貴方の目的が拠点づくりということは存じております。しかし、拠点となる建物が数日で手に入る算段などあるのですか?」


「それは今からよ! まっ、なんとかなるでしょ! ってなわけで、一部屋に二人に変更ね! 食事はなしでいいわ。あ、あと結局あたしもこいつも、昨日はここで寝てないし、その分も差っ引いて銅貨一枚二泊でお願いできない?」


 あたしが受付に交渉しながら銅貨を支払う姿をオリエラが呆れながら見ていた。そして呟く。


「貴方は本当に計画性がありませんね……」


「それ、ヴィエラを追いかけて隣国から無計画にやってきた冒険者のあんたが言う!?」


 そんなやりとりをしながらあたしとオリエラは街へと繰り出す準備をした。

 あたしはトルンから渡された世界三貨の入った袋。そして、ヴィエラからお土産といって押し付けられた熊の毛皮を麻袋につめて宿から出た。



 あたしはまず土地を管理するハーゲルン王国の役所へと向かった。どんな手段で購入するにしても、冒険者がたまり場として使う『店舗』としての登録手続きは役所で行う必要性がある。顔を出さないわけにはいかない。

 それに、この国は管理が大好きだ。正直あたしは気に入らないが、今回ばかりは都合がいい。所有者のいない土地がどこか、という情報だけは間違いなくここで手に入る。土地の広さや場所がちょうどいい所を見繕うにはぴったりなはず!


「大きなお役所ですね……この街の規模の割には大きすぎやしませんか?」


「クリッパーはね、昔は国営の大型研究施設があったのよ。寒冷化しちゃって不便になったから引き上げて、建物だけ役所として再利用してるってわけ」


「なるほど。理にかなっておりますね。しかし、わたくしも一緒にとはどのような理由で?」


 そう、オリエラを連れて役所にきたのには重要な意味がある。あたしは一目散に役所の受付で、ある人物を呼びつけてオリエラの事情を話した。


「ほう? 山を越えての越境だなんて珍しいな」


「でしょ? 本人も国境越えしてる自覚がなかったみたいでさ~ ルール分かってなかったらしいのよ。あたしがきちんと教えるから。大目に見てよ、バルガン!」


 筋肉質な腕のせいでハーゲルンの役人制服の袖が通らず、上から防寒コートを羽織った姿がお決まりのバルガンが腕組みをしながらため息をついた。


「まったく、お前は……何でもかんでも俺に言えばいいと思ってるんじゃないぞ、シルバーナ」


「あんたみたいに話の分かる役人さんは貴重なんだって! ね、ね? また今度、腰痛に効く湿布作るから!」


 あたしが泣きついて見せるとバルガンはため息をついて書類に手を伸ばす。


「あの……シルバーナ?」


「ああ、いいのいいの。バルガンはね、昔、首都ハーゲルンで国防に携わってたことあるのよ。だけど、上司と喧嘩して、コロッセウム『イオタ』でハーゲルン代表として国家試合に放りだされて腰痛めて左遷された男気あるやつなのよ。証拠にほら、役人制服着れてないでしょ? 一回だけ見たけどぴちぴち過ぎて、少し動いたらすぐ破けてたのよね」


「聞こえてるからな? つーか、その話はあまり周りにするんじゃない。かっこ悪いだろう。ほら、えっと? オリエラだったか? ここに必要事項を書いてくれ」


 そう言ってバルガンがオリエラに冒険者登録手続きの書類を差し出す。


「かしこまりました。こちらでございますね」


 オリエラはそれを受け取ると、黙々と書類に名前と経歴、職業の欄に記入を始めた。

 オリエラの書く字は思った通り整っていてとても綺麗。しかも速い。

 しかし、経歴の欄に書き始めた内容に、あたしとバルガンは揃って驚きの声をあげた。


「うん? お、おい! お前、イオタに居たことがあるのか」


「え? あ! オリエラ、あんたイオタで何してたのよ!? 確かにあそこはグランディウス王国内ではあるけどそこに居た経歴は聞いてないわよ!」


「聞かれていませんので」


 まあそれは確かに。でもあそこってバルガンみたいに国家試合するかもしくは奴隷試合が開かれる、この大陸内で一番治安が悪い場所なんだけど。


「別に居たくて居たわけではございません。わたくしは、そもそもがイオタ生まれです。イオタで奴隷として働いていたところをヴィエラとともに買われただけでございます」


 うん? イオタで働いていた奴隷でメイドの嗜みがあるの? あそこのメイドって上の連中が気に入った奴隷を選んで躾けてるって聞いたけど……まさか……


「シルバーナ、貴方の知識がどこまでの物かは知りませんが。あそこで働いていた奴隷でメイドとして働ける人間は限られております。現在、同じ冒険者ギルドで働いているメンバーのほとんどはこのイオタ出身。その中でもわたくしはまだ恵まれている方です」


 ……オリエラが主人に忠実なのは納得。そんな経歴があるんならそりゃ、助けてくれたような主人は裏切れないわ。この性格だし。


「はぁ……壮絶だな。で、その主人の命令を実行中に国境越えせざるを得なくなったってか?」


「大体そうです」


「オッケーオッケー。そういう事情ならこれ以上細かい事は聞かないことにする。ただ、移動に関するルールとかこの国にはあるから、それだけは守ってあまり面倒事を起こさないように頼むぜ。せっかく首都から遠くてゆるゆるの監視の下で働けてるのに面倒事が起きると首都から応援がきちまうからな」


「あんたは首都の連中が嫌いなだけでしょ。ま、あたしはやりやすいからいいんだけどさ」


 そういってあたしとバルガンが笑っているとオリエラが真剣な顔で尋ねる。


「書類はこれでよろしいでしょうか? また、シルバーナ。ここへ来た目的は土地探しだったのでは? 忘れないうちに用件を伝えた方がよろしいかと」


 あ、いっけない。忘れかけてたわ。こういう時、指摘してくれるのは助かるわ。エリシアだったら絶対あたしと一緒に忘れたでしょうね。


「あ、バルガン! そうなのよ、今日来たのはもう一つ理由があってね。空いてる土地のリストない? 売ってるかどうかは自分で確かめるから、場所と広さが見えればそれでいいわ」


「うん? お前、ここに住む気になったのか? お前の仕事はしづらいぞ? 器材を取り寄せるのにも数日かかるし、材料だって少ない。まあ、寒冷地でしか手に入らない希少品は手に入りやすくはあるが、利点なんてそれだけだぞ?」


「だからいいのよ。首都だったら銅貨一枚で買えるような止血剤がここだと三枚だって聞いたわ。流石にぼったくりすぎよ。止血剤なんて命に関わる薬剤でしょ? そういう品が手に入りにくいのは問題でしょうが」


「まあ、確かに問題視されてはいる……が、お前がそんな殊勝な考えだけで動くとは思えんが?」


 そういってバルガンが土地のリストを出しながらずいっとあたしの顔に自分の顔を寄せる。


「ずばり、お前も国の制度のせいでなんか起きたな? エリシアが一緒じゃないってことは、置いていかれたか」


 バルガンの癖に、鋭いじゃない……! あたしの顔を見てバルガンが笑う。


「アハハッ! 図星か! 国への復讐。いや~ お前らしい理由で良かった。お前はそうじゃないとな!」


「余計なお世話よ!」


 そういってあたしは土地のリストをバルガンから奪い取るように受け取った。


 さーって。製薬に適した広さで、事故が起きた時のために周りにあまり建物がなく、さらにできれば街の外に出やすい立地の素敵物件あるかしら?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。