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第十一話

 僕は、凪沙が僕に告白してくる時を待っていた。

 そして遂に、その時が来たようだった。

 今日は凪沙とバイトのシフトが被っていた。しかも、どちらも閉店までの勤務だった。

 そして、バイト中に凪沙が話しかけてきた。


「彰人、今日バイト終わり、ちょっと話したいことある」

「分かった」


 こうして僕たちは、バイト終わりに久しぶりにふたりで並んで歩いていた。


「彰人、白川先輩から何か聞いた?」

「うん」

「やっぱりか……でも、私の口からも言わせてほしい。私、彰人のことが好き。友達としてじゃなく、恋愛対象として」

「正直、驚いた」

「それは、彰人が鈍感なだけだよ。周りはみんな気づいてた」

「そうか……でも、なんで僕より先に白川先輩に伝えたんだ?」

「それは、正々堂々戦いたかったからよ」

「そうか……そして、聞いちゃったんだな。偽装カップルのこと」

「うん、ビックリした。だって、そんな風には見えなかったもん。でも、誰にも言ってないよ。もちろんこれからも、誰にも言うつもりはない」

「ありがとう……そして、僕も凪沙に伝えないといけないことがある」

「何?」

「僕は白川先輩のことが好きだ」

「……うん。なんとなく、そんな気がしてた」

「だから、凪沙の気持ちには答えられない」

「分かったわ。けど、白川先輩は彰人の気持ちを知らないようだったけど?」

「うん。まだ言えてない」

「そうなんだ……」

「僕にはまだ告白する勇気はないんだ」

「分かったわ。あんなに練習を頑張ってたのはそういうことだったのね。つまり、ナイトカーニバルで小西先輩に勝って、自信をつけようとしてたのね。違う?」

「実は……そうなんだ。小西先輩に走りで勝てば、恋愛でも勝てるんじゃないかと思って……」

「なんだか……彰人らしいわね。私も応援してるわ。彰人が勝つところ、見てみたい。でも、彰人はすぐ練習追い込み過ぎちゃうから、くれぐれも無理しないでね」

「うん、ありがとう。やれるだけ、頑張ってみるよ」


***


 遂に、ナイトカーニバルまであと一週間を切った。

 順調に練習は積めていた。

 そして、今日のサークルの練習では確かな手応えを掴むことができた。

 今日の練習メニューは以前と同じ、インターバル走だった。

 僕は初めから最後まで一本も離されることなく、走り切った。

 しかも、体力にはまだ少しの余裕さえあった。

 メニューが終わってすぐ、大雅が声をかけてきた。


「彰人、お前かなり体力戻ってきたな! さすがだぜ!これはナイトカーニバルも楽しみだな!」

「そうだな……なんとかみんなと戦えそうなレベルまでは追いつけたかな……」

「当日はライバルだからな。俺も負けないぞ」

「おう」


 練習が終わり、帰宅しようとしていると、小西先輩が近づいてきた。


「加藤、だいぶ体力が戻ってきたようだな」

「はい……まだまだ先輩には追いつけそうにないですけど……」

「いや、そんなことはないと思うぞ。ここ最近の加藤の伸びには目を見張るものがあった。今の加藤なら十分俺たちと戦えるレベルにあると思うぞ」

「そんな……精一杯頑張ります」

「ああ、お互い頑張ろう」


 宣戦布告といったところだろうか。

 負けられない。

 この戦いには、僕の恋と、そして命が懸っている。


***


 ナイトカーニバル当日、会場は熱気に包まれていた。

 この記録会は、気温が高くなってきた六月末のこの時期にはありがたい、ナイトレースということもあり、様々な大学や高校などから参加者が集まる。

 僕たちのサークルからも、二十人程度が参加していた。

 僕の走る組は最終組で、僕のいつも練習しているグループのメンバーは全員この組だった。その中にはもちろん、小西先輩もいる。

 僕は、久しぶりの試合の雰囲気に緊張しつつも、少しワクワクしていた。

 僕は昔から試合が好きだった。

 序盤から繰り広げる駆け引きの緊張感や最後の競り合いの時の高揚。そして、勝負に勝った時の喜び。

 全て、試合でしか味わうことのできないものだ。

 正直、今からレースが楽しみで仕方ない。


 アップを終えて、招集場に向かう途中、白川先輩とばったり出会った。

 女子のレースは男子の前に行われたため、白川先輩はレースを終えて、応援に回っていた。


「白川先輩、レースお疲れ様でした」

「いやー疲れちゃった。やっぱりもっと練習しないとだ」

「でも、ナイスランでした」

「それより、次は加藤くんの番だね。楽しみ!」

「ちょっとプレッシャーですけど……いいところ見せられるように頑張ってきます!」

「うん! 応援してるね!」


 白川先輩の応援でとても元気が出た。

 これなら、実力以上の結果が出せそうだ。


 招集場に着くと、既にたくさんの人が集まっていた。

 そして、その中に小西先輩の姿を見つけた。

 僕は一度深呼吸をし、高ぶる気持ちを落ち着かせた。


 大丈夫だ。

 今まで、出来る限りのことはやってきた。

 きっと負けない。


「それでは最終組、入場お願いします」

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