1.学校
─五年前─
都内某所で、一人の男子高校生が、学校でのいじめを苦に自殺した。
死亡したのは、岩崎 薫。岩崎財閥の跡取りとも言われていた成績のいい少年だ。
いじめの加害者は分かっていない。
学校側は生徒に聞き取り調査をしたが、解明には至らなかったという。
そして、月日が流れ……。
都内の公立高校で教師が屋上から転落死をした。
その教師の遺族が、聡美に事件を調べるよう依頼しに事務所までやって来た。
聡美は依頼を引き受け、現場である高校に足を運んだ。
事件当時、警察が捜査し、事故死として処理していたが、しかし、遺族は納得がいかなかったようだ。
(ここが転落現場……)
聡美は遺体が倒れていた地点に立っていた。
上を見上げる。
五階建ての新しい校舎だ。その屋上から落ちたら一溜まりもない。
聡美は屋上に上ってみた。
(高!)
聡美は地上を見下ろしてめまいがした。
(ここから落ちたら一溜まりもないね)
聡美は屋内に移動する。
職員室を訪問し、手帳を提示して聞き込みを行った。
聞き込みによると、亡くなった教師の磯貝 光太郎は、男女誰に対しても優しく、信頼の厚い教師であることがわかった。
他殺だと仮定すると、殺される理由がわからない。
「これまで磯貝さんについて、他殺の前提で話をしましたが、自殺の線で考えてみようと思うんですが、自殺するような動機というようなものはあると思われますか?」
「さあ、どうでしょう? 彼、特に悩んでることもなかったので、わかり兼ねますね」
「そうですか……」
聡美は、「何かあればまた来ます」と、残して高校を後にした。
そして、所轄の渋谷警察署に向かう。
渋谷警察署の資料課で捜査記録を確認する。
特に引っかかる点は見受けられない。
そこへ、精悍な顔立ちをした男性が入ってくる。
「ん?」
目が合う聡美と男性。
「君はここの職員かな。見たことないけど」
「いえ、私は探偵ですよ」
「探偵?」
「はい。坂上です」
「あなたが坂上さんなんですか?」
「あなたの方こそ何者ですか?」
「この間、電話してた小坂です」
「え、あなたが小坂刑事?」
「ええ。坂上さんはどういったことでここに?」
「ちょっとこれをね」
聡美は捜査記録を見せた。
「ああ、それなら応援で僕も担当しました」
「そうですか。……事故で処理なされたんですよね?」
「ええ、自他殺の怪しい点がなかったので」
「確かに、事件ファイルを見ても引っかかるところはないですね」
「高校へは聞き込みは?」
「しましたが、これといって手応えは。やはり事故でしょうかね」
その頃、渋谷警察署の外では。
(何人たりとも私にはたどり着けない。例え検挙率ナンバーワンの探偵でもね)
怪しい人物が、警察署を眺めていた。




