1.病院
聡美は東京警察病院へ美琴の退院手続きをしに来ていた。
手続きから清算までしらばく時間がかかるため、聡美は美琴の病室を訪ねた。
「あ、お姉ちゃん」
「元気そうだね」
その時、美琴の背後の窓の外で、何かが落下した。
「あ?」
聡美は窓に近づいた。
「下が見えそうで見えない……」
「何かあったの?」
「何かが落下したのが見えたからさ」
「人?」
「そんなまさか?」
しかし、そう思って、聡美は表に回った。
人だかりができている。
「何かありました?」
野次馬に訊ねると、「人が屋上から落ちてきたらしいのよ」と。
「え?」
人混みをかき分けて奥へと進む聡美。
「ちょっと失礼」
奥へやってくると、確かに人が倒れていた。
「みなさん、下がって下さい!」
聡美は野次馬たちに探偵手帳を提示しつつ、屋上を見上げた。
「ん?」
人影のようなものが動いた。
(誰かいる?)
騒ぎを聞きつけた病院の職員がやってくる。
職員が遺体を調べる聡美に訊ねた。
「何してるんですか?」
聡美は手帳を提示した。
「探偵?」
「はい。マル害……あ、いや、被害者の生死を確認して欲しいのですが」
職員が被害者の眼球に懐中電灯の光を当てた。
瞳孔は開いている。
「お亡くなりのようです」
「ドクター、すぐに警察へ連絡を。私は屋上の様子を見てきます」
「わかりました」
聡美は屋上へ向かった。
(被害者はここから落ちたのか)
聡美は縁を確認する。
パトカーのサイレンが聞こえてきた。
サイレンは病院の前で止まり、警視庁の捜査員がやってきた。
「また君か」
と木島警部。
「義人くん? なんで?」
「本日付で本店勤務になったんだ」
「移動になったんだ?」
「ああ。で、今回も他殺なのか?」
「自殺の線は低いだろうね」
「どういうことだ?」
「遺体を確認した時、屋上で人影のようなものを見たのよ」
「そうか。じゃ、殺しの線でも動いてみるよ」
「私は私で調査するわね」
「気をつけろよ」
聡美は屋内にある美琴の部屋に戻った。
「パトカーが来たみたいだけど?」
「事件」
「そうなんだ。物騒な世の中になったね」
「ここ最近、犯罪の件数が増えてる気がするわ。ま……警察とかの犯人検挙率もトータルで上がってるけどね」
「検挙率ってどのくらいなの?」
「96.8%よ。殺人はほとんど逮捕されてるわ」
「へえ、そうなんだ?」
「だから変な真似はしてもらいたくないわ」
「で?」
「え?」
「事件の犯人」
「まだわからないわ」
「調べるんでしょう?」
「だけど、退院手続きが」
「調べたいんでしょう?」
「うん、まあ」
「じゃあ、行ってきてよ。私のことは後回しでいいから」
「うん、じゃあそうするね」
聡美は病室を出た。




