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Private Detective Satomi  作者: 坂上聡美
5.誤認

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17/33

2.妹

 警視庁王子警察署捜査一課。

 聡美と木島警部が訪問した。

「なんですか?」

 捜査一課の刑事が訊ねる。

 聡美と木島警部はそれぞれ手帳を提示した。

「どういったことでしょうか?」

「山口 晶の件で聞きたいことがあります」

「山口 晶って、歩道橋の?」

「はい」

「自殺で処理したヤマだからね」

「もしかすると、山口は自殺ではないかもしれません」

「他殺?」

「事件発生時の状況、教えていただけますか?」

「あの日は夜で暗かったから、見通しが悪く、歩道橋の上はよく見えなかったと聞いてますが」

「そうですか。どうもありがとう」

 聡美と木島警部は歩道橋に向かった。

 歩道橋を調べる聡美。

 欄干に擦った痕跡を見つける。

 その時、木島警部の携帯が鳴る。

「はい、木島です」

 王子警察署からだった。

「……はい。……はい、わかりました」

 電話が切れる。

「王子警察署からだ」

「なんだって?」

「この場所で鑑識作業中に採取した毛髪と、亡くなったホームレスのDNAが一致したそうだ」

 聡美は携帯で依頼人を新宿公園に呼び出した。

「何の用? お姉ちゃん」

「荻田さんを殺したの、あなたね?」

「え?」

「山口 晶を殺されての怨恨」

「私が殺した証拠は?」

 聡美は依頼人に例の動画を見せる。

「これ私じゃないよ?」

「凶器に指紋がついていたわ。あなたの指紋を採取させてもらえる?」

「……………………」

「させてくれないの?」

 依頼人は逃げ出す。

「あ!」

「待て!」

 聡美と木島警部は追いかけた。

 車道に飛び出す依頼人。

 クラクションを鳴らしながら突っ込む車。

 振り返った依頼人は驚き戸惑う。

キー、ドン!──車は急ブレーキをかけるも、間に合わず依頼人を撥ね飛ばした。

 依頼人は空中を舞い、地面に叩きつけられる。

「うっ!」

 意識を失う依頼人。

「大丈夫か!?」

 木島警部が依頼人を抱きおこす。

 依頼人は頭部の損傷が酷く、息絶えていた。

「ん?」

 聡美は遺体の髪を引っ張った。

 外れるフェイス。その下からは男の顔が出てきた。

「変装?」

 聡美は遺体からスマホを取り出し、データを確認した。

 電話帳に坂上と書かれた電話番号がある。

「こいつは……」

「お前のか?」

「違う。調べてみようか」

 聡美はスマホでその番号にかけた。

「はい?」

 番号の持ち主が応答した。

「美琴さんですか?」

「え? そうですけど」

「姉の聡美よ」

「お、お姉ちゃん?」

「あなた、どこにいるの?」

「わからない。暗くて何も見えないわ。それに、なんか寒い……」

(閉じ込められてるのか)

「GPSで辿るわ」

 電話を切る。

「義人くんはここをお願い。私は電話会社行くわ」

 急いで電話会社へ行き、携帯の発信地を調べた。

 聡美は現場へ急行する。そこは葬儀屋だった。

 霊安室に行き、棺を調べると、美琴を発見した。

「美琴ね? 助けに来たわ」

「お姉ちゃんなの? どうしてこんなことに? て言うか、あの人は?」

「あの人?」

山岡やまおか 茂樹しげきさん」

「山岡 茂樹?」

「うん」

 聡美は美琴に変装していた男を思い出す。

「ちょっと待って」

 聡美は携帯で木島警部に繋いだ。

「おー、聡美か。たった今、電話しようと思ったところだ。男の身元がわかったぞ」

「山岡 茂樹でしょ?」

「よくわかったな」

「私の推測だけど、ホームレス殺したの、山岡よ」

「俺もそう思ってたところだ」

「後、美琴さんの元カレって人は別にいた。歩道橋のマル害は山岡の弟だ」

「何ですって!?」

 聡美は脳内情報を整理した。

「つまり、ホームレスが歩道橋で弟を殺したから、山岡は復讐のためにホームレスを殺した、そう言うこと?」

「そうだろうな。山岡は変装の達人だ。お前のこと嗅ぎ回って妹のふりしてお前に弟を殺した犯人を見つけさせたんだ」

「私、ストーキングされたの? 全く気づかなかったけど」

「とにかく、そう言うことだ。被疑者死亡で幕は閉じるだろう」

「そうね。ありがとう」

 電話を切る聡美。

「美琴、ごめんね。怖かったでしょう?」

「お姉ちゃん、山岡さんが誰か殺したの? あの人はそんなことしない! いい人だよ! 山岡さんに会わせて!」

「……………………」

 聡美は無言のまま首を横に振った。

「どう言うこと?」

「山岡は轢かれて死んだわ」

「そ、そんな……!」

 聡美は携帯で救急車を呼び、美琴を東京警察病院に搬送させた。


先日、一章の犯人逮捕にイラストを掲載しました。

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