1.投身
美琴は東京警察病院に搬送されていた。
付き添いで聡美も一緒にいる。
医師の診断により、二、三日の入院が必要だと言うことだ。
「初めまして、だね」
「そうだね」
「本当にお姉ちゃんなんだよね?」
「うん」
「私、お母さんに言われるまで、姉がいるなんて思ってなかったわ」
「美琴の育ての親って、確か財閥の令嬢よね?」
美琴の育ての親、神崎 美江は、神崎財閥の令嬢である。夫はいない。
「そうだけど」
その時、窓の外を、何かが落下した。
「え?」
疑問符を浮かべる美琴。
聡美は窓の外を確認した。
「……!?」
「お姉ちゃん?」
「人が転落したみたい」
「え?」
聡美は上を見上げるが、怪しいものは見つからない。
「きゃああああ!」
下から悲鳴が聞こえた。
騒ぎを聞きつけた病院の看護師が、遺体の前までやってくる。
「大丈夫ですか?」
看護師が遺体に訊ねるが、答えるはずもなく。
「看護師さん、その方、屋上から転落されたのではないでしょうか!」
看護師が聡美の方を見上げる。
「とりあえず、ドクターの方に死亡確認をしてもらって下さい! 今から下ります!」
聡美は遺体のある地上まで急いだ。
ドクターが生存確認をしている。
「瞳孔が開いてますね」
ドクターが屋上を見上げる。
「あそこから落ちたんなら、即死か……」
「先生、死因は?」
聡美の問いに振り返るドクター。
「あなたは?」
聡美は探偵手帳を提示した。
「ああ、私立探偵の方……」
死因は──と、続けるドクター。「全身を強く打ったことによるものだと思いますね」
「看護師さん、警察を呼んでもらえますか? 私一人じゃ手に負えないです」
看護師がPHSを取り出して110番をした。
やがて、警察が到着して、捜査が始まる。
中野署の捜査員が、病院内を駆け回って情報収集をしている。
「それで、第一発見者の方は?」
「私です」
聡美が言った。
「第一発見者というか、落下する瞬間を見たんですけどね」
「落下する瞬間?」
「入院中の妹と談笑していたら、上から落ちてきたんですよ。多分、屋上じゃないかと思います」
「あんた、名前は?」
「坂上 聡美です」
「ご職業は?」
「私立探偵ですよ」
「手帳は?」
聡美は刑事に手帳を提示した。
「新宿支店の木島くんとは懇意にしていてね」
「ほう。あの警部さんと」
「高校の時はカップルでした」
「そうなんですね」
「矢作さん!」
矢作刑事という捜査員の相棒がやってくる。
「屋上に横川 敏夫さんの靴が揃えて置いてありました」
それから──と、続ける刑事。「靴の下には遺書が」
矢作刑事は遺書を確認した。
「自殺、か……」
矢作刑事は遺書を懐にしまい、「撤収!」と、解散する。




