第35話「ここが、正念場!」
さあ!ここが、正念場だよ!
わたしの光線技である勇者の息吹とユウキのサンダースパークが、空中で激突し押し合っている。
この状況で、わたしのできること……いや、わたしがやるべきことは、踏ん張って押し合いに勝つこと。
それだけだ……!
「ぐぬぬぬ!」
「うぐぐぐ!」
お互いの技の威力は、ほぼ互角。
いや、正確にはユウキの方が上だ。
いまは、拮抗しているけれど、一瞬でも気を抜けば、すぐに押し負ける。
「この勝負、ボクの勝ちだ!」
「え!?」
ユウキが不敵な笑みを浮かべて叫んだ。
ぎゅるるる――!
「勇者の息吹が、押し負ける!?」
いや、違う……!
ユウキのサンダースパークは、螺旋を描きながら勇者の息吹の中心をえぐるように進んでくる。
まるで、壁を掘削するドリルみたいだ。
「まさか……! そのまま勇者の息吹を突破するつもり……!?」
そう言えば、ユウキが今まで放ってきたサンダースパークとは、少し違うなって思ったんだ。
叫んでいた技の名前も、サンダースパークから『スパイラルサンダースパーク』に変わってた。
スパイラルって、そういうことか……!
「たとえ威力が同等であっても、技に変化をつければ、それが勝敗を分けることになる! いくぞ! これで、お終いだ!」
どぉん――!
「うっく!?」
スパイラルサンダースパークの威力が、また上がった。
勇者の息吹をえぐりながら、どんどん迫ってくる。
や、やばい……!
これ、どうしよう……!
技に変化か……思えば、わたしよりもユウキの方が技が多彩だった。
ここにきて、技の多様性で圧倒的に負けていることに気づいちゃった。
ははっ。
自分で言うのもなんだけど、いままでフィジカルに頼り過ぎてたよね。
どぉん――!
「くぅ!?」
そんなことを考えている間も、スパイラルサンダースパークが迫ってくる。
ど、どうするの……! わたし……!
「はっ!? お月さま!?」
ユウキが背にするお月さまに目が留まった。
まるで、わたしを見守ってくれているかのような優しい光を湛えるお月さま。
その優しい光に、閃いちゃった!
「いっちゃって! わたしの盾!」
わたしは、右手の盾を夜空に向かって投げた。
勇者の息吹は、口から放つ光線技だから、両手は自由だと今気づいたよ。
頭の中で盾の位置を意識しながら、盾の進行方向に翔足を使うときと同じように、見えない反発力のある壁を生み出した。
かぁん――!
よし! 盾が見えない壁に跳ね返って軌道を変えた……!
「いまさら、盾だって!? 何をするつもりだ!?」
驚くユウキに、わたしは、笑ってみせた。
「ちょっとね!」
かぁん――! かぁん――!
何度も跳ね返る盾が、夜空へと高々と昇っていく。
そして、ついにユウキよりも高い位置まで昇りつめた。
ちょうど、ユウキの背後を取るような位置関係だ。
「いまさら、こんな盾をぶつけても、ボクは揺るがないぞ!」
「でしょうねぇ!」
そんなことわかってる。
あれは……あの盾は、夜空に浮かんだお月さまだ。
太陽の光を反射して輝くお月さま。
「勇者の息吹! フルパワァァァァ!」
どぉん――!
わたしは、吐き出している勇者の息吹のパワーを上げた。
もう、限界ってところまで。
「そんなことをしても、無駄だ! 螺旋でえぐるだけさ!」
ユウキの螺旋を描くスパイラルサンダースパークが、勇者の息吹を削るように突き進んでくる。
その削られた勇者の息吹のエネルギーが、無数の帯になって飛び散った。
だけど、それは無駄じゃない。
砕けても前に進むことを止めない勇者の息吹のエネルギーは、ユウキの周囲をすり抜けるように、夜空へと昇っていく。
それを視線で追ったユウキが、目を見開いた。
「なんだ!? まるで、ボクの背後に回り込むような動きだ!?」
「それだけじゃないよ!」
わたしの生み出した盾が、いっそう青く輝きだした。
「ま、まさか!?」
ユウキの背後に浮かぶ青いお月さまのように輝く盾に、飛び散った勇者の息吹のエネルギーが、吸い込まれるように集まる。
「いまだ! フルムーンリフレクショォォォォン!」
きら~~ん――!
盾に反射した勇者の息吹のエネルギーが、ユウキに向かって突き進んだ。
「た、盾で反射させた!? そんな技を!?」
「反射技は、イサミちゃんから話に聞いてた! だから、できるって思ったんだ!」
「それを、この状況で……! う、うわ!?」
ずどぉ~~ん――!
盾で反射された勇者の息吹のエネルギーが、ユウキに直撃する。
それだけでは、倒せないだろうけれど、ユウキがダメージを受けたことでスパイラルサンダースパークの勢いが落ちた。
「いまだ! いっけ~~~~!」
わたしは、最後の力を振り絞って、勇者の息吹を吐き出した。
どがぁ~~~~ん――!
フルパワーの勇者の息吹がユウキに直撃して、青い閃光のような爆発が起きた。
すさまじい衝撃波が、城下町を揺らしている。
わたしも力を使い果たして、よろっと尻餅をついちゃった。
それと同時に、わたしの青いお月さまみたいな盾も、落っこちてきた。
わたしは、それを拾い上げて笑う。
「さすがのユウキも、あれには参ったでしょ。あはっ。あはは」
正面と背中から勇者の息吹を浴びたんだ。
あれで倒せてなければ、わたしよりも、よっぽど頑丈だ。
そう思って青い閃光の輝く夜空を見上げたら、
びゅん――!
赤い閃光が真紅の尾を引いて急降下してくるのが瞳に映った。
「うっそでしょ!?」
あれは、もしかしなくても……ユウキだ!
まだ、動けるなんて……!?
信じられない!
「ライトニングピアァァァァスッ!!」
ずどぉん――!
「いったぁ!?」
急降下してきたユウキの一撃が、わたしの左肩を突き刺した。
槍先が、わたしの左肩を貫通してる。
痛みと衝撃で、左手から力が抜けてシャルロットソードを取り落としてしまった。
「こんにゃろ!」
わたしは、ユウキを思いっ切り蹴りつけた。
ユウキの身体が、跳ね飛び左肩に突き刺さっていた槍も抜ける。
「まさか、あれを喰らってまだ動けるなんて!」
「こっちの台詞だ! くらえ! ライトニングピアァァァァス!」
また、ユウキが槍を繰り出してきた。
これを受けたら、本気でやばい!
「フルムーンバッシュ!」
咄嗟に、右手の盾を正面に構えて突き出した。
がぁん――!
激しくかち合うわたしの盾とユウキの槍。
ぱぁ~~~~ん――!
「わたしの盾が!?」
「ボクの槍が!?」
わたしたちの盾と槍が激突した衝撃で、粉々の光の粒子になって消えてしまった。
「お互い限界のようだ!」
武器を失ったユウキが飛び蹴りしてきた。
「なんのまだまだ!」
わたしは、それを頭突きで迎え撃つ。
がつん――!
どさ――!
ふたりして、ぶつかり合いに耐えきれず倒れ込む。
もう、ふらふらだ。
正直に言えば、立ち上がるのもしんどい。
ちょっとでも、気を抜けば意識が遠のきそうなくらいだ。
それぐらい、ダメージを受けてる。
きっと、ユウキも同じだ。
「まだまだ!」
「まだ、勝負はついてない!」
それでも、わたしもユウキも立ち上がった。
本当に、最後の力を振り絞って全身からオーラを噴き上げる。
身体全体が、軋むような感覚だ。
これ、かなり身体に無理してるってわかる。
「……うっ!?」
身体の一部が、光の粒子になって消えかけてる。
「……くっ!?」
ユウキの方も一緒だ。
わたしたちは、肉体を維持することもできないぐらい消耗してるってことだ。
本当に、このまま闘いを続けると危ないかもしれない。
でも、まだ勝負は終わってない。
わたしとユウキは、一瞬、視線を交わして笑みを浮かべた。
お互い、退く気がないことを確かめ合うみたいに。
そうだ! わたしたちは、最後まで闘うんだ!
肉体が消滅しようとも、決着がつくまで闘うんだ!
「シャルロットパァァァァンチ!」
「ブリッツ! フィストォォォォ!」
わたしとユウキは、渾身の一撃を撃ち込んだ。
だけど……。
「「そこまでです!」」
しゅば――!
「い、イサミちゃん!?」
「か、かあ――学園長!?」
瞬間移動するような速さで、イサミちゃんとジュリアンさんが、わたしとユウキの間に割って入ってきた。
わたしたちの渾身の一撃は、イサミちゃんとジュリアンさんに、受け止められてしまっていた。




