第34話「みんなの声援!」
「楽しい! わくわくどきどきが、止まらない……!」
「ああ! ボクも、同じだよ……!」
ずどぉ~~ん――!
わたしとユウキは、また正面からぶつかり合った。
パワーとスピードだけなら、わたしよりもユウキの方が上だ。
それは、素直にすごいと思うし羨ましいとも思えるところだよ。
でも、わたしには、持ち前の頑丈さと負けず嫌いの心がある。
「だから、わたしが勝つ! シャルロットパンチ!」
「いや、勝つのはボクだ! ライトニングピアァァァァス!」
ど~~ん――!
わたしの右拳とユウキの槍が、激しく打ち合う。
その瞬間、激しい衝撃がスパークした。
こんなに、思いっ切り闘えるなんて、生まれて初めてだよ。
わたしの胸のわくわくどきどきが、そのままエネルギーになってくれてるかのように、力が漲っていた。
それに、いままでとは湧き上がるエナジーの性質が違うって気づいた。
いまのわたしは、防御力を減らした代わりに、パワーとスピードが上がってるんだ。
これは、もしかしたらイサミちゃんの言ってたスタイル変化っていう変身技なのかもしれない。
どうして、そんなことが土壇場でやれちゃったんだろう。
ううん……!
いまは、そんなことより、もっとユウキとのブレイヴバウトを楽しもう!
「スパイラル……! サンダースパァァァァク!」
距離を取ったユウキが、わたしに向かって雷撃を放ってきた。
螺旋状に渦を巻く雷撃だ。
回避行動が、間に合わない!
ここは、防御しなきゃ……!
そのとき、わたしの視線の先に、青く輝くお月さまが見えた。
これは、わたしの頭の中に閃くイメージじゃない。
ユウキの背後に、まん丸なお月さまが浮かんでる。
ああ、そうか。
もう、夜なんだ。
ブレイヴバウトに夢中で、いまさら気づいた。
夜空の青いお月さまが……なんだか、わたしを応援してくれているような気がした。
いまなら、できるかも……!
その瞬間、わたしの中でイメージが弾けた。
ぴしゃ~~ん――! ばりばり――!
ユウキのサンダースパークが、わたしに届いた。
「なっ!? それは、盾ッ!?」
びっくりするユウキ。
実は、わたしもびっくりした。
「わ、わお! ついに、できちゃった!」
わたしの右手に、光り輝く青いお月さまのようなまん丸い結晶の盾が発現していた。
青いお月さまのような盾は、その表面でサンダースパークを受け止め四散させている。
「まさか! 雷撃は、その特性上、盾で防いでも持ち主に感電してダメージを与える貫通属性を持ってるはず! なのに、なぜ!?」
わたしの身体は、感電するどころか雷撃のダメージを受けていない。
雷撃は、盾の表面で弾けて、あたりに飛び散ってるんだ。
「お~~! すごい! さっすが、わたしのお月さま!」
ずっと、頭の中にあった青いお月さまのイメージ。
イサミちゃんと出会ったときから、ほんの少し存在を意識し始めて、何度も発現させようとしたけどダメだったイメージだ。
それが、いまようやっとイメージを形にすることができた。
「よくわかんないけど、感電しないみたい!」
「そんなテキトーな言い分が通るものか! 理屈はどうなってるんだ!」
「わかんな~~い!」
「まあ、シャルロットなら……そういうもんか!」
ユウキは、愉快そうに笑いながら突進してきた。
だぁん――!
わたしは、翔足で加速するとユウキの目前で軌道を変更、頭上を取った。
「ルナティックストライク!!」
ブレイヴ・エナジーを流し込んだ青いお月さまのような結晶の盾が巨大化する。
だぁん――!
盾を突き出し構えたまま、翔足の加速力を使って頭上からユウキに体当たりした。
「くっ!? 避けきれない!」
どぉん――!
わたしの巨大な盾が激突する瞬間、ユウキは槍を構えて防御姿勢を取っていた。
だけど、そのまま盾で押し込み、地上まで急降下する。
「くっ!? うおおおおっ!?」
ユウキも踏ん張ろうとするけれど、
だぁん――! だぁん――!
足を夜空に向けたまま、何度も翔足で加速をかけるわたしの勢いの方が上だ。
このまま押し切ってやる……!
「わお~~~~!」
「ぐぅぅぅぅ!?」
ずどぉ~~~~ん――!!
わたしは、ユウキを押し切り城下町の広場に墜落した。
だけど、これだけで終わらない。
これは、ただ盾をぶつける技じゃないんだ。
どがぁ~~~~ん――!!
結晶の盾が弾けて大爆発を起こした。
ルナティックストライクは、体当たりとエナジーの爆発力を伴う技なんだ。
なんとなく、いま思いついた。
「とぅ!」
いったん、飛び退いてユウキから距離を取る。
広場に墜落したユウキだったけど、すでに起き上がり始めていた。
「うわぁ……これは、ひどいや」
城下町の広場は、跡形もないくらい破壊されちゃってる。
「シャルロットが、やったんだろう……!」
「いやいや、その前にユウキの雷撃で破壊されちゃってたよ!」
まあ……けっきょくふたりで、破壊しちゃったってことなんだけど。
でも、闘い始めたブレイヴは多少のことじゃ止まらないんだよ。
きっと、このあと城下町を荒らしたことで叱られるだろうな。
でも、いまは、そんなことどうでも良かった。
「それに……みんなだって、盛り上がってるじゃん」
「え……?」
「気づかない? みんなの声援が聞こえてくるよ?」
そう言うわたしも、いま気づいた。
城下町全体から、わたしとユウキに声援が送られているのを。
「あんまり、無茶しちゃダメですよ~~! でも、がんばれ~~!」
あれは、イサミちゃんだ。
「負けてはいけません! 必ず、勝利するのです!」
「あれは、ボクの……かあ――いや、学園長!」
ユウキが、学園長を見て言った。
なんか、不自然だったけど。
「町なんか破壊しても良いです! 絶対、勝ちましょう! ファイトです!」
あれは、マナだ。
「ここまでやったんだから、お互い最後まで頑張りなさいよね!」
あれは、アンジェちゃん。
「はっ! なかなか、根性あるじゃねぇか! チビすけ! いまは、応援してやらぁ!」
あれは、レジーナちゃん。
「負けるな~~! ジュンちゃんの仇をとって~~! 墓前に報告するんだから~~!」
「なにが、墓前だ! 縁起でもない! だけど、頑張れ! シャルロット!」
あははっ。
レアちゃんやジュンちゃんも。
「ふたりとも、すごいぞ~~!」
「がんばれ~~!」
「負けるな~~!」
それに、同じ学生の子たちや城下町のキャストの人たちまで、みんなが応援してくれていた。
「そうだよ! これが、ブレイヴバウトの楽しみ方!」
「闘ってるブレイヴも、それを観戦してるみんなも楽しめる」
「そうだよ! それが、ブレイヴバウトの醍醐味!」
そんな誰もが楽しく、わくわくどきどきできるブレイヴバウトに憧れてたんだ。
わ~~お! なんだか、みんなの応援で、さらに力が漲ってくるようだよ。
どぉ~~ん――!
わたしもユウキも、みんなの応援に応えるように全身からオーラを噴き上げた。
「そろそろ、決着のとき……! だね!」
「その通りだ! たぁ!」
ユウキが、夜空に舞い上がった。
「最大出力で、シャルロットを打ち負かす! スパイラル……! サンダァァァァ……!」
ユウキは、槍を掲げると、その穂先に雷のエネルギーを集め始めた。
「おいおい! 正気か! それを撃ったら、本気で城下町が壊滅しちゃうぞ! ったく、誰だ! こんな危なっかしいブレイヴを育てたやつ! 親の顔が見たいもんだ!」
ブレイヴアリーナの屋上からアスカ先生の野次(?)が飛んでくる。
そしたら、ジュリアンさんがアスカ先生のことを凄まじい形相で睨んでた。
こわ~~……って、いまは、そんなこと気にしてる場合じゃない。
「スパァァァァク――!」
ほらぁ! ユウキが、撃ってきたじゃん!
回避する?
いや、それはつまんない。
そもそも、避けても余波でダメージを受けそう。
なら、盾で防ぐ?
いや、それでもあの勢いを完全には受け止められない。
わたしの盾と防御力だって、完璧じゃないんだ。
だったら……?
「そうだ! いまなら、できるかも!」
わたしは、大きく息を吸い込むようにしてブレイヴ・エナジーを高めた。
お腹や胸に、ブレイヴ・エナジーの集中を感じる。
あとは、これを……!
イサミちゃん、あなたの弟子は、あなたの必勝技で勝ってみせるよ。
だから、見ててね!
「我は往く。勝利を掴みし、その先へ……! 勇者の息吹――!」
がぽん――!
わたしのお口から、青く輝く光線が飛び出した。
勇者の息吹――それは、師匠のイサミちゃんが見せてくれた光線技。
龍が口から炎を吐くように、光線を吐き出す技なんだ。
ずっと、いつか自分でも放ってみたいと思ってたんだ……!
「まさか!? それは、イサミさんの!?」
ユウキが、驚愕する。
わたしだって、驚いてる。
いままで、一度だって放てなかった勇者の息吹が、いま使えたんだから。
ずがぁ~~~~ん――!!
勇者の息吹の光線は、地上に迫るユウキのサンダースパークと途中で激突した。
「ぐ、ぐぬぬぬぬっ!」
「う、うおおおおっ!」
あとは、パワーとパワーの押し合いだ。
どちらが、相手の必勝技の威力に勝り押し込めるかで勝負が決まる。
ここにきて、根性と根性の闘いになったんだ。
う~~ん! それって、なんだかわたしたちらしいや!
わたしの身体が、押し合いの威力で地面にめり込んでいく。
ぐぐぐ……さすが、ユウキ。
すごいパワーだ。
だけど、わたしも勝ちたいんだ。
「わ、わお~~!」
さあ、ここが正念場だよ!




