第30話「電光石火!」
ボクは、シャルロットに向かって突進した。
「うおおおおッ!!」
どれだけ、シャルロットの防御力が高くても関係ない。
ボクに、貫けない相手は、打ち倒せない相手はいないんだ……!
空中から落下してきたシャルロットが、ゆらりと起き上がる。
まだ、体勢が整っていない。
いまのうちに、全力で叩きこむ……!
「サイクロンキック!」
身体に横の捻りを加えて、風属性をまとった回し蹴りを繰り出す。
どか――!
「おう!?」
シャルロットの防御が間に合わず、横っ腹に直撃した。
まだまだ……! ここから、さらに……!
「ポールスマッシュ!」
がつん――!
槍を縦に振り下ろし、シャルロットの頭を打つ。
そして、さらに、
「バックルランチャー!」
どどどど――!
腰のベルトから火属性の火炎弾を連続発射。
ランダム射撃に近い攻撃だけど、ほぼ密着した距離なら、全弾命中だ。
「おおおおう!?」
シャルロットが、ひるんでる……!
もっと、叩きこむんだ……!
「ブリッツフィスト!」
どかん――!
左拳に、雷属性のエナジーを集中させ、シャルロットの顔面に叩きこんだ。
ブリッツフィストは、拳のような形の雷撃をそのまま投射することができる。
シャルロットは、ブリッツフィストを顔面に受けたまま吹き飛んで行った。
「まだだ! まだぁ!」
ボクは、シャルロットを追いかけながら、もう一本、槍を生み出した。
これで、両手に1本ずつだ。
「ダブル……! ガトリングピアース!!」
がががが――!
シャルロットを追い越し、その背中に2本の槍から放たれるガトリングピアースを撃ち込んだ。
ガトリングピアースの嵐のような連続攻撃は、シャルロットを風の渦で捕らえるように、動きを封じている。
「あだだだだっ!?」
シャルロットは、痛がっているけれど、言うほど効いてないのは百も承知だ。
だけど、それでもいくらでも撃ち込んでやる。
攻めて、攻めて、攻め抜く……!
それが、ボクの戦い方だ……!
「ダブルライトニングピアーース!」
両手の槍で同時にライトニングピアースを放った。
シャルロットの身体が、上空に吹き飛んで行く。
「サンダーフォール! そして、サンダァァァァスパーーク!」
ぴしゃん――! ずど~~ん――!
天空より飛来する稲妻と地上から撃ち放つ雷撃が、シャルロットを上下から挟み込んだ。
「わばばばばばッ~~~~!?」
雷撃の中で、シャルロットが声を荒げている。
まだ……! まだ、足りない……!
シャルロットの波動は、まだ弱ってはいない。
もっと、攻めるんだ……!
どれだけ、負荷がかかってもいい……!
ボクのブレイヴ・ハートよ……!
ボクの中の太陽よ……!
いまよりも、もっともっと熱く燃え上がれ……!
「うおおおおおッ――うぐッ!?」
どくん、と胸の中が跳ねた。
「――――ッ!!」
ボクの中で、何かが弾けるのを感じた。
それから、自分の声が、遠くなっていった。
真っ赤な閃光が、ボクの視界を覆い、身体が灼熱の炎に焼かれるように熱い。
ブレイヴ・ハートが、砕けてしまったんだろうか……?
もう、限界なんだろうか。
結局、今のボクには、これ以上の能力を発揮することは無理だったのか。
シャルロットを打ち倒せずに、終わるのか。
……。
……。
……。
いや、まだだ……!
ボクの力は、まだこんなもんじゃない!
シャルロットが煽ったように、ボクの本気は、この程度じゃないんだ!
灼熱の炎に焼かれながら、真っ赤な閃光の先を見据えた。
その先にいるシャルロットのことを見通した。
「――――シャルロットぉぉぉぉ!!」
視界を覆っていた真っ赤な閃光が爆ぜた。
超えるべき壁が、いま目の前に見えている。
サンダーフォールとサンダースパークに耐え抜いた無敵の壁が。
シャルロットという無敵の壁が、ボクを見下ろしている。
身に着けているものはボロボロだけど、傷らしい傷は見当たらない。
なんて、頑丈な身体なんだ。
呆れるほどに、流石だと言いたい。
「ゆ、ユウキ……いま、何をしたの?」
「え……?」
シャルロットは、困惑した表情で、ボクを見つめている。
「いま、さっき頭に角が生えたでしょ……?」
「角……?」
頭を手で触れてみるけれど、角なんて生えていない。
「一瞬だけど、生えてきたんだよ。にょきって……すぐに消えちゃったけど」
「……まさか」
――ヴィクトリア。あなたの中には、強力な因子が眠っています。一角獣と、そして龍の因子です。
それが、目覚めたっていうのか?
ああ、そうだったのか。
「あれだけ修業で身体を痛めつけたのに、因子覚醒の片鱗すら現れなかったのは、キミというトリガーが必要だったからだ」
「トリガー?」
「そう、シャルロットという無敵の壁がトリガーだったんだ」
考えてみれば、当然のことだ。
ぶつける相手がいなければ、強力な能力なんて必要ないんだ。
必要に迫られなかったから、ボクは本気になれなかったんだな。
ボクの因子は、本気になれないボクの中で眠っていたんだ。
シャルロットという無敵の壁……いや無敵の盾を前にして、本気で勝ちたいと思ったとき、ようやくボクはボクの力を発揮できるようになったんだ。
「ありがとう、シャルロット。キミは、出会ったときからボクが本気じゃないってことを見抜いていたんだな。きっと、直感でそう感じていたんだろう」
「ええっと……? わたし、なにかしちゃった?」
シャルロットにしてみれば、支離滅裂な話に聞こえているだろうね。
「詳しい話は、終わってからだ。さあ、第2ラウンドだ……!」
ブレイヴ・ハートを焚きつけ、全身にエナジーを巡らせる。
どぉん――!
全身からオーラが溢れている。
赤い稲妻が、身体中から迸っていた。
すごい……これまでにない力をボクの中に感じる。
ようやく、本気で戦えるというわけだ……!
「シャルロット……キミが、無敵の盾ならボクは最強の槍だ。ボクは、無敵を超えて最強になる」
「無敵を超えて最強に……!? なにそれ、かっこいい……!」
「いくぞ! シャルロット! ここからが、本番だ!」
どん――!
地面を蹴り上げ、
「スパイラル……! ライトニングピアーース!」
渦を巻く雷撃をまとった槍を突き出し突撃した。
ぴしゃ~~~~ん――!
「ぐぅ――!?」
ボクの突撃が、シャルロットのお腹に直撃した。
途端、ぶつかり合ったボクとシャルロットの間で、無数の赤い稲妻が弾けた。
雷鳴を轟かせながら龍のように、大空に飛び散る赤い稲妻。
その威力と衝撃波が、空間に亀裂をもたらした。
『アリーナのシステムに異常事態が発生。空間を維持できません。ブレイヴアリーナから退避してください。繰り返します、アリーナのシステムに異常事態が――』
バトルフィールドにアナウンスが響き渡る。
その直後だ。
ばきぃ~~~~ん――!
ずどぉ~~~~ん――!
空間が大きく割れ、空間消滅の余波で大爆発が起こった。




