第29話「求めるもの」
「あばばばばば!?」
わたしは、ユウキの雷撃を受けながらイサミちゃんの言葉を思い出していた。
――いいですか? シャルロット。ブレイヴには、おふぇ……おへ、おふ……オラオラ? あれ、なんでしたっけ? まあ、ともかく、ブレイヴには攻撃するパワーと防御するパワーの2つの性質が備わっています。
あのとき、イサミちゃんが何を言ってるのかよくわかんなかったけど、さっきのユウキの話でわかった。
イサミちゃんは、なんちゃらオーラのことを言ってたんだ。
そして、あのときイサミちゃんは、こうも言ってた。
――いまのシャルロットは、防御力に全振りの状態。それでは、相手を打ち負かすことはできません。負けることはなくても、勝つことができない。それは、とても残念なことです。
その言葉を聞いたとき、わたしも思った。
負けることはなくても、勝つことができないなんて、そんなのつまらないよ。
勝負は、勝つためにやるものだもん。
わたしは、勝者になりたい。
強い相手と戦って、そして打ち勝ちたい。
それができないなら、なんのためにブレイヴバウトに挑むのかわからなくなっちゃう。
そして、いまのわたしは、まさに『負けることはなくても、勝つことができない』状況にあるんだ。
シャルロットスラッシュが、2発、ユウキのお腹にヒットした。
だけど、ユウキは平気で起き上がってきた。
わたしの攻撃は大したことないって言ってた。
きっと、それは本当のことなんだ。
わたしの攻撃は、ユウキを打ち負かすほどの威力がない。
でも、ユウキも防御力に全振りしているわたしを打ち負かせるほどじゃない。
お互いに決め手を欠いた勝負。
これって、つまり泥仕合ってやつだ。
イサミちゃん……わたしは、どうしたらいいんだろう?
頭の中に、キラっと、イサミちゃんの言葉が閃いた。
――地道に性質を整える方法もありますが、スタイル変化という手段もありますね。通常形態からブレイヴ本人の性質を変化させる変身技です。
ああ、そうだ。
たしか、そんなことを言っていた気がする。
けっきょく、その変身技を習得するのは、まだ早いって教えてもらえなかったけど。
こんなことなら、イサミちゃんの足にかじりついてでも習っておくんだった。
** *
一方、ユウキも現状をどう覆すかを模索していた。
** *
ここから、どう攻める。
無闇やたらに攻撃したところで、こちらが消耗する一方だ。
さっきは、ああ言ったけど、ダメージが通らないシャルロットと、わずかにでもダメージの通るボクとでは状況に差がある。
しかも、シャルロットはまだスタミナに余裕がある。
これまで、闘ってみてわかった。
あの子は、ボクのように、大量のエナジーを消費する技を使わない。
おそらくまだ習得していないんだろう。
でも、それが幸いにもブレイヴ・ハートの消耗を抑える結果になっている。
このままだと、先にスタミナが切れるのは、ボクの方だ。
やがて、エナジーをすり減らしたボクのディフェンシブオーラは減退し、シャルロットのオフェンシブオーラに対する抵抗力も弱くなる。
そうなったら、ボクが圧倒的に不利だ。
かと言って、攻めなければ負ける。
そもそも、ボクが……このボクが、ダメージを与えられないなんて、そんなのあってはいけない。
ボクは、どんな相手だろうと貫き、打ち負かすんだ。
そうでなければ、母さんの……雷帝の娘なんて名乗れやしないんだ。
だけど、いまのままでは……。
そのとき、母さんの言葉が閃いた。
――ヴィクトリア。あなたの中には、強力な因子が眠っています。一角獣と、そして龍の因子です。かつて、あなたは、その力の一端を引き出した。もう、覚えていないでしょうが。
そうだ……因子。因子だ。
母さんの言っていた因子が、いま目覚めれば、戦況を変えられる。
ボクが、ひとり修業をしていたのも眠った因子を目覚めさせるためだった。
ほんのかすかに残った朧げな記憶にある。
母さんと一緒に行った古代遺跡で危機に陥ったとき、ボクの中で何かが目覚めた。
そのときのボクは、無我夢中で戦い巨大な機械仕掛けの守護者を圧倒した。
あれ以来、どうやっても目覚めることのなかった因子が覚醒すれば、きっと、あのシャルロットの防御力も突破できる。
いや……!
ボクは、首を振った。
そんな、奇跡のようなものに頼ってはダメだ。
ボクとしたことが、なんて後ろ向きな考えだったんだ。
いまある自分の能力で、事態を変えるんだ。
ブレイヴ・ハートが、破裂しても良い……!
全力全霊で、ボクの力をシャルロットにぶつけるだけだ……!
どさ――!
サンダースパークを受けたシャルロットが、地面に落ちて来た。
「わぉ……びりっときたぁ」
相変わらず憎らしいほど効いてない。
だから、なんだ。
圧倒するだけだ。
「いくぞ! シャルロット!」
どん――!
ボクは、地面を蹴りつけシャルロットに突進した。




