第28話「困惑するユウキ」
なんなんだ、この子は。
ボクの技が、なにひとつ効いていない。
ガトリングピアースもライトニングピアースも、サンダースパークも。
すべて、直撃したはずなのに、まったく傷ひとつ与えられない。
しかも、どっしりとしたカピバラさんの姿をイメージすることで、あらゆる技を防御してしまう、わけのわからない技を披露してきた。
い、いや……それを技と呼んで良いのかわからないけど。
「ちなみに、カピバラさんの構えはね。わたしでも、ちゃんとした技として成立してるのか疑問なんだ」
シャルロットは、そう言って、にかっと笑ってみせた。
「ほんとに、なんなんだ! キミは!」
ボクは、持っていた槍を一時的に消失させ、両手を自由にした。
それから、雷属性のエナジーを両手に集中させる。
「これなら、どうだ! サンダージャベリン!」
雷属性のエナジーで構築された稲妻の短い槍を生み出し、シャルロットに向けて投げつけた。
「うわぉ! まだ、技があるんだ!」
当然、シャルロットは翔足で軽々とサンダージャベリンを避けた。
「まだまだぁ!」
どどどど――!
サンダージャベリンを連続して投げつけた。
この技は、サンダースパークほどの威力はないけど、片手で連射が可能な速射性に長けた技だ。
シャルロットが、避けきれないほどの飽和攻撃で圧倒してやる……!
「おっとっと!? なんて、数なのさ!?」
驚いている割に、シャルロットは、サンダージャベリンの連続投擲を正面から受けながら突っ込んでくる。
「ば、化け物め!」
「化け物!? なんて、ひどい言い方!」
「ご、ごめん。化け物は言い過ぎたよ。でも、こっちの攻撃が、まったく効かないような相手だ。それくらい言われても、仕方ないと思ってほしいんだけど」
ボクは、そのままサンダージャベリンの連続投擲を止めなかった。
シャルロットは、大空を翔けながら、ぐんぐんとボクとの距離を縮めてくる。
その身に、サンダージャベリンを受けつつ、それでも真っ直ぐに突っ込んでくる。
失策だ。
速射性はあっても、威力に乏しい技では、足止めにもならない。
どこかで、ヒットバックや硬直を生み出せればと思ったけど、そんなものが通じる相手じゃなかった。
「おりゃ~~~~!」
シャルロットが、サンダージャベリンの攻撃を突破し、目の前に突進してきた。
両手で握りしめたシャルロットソードとかいう木の棒を振りかぶってる。
「まずい!」
両手に生み出したサンダージャベリンを身体の前で交差させ、防御姿勢を取る。
「シャルロットスラッシュ!」
ずだぁん――!
「ぐあ!?」
お腹に走る痛み。
サンダージャベリンはへし折られ、シャルロットの一撃が、ボクのお腹にヒットした。
その威力に、吹き飛ぶ身体を飛翔能力で姿勢制御し、ブレーキをかける。
「や、やったな!」
白銀の槍を生み出して身構える。
だぁん――! だぁん――!
シャルロットが、翔足を巧みに使いながら接近してくる。
よ、読めない。
お腹に一撃を喰らったせいで、動揺しているのか。
シャルロットの動きが、読めない……!
だぁん――! だぁん――!
ただの飛行なら、軌道を読みやすい。
だけど、翔足のせいで軌道に複雑さが増している。
なんて、戦いにくい相手なんだ。
だぁん――!
「後ろ!?」
翔足の軌道から背後を取られる気がした。
槍を横薙ぎに振るい、シャルロットの動きに反応する。
だが……。
だぁん――!
「こっちだよ!」
「なっ!? 上ッ!?」
シャルロットの姿は、ボクの背後ではなく頭上に現れた。
「シャルロットキ~~~~ック!」
どか――!
「うわ!?」
シャルロットのキックが、ボクの右肩にヒットした。
「そして、シャルロットスラッシュ!」
体勢が崩れたところに、シャルロットの剣閃が振り下ろされる。
ずだぁん――!
「ぐっ!?」
また、お腹に痛みが走った。
防御する間もなく、シャルロットの攻撃がクリーンヒットした。
ボクの身体が、攻撃の威力に吹き飛ばされている。
どぉ~~~~ん――!
「う、うぐ……!」
荒野の地面に、背中から叩きつけられた。
つ、強い……!
シャルロットは、強い……!
ボクのように属性の能力を扱うわけでもないのに。
勇装器を生み出す能力も、まだ十分じゃないし、技と呼べるのは翔足くらいだ。
それなのに、ただフィジカルと頑丈さだけで、あんなに強いなんて。
……でも、完璧な強さではない。
「やぁ、びっくりした」
ボクは、お腹をさすりながら起き上がった。
シャルロットが、すたっと地面に降下してくる。
「わぉ! ユウキもタフだね! わたしの攻撃が、クリーンヒットしたのにさ!」
「キミほど、タフじゃないよ。いまの攻撃も、ちゃんとダメージを受けた。だけどね」
「だけど?」
「この程度の攻撃なんかじゃボクは倒せないよ」
「ムッ! それって、煽ってる?」
「煽ってないよ。ただ、事実を言っただけさ。キミは、動きも俊敏で異常な頑丈さがある。それだけで、十分脅威的だ。でも、それだけなんだ」
「やっぱり、煽ってる!」
「煽りに聞こえるなら、そうかもね。キミの攻撃には、威力がない」
「あんなに、すぽ~~んって吹き飛んでおいて、それはないよ!」
「たしかに、命中した相手を吹き飛ばすだけのパワーはある。だけど、それはあくまでも筋力のような素のパワーでしかない。それじゃあ、効果的なダメージは与えられない。ブレイヴにダメージを与えるには、相手のディフェンシブオーラを突破するだけのオフェンシブオーラが必要なんだ」
シャルロットは、ぽかんとした。
「でゅふふおーら?」
「…………違う、ディフェンシブオーラとオフェンシブオーラ。キミの師匠から聞いたことないの?」
「あるようなないような……?」
「ちゃんと師事してる? まあ、簡単に言えばブレイヴの持つ防御力と攻撃力だよ。キミは、ディフェンシブオーラの反応が強い。だけど、逆にオフェンシブオーラが弱いんだ。戦っていて、ようやく気が付いた」
「そういえば、イサミちゃんも似たようなこと言ってたなぁ。いまのわたしは、防御力に全振りだって」
「ちゃんと、師匠はわかってるんじゃないか。ここで、ボクがあれこれ教える義理もないし義務もないから、詳しくは師匠から聞けばいい。とにかく、いまのキミでは、ボクに負けることはなくても、勝つことはできないってことさ」
「やってみなきゃわかんないじゃん!」
だぁん――!
シャルロットが、突進してきた。
ボクは、振り下ろされる木の棒を槍の柄で受け止めた。
パワーに押され、足が地面にめり込んでいく。
「それは、ただの馬鹿力だ。たとえ、岩は砕けてもボクは砕けない!」
「それでも、砕いちゃうもん!」
オリジンでもフォージでも、ディフェンシブオーラという身を護る力がある。
ディフェンシブオーラは、相手の攻撃の威力を減衰させダメージを減少させる。
シャルロットの場合、そのディフェンシブオーラが強力過ぎて、ほとんど攻撃を無力化しているんだ。
逆に、攻撃力となるオフェンシブオーラは、さほど強くない。
ボクのディフェンシブオーラの防御力を完全に突破できないから、はっきり言えば、さっきの攻撃もダメージはあったけど、決定打には至らなかった。
シャルロットの攻撃力では、ボクを一気に倒すことは不可能。
それが、わかった。
「てや!」
がん――!
「おわ!?」
シャルロットに、足払いをかけて体勢を崩した。
そこから、槍で腹を打ち、上空に打ち上げた。
「サンダーースパーーーークッ!」
ずばぁ~~ん――!
防御姿勢を取れないままのシャルロットに、雷撃が直撃した。
「あばばばばばば!?」
シャルロットが、感電し奇妙な悲鳴を上げる。
あれでも、効いてないっていうんだから、悔しいよな。
どうする……このままでは、負けはしないけれど、勝つこともできない。
何か、戦況を変える一手が……必要だ!




