第25話「赤い稲妻の名前は、ユウキ!」
ジュンちゃんとのブレイヴバウトだったはずなのに、バトルフィールドに現れたのは、赤い稲妻のイケメン美少女だった。
どうして……?
そんな疑問も吹き飛んでしまうくらい、わたしは、わくわくどきどきしちゃってた。
「え~~!? なにあれ!? ジュンちゃんが、めっちゃイメチェンしてるよぉ!?」
観客席の方から、叫び声が聞こえてきた。
あれは、レアちゃんの声だ。
いや、あれは……ジュンちゃんじゃないよ。
声の方を向くと、レアちゃんが、愕然としていた。
その隣に、困惑した表情のマナもいるけど、その視線は赤い稲妻のイケメンではなく、レアちゃんに向けられてる。
「うそぉ……あたしに一言の相談もなく、あんなに大胆にイメチェンしちゃうなんて……! 髪なんて金髪になっちゃってるじゃん……! ジュンちゃん、いったいどういうコンセプトなのそれぇ……!」
「あ、あの……レアさん。それ、本気でおっしゃってるんですか?」
マナが、口元を引くつかせてる。
レアちゃんの言ってることが、信じられないって感じだ。
「あたしは、いつだって本気だよ!?」
「やばいですね。あれは、ジュンさんではありませんよ。どう見ても、別人です」
「えっ!? そうなの!?」
観客席から身を乗り出して赤い稲妻のイケメンを見つめるレアちゃん。
「ほ、ほんとだ……! 別人だ! 偽物だ! 偽ジュンちゃんだ……!」
ようやく、ジュンちゃんじゃないってわかってもらえたみたい。
「やけに、賑やかなギャラリーがいるみたいだな」
赤い稲妻のイケメンが、電光石火の勢いで近づいてきて言った。
「わたしの友だちだよ。それより、なんであなたが、ここにいるの? ジュンちゃんは、どうしちゃったの?」
「煽られたままじゃ黙っていられないからね。キミと決着をつけにきたんだ。本来の対戦相手の子には、今回のブレイヴバウトを譲ってもらったのさ」
ジュンちゃんが、譲ってくれた?
ちょっと、引っかかるなぁ。
でも、いまここで、それを追及しても仕方ない。
「だから、煽ってはいないんだけどなぁ。そう思わせたのなら、わたしが悪いんだけどさ。でも、そのおかげで、こうして会いに来てくれたのなら、それはそれで良かったかもね」
「ただ、会いにきたわけじゃない。言っただろ、決着をつけにきたって」
「わかってるよ。わたしも、決着をつけたかった。そして、あなたのことをもっと知りたい。不思議なことを言うかもしれないけれど、わたしは、ずっと前からあなたのことを知ってるような気がするんだ」
赤い稲妻のイケメンが、目を大きく見開いた。
「き、キミも、そう思うの?」
「もしかして、あなたも?」
「……うん。不思議だけど、ボクもキミと初めて会った気がしなかった。ずっと前から、知っているような……そんな感覚がある」
「すごいね! ふたりとも、同じように感じてるんだ! もしかして、これって絵本の物語に出てくるような運命の出会いってやつじゃない!」
赤い稲妻のイケメンの顔が、真っ赤になった。
「う、運命の出会い……! や、やっぱり……!」
だけど、すぐに取り繕うように顔をキリっとさせた。
「ほ、本当に、運命の出会いなのか……運命の相手なのか、それはブレイヴバウトが教えてくれる。そうだろう?」
「ふふっ。そうだね。もっと、お互いのことを知ろうよ。ブレイヴバウトでさ」
わたしは、腰のベルトからシャルロットソードを引き抜いた。
そして、右手首のリード・ブレスレットを掲げる。
「ブレイヴチェ~~ンジ!」
わたしの身体が、光に包まれる。
ぱぁ~~んと、光が弾けたときには、わたしは勇者の姿に変身していた。
青いシャツと短パン姿に、折り紙で作った王冠を被り、お母さんのスカーフをマントに見立て、お鍋の蓋を勇者の盾だと思いながら構え、ビー玉を接着したよれよれのベルトを腰に巻き、よそ行きのブーツにニワトリの抜けた羽を飾りにつけたイメージが、光り輝くブレイヴ・エナジーの粒子で編みこまれ、わたしのコスチュームになっている。
「な、なに……それ?」
赤い稲妻のイケメンが、ぽかんとしてる。
わ、わかってるよぉ。
この姿が、みょうちくりんだって言うんでしょ。
「こ、これはわたしの変身した姿! まだ、イメージがはっきりしてないから、いまは、こんなおままごとみたいな姿になっちゃってるだけ!」
「そ、そう……面白いね。ぷっ」
赤い稲妻のイケメンが、笑いをこらえてる。
ぐぬぬ……!
「あ、あなたはッ! あなたのコスチュームは、どんなの! わたしのコスチュームを笑うくらいだから、さぞ豪華絢爛でカッコイイんだろうね!」
「ボクのコスチューム? 何を言ってるんだ。ボクは、ずっと変身したままだよ」
「え?」
「いま、キミが見ているボクの姿が、変身後のボクなのさ」
「そのフードつきの黒いパーカーが、コスチュームってこと?」
「そういうことだ。キミが、コスチュームと呼んでいるのは勇装器だろう。ブレイヴ・エナジーを編み込み創り出すオリジン・ブレイヴ固有の装備だ。ボクは、それを常に発現した状態を保ってるんだ。もちろん、身体に負荷はかかる。ブレイヴ・エナジーを消費し続けてるわけだからね」
ブレイヴ・エナジーは、わたしたちの魂とも言えるブレイヴ・ハートから生み出されるエネルギーのこと。
ブレイヴは、ブレイヴ・エナジーを燃料にして、いろんな能力を発現させるんだ。
当然だけど、ブレイヴ・エナジーを消費し続ければ、ブレイヴ・ハートは働き過ぎで疲れちゃう。
「なんで、そんなことを?」
「重りを積んで日常的に筋トレをしていると思えば良いよ。ブレイヴ・エナジーを常に消費することで負荷をかけ、ブレイヴ・ハートを鍛えてるのさ」
「なるほどぉ。そんな、鍛え方があるんだ。今度、イサミちゃんにも聞いてみよう」
「……イサミちゃん?」
赤い稲妻のイケメンの眉がぴくりと動いた。
「そう! イサミちゃん! わたしの師匠なんだ! 知ってるかな? イサジュリ世代に活躍したスーパーブレイヴのイサミちゃんだよ!」
途端、赤い稲妻のイケメンの顔色が変わった。
それまでよりも、より険しい顔つきになった。
「それは、ありえない。スーパーブレイヴのイサミさんは、もう存在しないはずだ」
「え!? いやいや、イサミちゃんは、存在するよ!? わたしの師匠だもん!」
「それは、間違いだ。きっと、イサミさんを騙る別人に決まってる。なぜなら、ボクの母さんが、もうイサミさんは存在しないと言っていたからね」
「あなたのお母さん……?」
「おっと、余計な話をし過ぎたな。これ以上の会話は必要ないよ。あとは、ブレイヴバウトで語り合えば良い。キミが、本当にイサミさんの弟子だと言うのなら、ブレイヴバウトで証明してみせるんだね」
「おう! 望むところだ!」
「ふっ。それじゃあ、やろうか。このバトルフィールドの設定は、フリーランダムモードに書き換えてある。いつでも、お互いのタイミングでブレイヴバウトを始めていい。時間制限もない。どこまでも、とことんやれるよ」
ばりばり――!
赤い稲妻のイケメンの右手に、赤いスパークをともないながら白銀の槍が現れた。
「正直、信じられなかった。あのとき、反射的にキミにライトニングピアースを繰り出したとき、この自慢の槍の穂先が欠けてしまったんだ。そんなこと、いままでになかった」
「身体の頑丈さには、自信があるからね」
「そのようだ……! だが、次は貫く……!」
「やれるもんなら!」
わたしたちは、お互いにオーラを全身から噴き上げながら向かい合った。
「あっ!」
「んっ?」
「その前に、あなたの名前を教えて!」
「え!?」
「だって、ずっと赤い稲妻のイケメン美少女のままじゃね」
「……なんだよ、その恥ずかしい呼び名」
「それに、ブレイヴバウトする相手の名前は、知っておきたいよ。わたしの名前は、もう名乗ったよね? 覚えてる? シャルロットだよ」
「覚えてるよ。忘れるもんか」
「じゃあ、あなたの名前も教えてよ」
そしたら、赤い稲妻のイケメンは、「う~~ん」と悩み始めた。
「どうしたの? 名前がないの?」
「そんなわけない! ただ……」
「ただ……?」
ややあって、赤い稲妻のイケメンは、ぽつりと言った。
「ユウキ」
「ゆうき?」
「ああ、ボクの名前はユウキだ。ユウキ……それでいい」
すこし、抵抗のある言い方だったけど、ついに名前を教えてくれた。
「ユウキ! ユウキか! いいね! 勇者っぽくて、ステキ!」
「そうかい。さあ、名前も教えたんだ。そろそろ、始めようか」
「うん! 始めよう! ユウキとわたしの初めてのブレイヴバウトを!」
「ああ!」
お互いに、笑い合って向き合った。
さあ、ユウキとのブレイヴバウトだ。
どんな、わくわくどきどきの展開が待ってるんだろう。




