第24話「意外な再会!?」
「シャルロット! ちょっと、あんた聞いてるの!?」
わたしを呼ぶアンジェちゃんの声に、ハッとした。
「さっきから、きょろきょろしたりボ~~っとしたり、どうしたってのよ! こっちは、ブレイヴアリーナの使い方の説明してるのよ! ちゃんと、聞きなさい!」
アンジェちゃんが、目を逆三角形にして怒ってる。
「ごめん! なんか、気配がチラチラしてて気になっちゃって!」
「気配?」
「そう、赤い稲妻のような、そうでないような。なんか、モヤがかかった感じがして、はっきりしないんだけど、赤い稲妻っぽい気配を感じるんだよねぇ」
「なに、わけのわかんないことを言ってるのよ。それより、説明は聞いてたんでしょうね?」
「ええと、わたしどこまで説明してもらったっけ……?」
「呆れた……! こっちは、親切で説明してやってんのに! ちゃんと、聞くつもりがないなら、もういいわ! ちょっと、マナ! あとは、あんたが説明してやんなさい! あんたなら、ブレイヴアリーナの使い方もわかるでしょ!」
アンジェちゃんは、観客席の隅っこで動画を視ていたマナを呼びつけると、ぷりぷりしながら、どこかへ行っちゃった。
「あちゃ~~。アンジェちゃん、せっかく説明してくれたのに悪いことをしちゃったな」
あとで、ちゃんと謝らなくっちゃ。
「ブレイヴアリーナの使い方ですね。ちゃんと、聞いてくださいよ?」
「わ、わかってるよ、マナ」
「まあ、そう難しいことはありません。ブレイヴアリーナでは、施設と連携するブレイヴコンシェルジュというアプリを通じて、対戦のマッチングなども簡単にできます。リード・ブレスレットにも、そのアプリがプリインストールされています」
「ほぅほぅ」
リード・ブレスレットのコンソールを開いてアプリを起動してみた。
「あっ。マッチング画面が出てるよ。わたしとジュンちゃんの名前が書いてある」
「そうですね。本来は、ブレイヴアリーナにいる誰かを指定したり対戦希望のコンタクトマークを設定するのですが、今回は、すでに先ほどの会話によりジュンさんからの対戦希望を受諾したとみなされマッチングが完了しています」
「へぇ~~、そうなんだ。会話からマッチングが完了するなんて簡単だね」
「さらに、本来なら借りるブレイヴアリーナの空間番号なども設定する必要があるのですが、すでにジュンさんが1番空間を押さえているので、これもシャルロットから操作する必要はありません」
「なんだ、わたし何もしなくて良いんじゃん」
「今回は、そうです。ですが、そのうちシャルロットの方から対戦相手を募ったりバトルフィールドを設定したりすることもあるでしょう。アンジェリカさんは、きっとそういうときに備えて親切心で詳しく教えようとしてくれていたのでしょう。それを、無下にするとは」
「うっ!」
「いやぁ、ひとの親切って報われないものですね」
「ううっ!」
ほんと、アンジェちゃんには、悪いことしたよ。
「あとで、一緒に謝りに行ってくれる?」
「ダメです。自分のお尻は、自分で拭いてください」
「そ、そんなぁ!」
わたしが、泣きべそをかいたとき、
「う~~ん……なんで、あたしには話してくれないのにモグリちゃんには話したんだろう。な~~んか、ムラムラするなぁ」
レアちゃんが、右に左に首を傾げながら悩まし気に歩いてきた。
「あっ、レアちゃん! どうかしたの!」
「いやぁ、なんてゆ~~か……なんてゆ~~んだろ~~ね」
「だ、だいじょうぶ?」
「まあ、あんまり気にしちゃいけないんだろうねぇ」
「な、なにが?」
どうしよう。
レアちゃんとの会話が、噛み合わない。
「あの……レアさん、ジュンさんのご用意は整いましたでしょうか?」
マナが、訊ねた。
「え? あ、うん。整ってると思うよ。あたしの心は、乱れたままだけど」
「なにかあったの?」
「よぉし! ごちゃごちゃ考えても仕方ない! いまは、ジュンちゃんの挑戦を応援しよう! おお~~~~!」
レアちゃんは、ガッツポーズすると、そのままフラフラと歩いて行ってしまった。
「…………だいじょうぶかな。様子がおかしかったけど」
「まあ、気にすることでもないでしょう。それより、相手の用意はできているようですね。シャルロットは、アプリからアセンブリーチェンバーに移動するという項目をタッチするか、頭の中で、念じてください」
「あせんぶりーちぇんばー?」
「ブレイヴバウトに出場するブレイヴが待機する部屋のことです。もともと、フォージ・ブレイヴが自分の装着するアーキ・ヴェセルナーの選択や調整をするメンテナンスルームのことを指すのですが、まあ、単純に控え室や待機室と覚えて良いと思います。それでも、アプリが認識してくれるので問題ありません」
「そうなんだ。それじゃあ、せっかくだし頭の中で念じてみよう。わたしを控え室に連れてって……!」
そう念じると、目の前に光の枠が現れた。
ひとが、ひとりすっぽり通れるくらいの光の枠だ。
「これ! さっき、ジュンちゃんが入っていったやつだ!」
「はい。それが、控え室の空間との出入り口になるわけです」
「なるほど! よし! じゃあ、行ってくるね!」
「ええ、勝利は確定してますが、応援はさせてもらいますよ」
「勝利が確定って……ブレイヴバウトは終わってみないとわかんないもんだよ?」
「じゃあ、聞きますが、負ける気はしますか?」
「しない!」
「ですよね。では、そういうことです。では、いってらっしゃいませ」
わたしは、マナに背中を押されて光の枠の中に入った。
す~~っと、何もしてないのに体が前に押されるような感覚だ。
そのまま光のトンネルをくぐると、その先は、ごちゃごちゃとした機材の置かれた部屋になっていた。
「ここが、あせ……あせなんとかブリブリ部屋だっけ? ええと、控え室だよね」
あたりには、誰もいない。
たぶん、ここはわたしだけの控え室になってるんだ。
『対戦者の準備が完了しました。ブレイヴバウトを開始する場合は、右奥のゲートにタッチしてください』
控え室にアナウンスが響いた。
「右奥のゲート? あっ、あれだ」
チカチカと光る液晶パネルなんかがついた扉があった。
けっこう、大きな扉だ。
スカイシップとかでも通れそうなくらい。
これが、アナウンスで言ってたゲートに違いない。
わたしが、そっと手を触れると、
『マッチングコンタクト完了――これより、ゲートを開放しバトルフィールドへの入場が可能となります』
と、またアナウンスがあった。
ごぅんごぅん――!
音を立ててゲートが開いた。
その先は、真っ白な光が広がっている。
「この中に、飛び込めばいいわけだね。えい!」
わたしは、光の中に飛び込んだ。
一瞬、まばゆい光が視界を覆った。
だけど、すぐに気づいた。
いつの間にか、目の前には乾いた風の吹く荒野と青空が広がっている。
そこがバトルフィールドなんだって、あっという間に理解した。
「ここが、ブレイヴバウトの舞台なんだ……!」
感激だった。
ずっと、立ちたいと思っていた舞台の上に、わたしは立っている。
「って、言ってもまだブレイヴデビューしてないから、本当のブレイヴバウトの舞台とは、ちょっと違うんだろうけどね」
それでも、こうしてブレイヴバウトができるってだけで感激だ。
「にしても、ジュンちゃんは、まだかな?」
バトルフィールドには、わたししかいない。
向かいに、ゲートらしき光が見えるけど、人影はなかった。
「まだ、準備中なのかな?」
そう思っていると、相手側のゲートから、凄まじい波動が噴き出してきた。
ばりばりばり――!
「う、うそ……!?」
真っ赤にスパークする閃光が、ゲートからあふれだした。
ずだぁん――!
わたしは、自分の目を疑った。
「あ、赤い稲妻――!?」
ゲートから飛び出してきたのは、わたしがずっと気になっていた、赤い稲妻のイケメン美少女だった。
あのときと同じように、フードのついた黒いノースリーブのパーカーを着て、フードを深くかぶってる。
全身から赤い稲妻を放ちながら地面に降り立つ、その姿に、わたしの胸が、どっくんどっくんと高鳴った。
どうして、ここに赤い稲妻が……?
そんな疑問を吹き飛ばすくらい、わくわくどきどきしてきた。




