第22話「ジュンちゃんからの挑戦状!」
ブレイヴバウトを終えたジュンちゃんとレアちゃんは、バトルフィールドから光に包まれるようにして消えた。
かと思ったら、しばらくすると、光の枠のようなものが観客席に現れて、ふたりが、そこから出てきた。
「おわぁ!? どこから、出てきたの!?」
いきなり、ふたりが現れるものだから、わたしはびっくり。
「なんで、そんなに驚いてるの?」
きょとんとするレアちゃん。
「この子、こういう設備のあるブレイヴアリーナは初めてなんですって」
と、アンジェちゃん。
「そうなんだぁ? バトルフィールドや控え室、観客席の移動にポータルテレポートを使うのって、どこにでもあるものだと思ってた」
「…………そのどこにでもあるような設備も、わたしの故郷のフォルティミヤにはなかったの」
いや、そんなことよりも。
「ふたりとも、すごかったよ! わたし、わくわくどきどきした!」
わたしが、感想を伝えると、
「ありがとう! まあ、あたしは降参しちゃったんだけどね!」
レアちゃんは、にっかりと笑い、
「……あんなの大したことない。でも、まあ……ありがとう」
ジュンちゃんは、照れ臭そうに言った。
「そういえば、わたしたちって、まだちゃんと自己紹介してなかったよね。レアちゃんのことは、ジュンちゃんが名前を呼んでるのを聞いて名前だけは知ってるけれど」
短い黒髪で金色の瞳のクールな雰囲気のジュンちゃん。
オレンジ色の長い髪で赤い瞳の明るい雰囲気のレアちゃん。
ふたりとも、名前は知ってるけど、ちゃんと自己紹介をしたことはなかった。
「そうそう! なんか、もう友だちって感じだけど自己紹介はまだだったね。あたしは、レア! ジュンちゃんと同じルミナス星域の出身なの!」
レアちゃんは、人懐っこい笑顔を浮かべた。
親しみやすそうで、ちゃんと話すのは初めてなのに気楽に話ができる雰囲気だ。
「オレは、ジュン。よろしく」
ジュンちゃんは、短く自己紹介をした。
言葉数も少ないし、表情もあまり変わらない。
全身から感情があふれてるようなレアちゃんの雰囲気と対照的だ。
「ああ、そうだ。ひとつ訂正しておくと、オレはルミナス星域の出身じゃない。いまは、その星域に住んでるってだけだ。レアの言うことはテキトーだから注意してくれ」
「あれ!? ジュンちゃんって、ルミナス星域の出身じゃないの!?」
「お前……初めて会ったときに、別の星域から引っ越して来たって教えただろ」
「あれ……? そうだっけ? 赤ちゃんの頃から一緒だった気がしてたから、てっきり同じ星域の出身だと思ってたよ」
「赤ちゃんの頃からって……オレがレアと出会ったのは、2年くらい前だぞ」
「あれ~~? そうだっけ? あれれ~~?」
レアちゃんは、首を傾げながらきょとんとしてる。
「ふたりとも、なんだかんだで仲が良いんだね!」
「いまのやり取りを見てて、どうしてそう思うんだよ」
ジュンちゃんが、ムスっと視線をそらした。
ちょっぴり、照れてる感じだ。
「私は、アンジェリカよ。フェザーリア星域から来たわ。まあ、よろしく頼むわね」
アンジェちゃんが自己紹介すると、ジュンちゃんの眉がぴくっと動いた。
「フェザーリアのアンジェリカ……? まさか……?」
「かもしれないし、そうじゃないかもしれない。別に、どうだっていいでしょ?」
アンジェちゃんが、小さく笑う。
「まあ、そうだな」
ジュンちゃんは、何かを察したようだったのに、それ以上、何も言わなかった。
「え? なになに? アンジェーリカかどったの?」
と、レアちゃん。
「なんでもない。気にするな」
「ええ、なんでもないわ。っていうか、その名前の呼び方、なんなのよ。なんで、間延びしてんの」
「ちょっと、呼び方に変化をつけてみました!」
「勝手に変化をつけないでよね。まあ、別に良いけど」
「呼び方と言えば、そっちのあんたは、いつの間にかオレの名前を『ちゃん付け』で呼んでるよな」
ジュンちゃんが、チラっとわたしを見た。
「ああ、それね! マナの前で、名前を教えてくれたとき、レアちゃんが去り際に『ジュンちゃん』って呼んでたから、そのままわたしもジュンちゃんって呼ぶことにしたんだ。もしかして、嫌だった?」
「いや、別に……」
「そっか、なら良かった! んで、わたしはシャルロット! フォルティミヤって星から来たんだ! 仲良くしてね!」
「やはり、そうか」
ジュンちゃんが、ジッとわたしの顔を見つめてる。
「ん? どうしたの? わたしの顔になにかついてる?」
「いや……フォルティミヤのちゃんぽんって美味いよな」
「うん! めっちゃ、美味しいよね! って、え!? ジュンちゃんって、フォルティミヤのこと知ってるの!?」
「まあ、ちょっとな。それより、あっちの子は? あの子も、あんたの友だちだろ」
「え? ああ、マナのことだね。ちょっと、マナ! みんなで自己紹介してるんだから、こっちおいでよ!」
観客席の椅子に座ってケータイ端末で動画を視ていたマナ。
わたしが、声をかけると顔を上げ、
「ああ、はい。いま、行きます」
と、重そうな腰を上げて、ぽてぽてと歩いてきた。
「すみません。鼻に詰めたピーナッツが、どこまで飛ぶのか気になって動画に夢中になってしまっていました」
「……それ、何が面白いの?」
目の前で、めっちゃ面白いブレイヴバウトが繰り広げられてたっていうのに、そっちのけで何を視てるんだか。
「待って! あたしは、気になるよ! どれだけ、飛ばせるの!?」
れ、レアちゃん……まさか、食いついてくるなんて。
「チャレンジ記録では、1800キロメートルですね。もっとも、山に衝突したため記録としては不完全です。それがなければ、あと200キロは飛んだはずです」
「すっご~~! あたしも、その動画を後で見よっと!」
「チャンネルのアドレスをコミュニケーションアプリの方で送っておきますね」
「ありがと~~! 助かるよ!」
がばっと、マナに抱き着くレアちゃん。
なんか、レアちゃんって、ほんと明るくて気さくだなぁ。
あの気難しいマナが、普通に接してるよ。
「とりあえず、自分の自己紹介ですね。マナカと申します。マナで構いません。オリジン・ブレイヴとブレイヴバウトのファンで、最推しはシャルロットです。短い間でしょうし、絡みも少ないと思いますが、まあよろしく」
「へえ~~! 友だちのことが最推しなんだ! いいね~~! それ! あたしも、ジュンちゃんのこと、推しまくろうっと!」
「勝手に推すな。レアは、ただ茶化したいだけだろうが」
ちっ! と、舌打ちをするジュンちゃん。
「ところで、あんた……ええと、シャルロットって呼んでもいいか」
「うん!」
「シャルロットも、ここに来たってことは、ブレイヴバウトをしにきたのか?」
「もちろん!」
「だろうな。そうだと思ったよ」
ジュンちゃんは、キリっとした顔で、
「だったら、オレとブレイヴバウトしないか?」
と、わたしの目を見据えて言った。
その視線から、闘志がありありと見て取れた。
「もちろん! やろう!」
「そうこなくちゃな」
ジュンちゃんが、ニッと笑う。
「でも、ジュンちゃん。もう、2戦目だよ。だいじょうぶそ?」
と、レアちゃん。
「問題ない。さっきの対戦相手が、大したことなかったからな」
「ひどい! それって、あたしのことじゃん!」
むきぃ~~! っと、両手を振り上げるレアちゃん。
「冗談だ。まあ、大して消耗してないのは事実だけど」
「でも、エナジーライフルはバラバラになっちゃったよ。ジュンちゃんのもあたしのも、予備もないしさ」
「あんな当たりもしないライフルなんていらないだろ。それに……たとえ、当たったとしても、オリジン・ブレイヴのそいつにダメージなんて入らないだろうさ。そうだろ?」
ジュンちゃんが、わたしのことをジッと見つめる。
「うん。もし、さっきふたりが使ってたエナジーライフルが直撃しても、わたしは平気だと思う。観戦してて、そう思った」
エナジーライフルの弾丸から感じる波動は、大したことなかった。
あれなら、跳ねた小石がぶつかるのと、そう変わらないと思う。
「だとさ、だからエナジーソードでやり合う他にないんだ。あれなら、いくらか出力をコントロールできる。ライフルよりも、まだ望みがあるってことさ」
「バックパックは? 定格超えの出力で、壊れちゃったんでしょ?」
と、レアちゃん。
定格超え……?
そう言えば、さっきの戦いで、そんな言葉を聞いたような。
どういう意味なんだろう?
「ねえ、定格超えって?」
「ああ、あんたはオリジンだからアーキ・ヴェセルナーのことは詳しくないんだな。定格超えっていうのは、アーキ・ヴェセルナーが出せる出力の定格を一時的に超えて稼働させることを言うんだ」
ジュンちゃんの説明の途中に、
「瞬間的に、出力を爆発的に上げて戦闘力を引き上げる戦術ですね。ただし、定格超えは、アーキ・ヴェセルナーに多大な負荷が生じます。まあ、戦闘力を引き上げる方法に乏しいフォージ・ブレイヴの苦肉の策というものです」
と、マナが割り込んできた。
「苦肉の策か。言い方に、気に食わないところもあるが、まあだいたいそんな感じだ」
ムッとするジュンちゃん。
「ま、マナ……言い方ッ」
「これは、失礼いたしました」
マナは、ぷいっと顔を背けると、また動画を視始めた。
「オレのアーキ・ヴェセルナーも定格超えでバックパックが壊れた。でも、それは問題ない。レアのバックパックと交換するからな」
「あっ、やっぱり、そうなるのね」
「じゃあ、オレは先に行って待ってる。あんたは、ブレイヴバウトを始める前に、いろいろと手順を覚えなきゃいけないだろうからな。アンジェリカに教えてもらうといい」
そう言って、ジュンちゃんとレアちゃんは、また光の枠の中に消えていった。
定格超えか……フォージ・ブレイヴにも、いろいろな戦い方があるんだなぁ。
よぉし!
「ブレイヴアリーナでの、初めてのブレイヴバウト……! 絶対に、勝つぞ!」
さあ、胸がわくわくどきどきしてまいりました!




