第20話「同じアーキ・ヴェセルナー!」
わたしが、ブレイヴアリーナの設備に感激している間も、ジュンちゃんとレアちゃんの戦いは続いていた。
びしゅ~~む――! びしゅ~~む――!
ふたりとも、大空で大きな軌道を描きながらエナジーライフルを撃ち合ってる。
「ジュンちゃんとレアちゃんが装着してるアーキ・ヴェセルナーって同じものかな?」
ふたりは、フォージ・ブレイヴだ。
だから、アーキ・ヴェセルナーを装着している。
ジュンちゃんの装着してるアーキ・ヴェセルナーは、全身の7割くらいを覆う黒っぽい装甲フレームで、背中にはバックパック型のスラスターがついてる。
手持ちの武器は、銃身の短いエナジーライフルに、縦に長いひし形のシールドだ。
レアちゃんも、装着してるのは同じアーキ・ヴェセルナーに見えた。
はっきりとわかる違いは、ジュンちゃんのは黒っぽいカラーリングだけど、レアちゃんのはオレンジ色がメインカラーになってるってところだけだ。
「学園に招かれた生徒には、学園からアーキ・ヴェセルナーが支給されているわ。あの子たちが使っているのも、支給品だろうから同じものなんでしょう」
と、アンジェちゃん。
やっぱり、そうなんだ。
「しかし、同型ゆえに性能差もありませんからね。そのせいか、なんと言いますか、あくびが出るくらい単調な戦いです。さすが、フォージ・ブレイヴのブレイヴバウト。見るべきところがありません」
ぽやっとした顔で、どぎついことを言うマナ。
「マナ……そういう言い方は、やめようよ」
「あ~~、すみません。つい、本音が出てしまいました」
マナは、ぜんぜん反省している様子がない。
「あんた、ほんときっついわね。別に、あんたの主義主張を否定するつもりなんてないけれど、私はオリジン・ブレイヴもフォージ・ブレイヴも、能力の出どころは違っていても根っこは同じブレイヴだと思ってる。だから、フォージ・ブレイヴだからと言って相手を貶すような真似、私は不快よ」
アンジェちゃんは、マナの瞳を見据えながら、きっぱりと言った。
その言葉に、マナも何か感じたんだろう。
ぽやっとした顔の眉が、ぴくりと動き、表情に少しだけ変化があった。
「これは、失礼いたしました。今後は自重し、自分の本音は胸の内に留めておくようにします。不快な思いをさせて申し訳ありませんでした」
え!? マナが、頭を下げてる!?
あのマナが!?
フォージ・ブレイヴが関係することにだけは、自分の考えを口に出さないと気が済まない、あのマナが!?
自重するって言ったの!?
「わかってくれればいいのよ。あんたも大変ね。そんな偏見を抱えていたら、ブレイヴバウトの楽しみも半減するでしょうに」
マナは、言い返さなかった。
もしかして、何かマナにも思うところがあるのかな?
「それにしても、わたしが、悪口は止めようって言っても聞かなかったくせに」
「まあ、アンジェリカさんの言葉には迫力がありましたからね」
「そういうもんかなぁ」
でも、たしかに、さっきのアンジェちゃんには凄味があった。
わたしも、マナの態度や言動が悪いと思ったときは、しっかりと凄味を利かせて注意した方が良いのかもしれない。
そうしないと、みんなにマナが嫌われちゃうかもしれないからね……。
周りの人も、不愉快な気分になるだろうし。
びしゅ~~む――!
不意に、エナジーライフルから放たれた流れ弾が飛んで来た。
「おわっ!?」
咄嗟に、防御姿勢を構えたけど、そんなの必要なかった。
ぱきん――!
わたしたちがいる観客席に突っ込んできた流れ弾は、瞬間的に現れた光の壁のようなものに阻まれたんだ。
「身構えなくて大丈夫よ。観客を守るために、シールドバリアが張られているの。よっぽどのことが無い限り安全だわ」
アンジェちゃんが、くすっと笑いながら教えてくれた。
「そうなんだぁ。よくできてるなぁ」
フォルティミヤのブレイヴアリーナには、シールドバリアなんてなかった。
流れ弾は、びゅんびゅん観客席に飛んでくるし、ブレイヴ本人が突っ込んでくることもあった。
そう言えば、わたしの隣の席で観戦していた小さな子に、流れミサイルが飛んできたことがあったけど、それを受け止めてあげたときは、その子のお母さんから、すごく感謝されたっけ。
いま思うと、フォルティミヤのブレイヴアリーナって、危険だったんだなぁ。
びしゅ~~む――! びしゅ~~む――!
ジュンちゃんとレアちゃんの撃ち合いは続いている。
「ん~~、それにしても……これ、決着つくのかなぁ?」
「同じ武装、同じ速度だものね。そのせいか、なんていうか戦況に変化が全くないわ」
アンジェちゃんの言う通り戦いに変化がないんだよね。
「だから、自分が言ったじゃないですか単調な戦いだと」
ちょっぴりムスっとして言ったのは、マナだ。
まるで、自分が正しかったと言いたげな雰囲気。
「……あんたの言動を注意した手前、こんなこと言うのもあれだけど、単調っていうところだけは正しかったかもしれないわ」
「ええ、そうでしょうとも」
ふん、と鼻息を荒げるマナ。
「でも、さ。同じアーキ・ヴェセルナーでも、使う人によって違いは出るはずだよ。いま、その違いがはっきりと見えてこないだけで」
「ええ、その違いが出るまで決着はつかないでしょうね」
と、アンジェちゃん。
「あっ! ふたりが、急降下してくるよ!」
レアちゃんが地表に向かって、高速で降りてきた。
ジュンちゃんも、それを追ってエナジーライフルを撃ちながら降下してくる。
どぉん――! どぉん――!
エナジーライフルの弾が、地表に着弾して小さな爆発が起きた。
レアちゃんは、地表すれすれで身体の向きを変えると、降下してくるジュンちゃんにエナジーライフルを連射。
だけど、ふたりとも射撃が直撃することはない。
見てる限り狙ったところに、弾が飛んでないような感じがする。
「ああ、もう! なんて、命中精度の悪さ! 銃口があっちむいてほいしてんじゃないの! むきぃ~~~~!」
レアちゃんが、エナジーライフルを地面に叩きつけた。
それを見たジュンちゃんが、動きを止めて、
「ライフルのせいにするなよ。まあ、気持ちはわかる」
と、ため息をついた。
「だいたいさぁ! 配布装備だからって、いまどきR以下の装備ばっかりなんて、どうかしてるよ! せめて、SRくらいの装備ひとつくらい用意しろってのさ! こんなんじゃあ、ユーザーが離れちゃうぞ! サ終だ! サ終!」
「ソシャゲみたいに言うなよ。支給品は間に合わせってことだろ。ちゃんとしたアーキ・ヴェセルナーが欲しけりゃ自分で手に入れるんだよ……ん?」
ジュンちゃんの視線が、こちらを向いた。
観客席にいるわたしたちの気配に気づいたみたいだ。
「やっほ~~!」
わたしが、両手を振ってアピールすると、
「なんだよ。観客がいたのか」
と、ジュンちゃんは、ほんのり笑った。
「ん? どったの?」
と、レアちゃん。
「見ろよ。いつの間にか、観客がいるぞ」
「観客ぅ? あっ、ほんとだ! いぇ~~い!」
レアちゃんも、こっちに気づいて手を振ってる。
「ふたりとも、がんばれ~~!」
声援を送ると、ジュンちゃんは苦笑した。
「がんばれってよ。観客がいるのに、腑抜けた戦いは見せられないな」
エナジーライフルとシールドを投げ捨てるジュンちゃん。
武装を捨てて、どうするつもりだろう?
そう思っていたら、ジュンちゃんは、腰の左右のアタッチメントから1本ずつ筒のようなものを取り外すと、がら空きになった両手に握った。
びしゅん――!
両手に1本ずつ握られた筒のようなものから、青色に輝くエナジーの刃が飛び出した。
あれは、エナジーソード……!
グリップからエナジーの刃を発生させて剣とする武器だ……!
しかも、二刀流……!
「ちょっ!? いきなり、ガチじゃん! 最初は、慣らしだって言ってなかったっけ!?」
レアちゃんが、慌てた様子で地面に叩きつけたエナジーライフルを拾い直してる。
「慣らしは、もう終わりだ。ここからは、ガチでいく!」
どん――!
ジュンちゃんのバックパックのスラスターが、激しく粒子を放った。
エナジーの刃を閃かせながら、レアちゃんに向かって急加速するジュンちゃん。
「戦い方が、変化した!」
ここからが、きっと本当の勝負なんだ。
わたしの胸が、わくわくどきどきを始めた。




